Markforged社3Dプリンターによる下肢支持パーツ開発

3Dプリンターは、産業用の目的だけでなく、学問的な目的での使用も注目を浴びています。その一例が、中央大学の中村研究室が行っているMarkforged社のMark Twoを用いたぜん動ポンプの開発です。中村研究室では、Markforged社のMark Twoを主にぜん動ポンプの開発に用いています。ぜん動ポンプは大腸の動きを模倣しており、物体の搬送と混合を同時に行うことができるソフトロボット技術です。

中央大学の中村研究室は、「生物型ロボット」と「ソフトロボティクス」をキーワードとして研究を行っています。ソフトロボティクスとは、柔軟な機構を活用したロボットシステムのことを指しています。

現在のほとんどの機器はモーターを中心とした回転系駆動を前提として、すべての機構が構成されています。しかし、それが大型化や非効率化を招くこともあり、状況によっては軟体動物の筋肉のように柔軟な機能のほうが適している場合があります。このように「柔軟な駆動機構」は、ソフトアクチュエーションと呼ばれています。

構造的な柔軟さというのは、周辺環境に対して大げさなセンサや制御を必要とせず、シンプルなシステムを構成することができます。さらに、「作業をするときには固く」「普段は柔らかく」といった人間の筋骨格のようなロボットシステムを構築することも可能になるそうです。

研究開発中の下肢パワーアシスト装置

導入の背景:複雑な形状のパーツが製作可能・軽量化が可能

もともと中央大学の中村研究室では、研究開発目的で3Dプリンターが使用されていました。機構助教の車谷様は「人間の下肢を裏から支えるパーツなので、腿やふくらはぎの形状に沿って3次元的に曲線を描いています。また、ベルトや留め具などを取り付ける部分も必要です。このような複雑な形状は他の方法で作成が困難なため、もともと3Dプリンターを活用していました。

しかし、以前使用していた材質(アクリル)に問題がなかったわけではなく、ベストの選択とはいえませんでした。」とお話しされています。また、パワーアシストを行うという機能から考えると、重ければ重いほど着用者の負担になってしまう、また、ときおり割れてしまうなど強度面の問題も抱えておられました。

そこで、CFRP対応のMarkforged社のMark Twoを導入しました

運用方法と効果:軽量化の実現

中村研究室のスマートアクチュエーション

 

使用3Dプリンター:Markforged Mark Two

使用用途:主に下肢パワーアシスト装置の付帯補助パーツ

効果:強度はそのままに、大幅な軽量化を実現。

 

                            大腿部パーツ                                下腿部パーツ

旧型                      203g                       149g

Mark Two 製        110g                                              87g

軽量化     -93g (46%減)                           -62g (42%減)

機構助教の車谷様は、「強度の問題が解消され、明らかに軽くなりました。頑丈さを確保するため、成形の際には間にカーボン繊維を挟みます。それにより厚みの低減には限界がありますが、今よりさらなる薄型化ができそうです。とはいえ、現状でも十分機能しているので、さらなる薄さの追及は行っていません。ただ、軽い・薄いということは、パワーアシスト装置としては有効なポイントなので、ポテンシャルがあるのは素晴らしいです。」と述べられています。

さらには、後から塗装する必要がない点が良いとお話しされていました。「服の上からとはいえ、人肌に触れる部分なので滑らかにしたいと考えていました。積層型3Dプリンター特有の積層の粗さもなく、追加工なくアシストスーツのパーツとして使用できるのは素晴らしいと思います。」

下肢(腿裏)支持パーツサンプル

 

以前の材料との比較

今後の展望

‍現在、中央大学の中村研究室では、一般的な男性データをサンプルとして作成しています。しかし、機構助教の車谷様によれば、今後は女性用の作り分けを検討されているそうです。さらに、「現在は下肢の支持パーツのみ3Dプリンティングしていますが、そのうち腰を支える部分も3Dプリントしてみようかと思います。」と述べられていました。

3DPCは、産業だけでなく、研究を目的としたものづくりも応援しています。

 

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