
ケーススタディ:ドローン用ランディング・ギアをMarkforged社の3Dプリンターで製作
今回は、Markforged社の3Dプリンターで製作した、ドローン用のランディング・ギア製作のケーススタディをご紹介いたします。
この記事は、Markforged社によるケーススタディを翻訳したものです。原文はこちら。
Markforged社製の機体、着陸準備
オーリン工学大学の学生がMark Oneを用いて、鯨調査用ドローンに対しクアッドコプター向け合成ランディング・ギアを再デザイン(クアッドコプター: 4個の回転翼を持つヘリコプター)
コスト | 時間 | |
マシン・ショップ / アルミニウム | $661.08 | 3~5日+発送 |
Markforgedでプリント | $34.79 | 19時間 |
ガチャンと衝突

スノット・ボットがオーシャン・アライアンスの調査用ボートに急降下して来ます。一方オペレーターの方はなるべくバラバラにならないように回収したいと祈っています。しかしボートが揺れ動いて風が吹き荒れており、バッテリーが切れかかっているのに重い機体を支えているドローンは、素早いランディング(着地)が必要です。電気系統を格納している場所さえ最低無事でタッチダウン出来ればパイロットの方も満足すべきですが、それすら保証されていません。「オーシャン・アライアンス(海洋連合の意)」は鯨の生態を50年近くも調査している研究機関で、マサチューセッツのニーダムにあるユニークな工学学校「オーリン工学大学」と提携しており、鯨から生態的情報を収集するのに画期的なメソッドを開発しています。そのソリューションである「スノット・ボット」は浮かび上がって来た鯨の真上を飛び、噴出孔から噴き出された液体を収集します。このロボットは、バイオプシー(生体組織検査)用の矢を鯨に打ち込む従来の組織収集メソッドに比べ格段に鯨に優しいものとなっています。一方スノット・ボットを使う方がもっと効果的なのは確かですが、荒い風が吹いている状態でドローンを動いているボートにランディングさせようとするとクラッシュしてしまう場合が多々あります。ドローンのデザイナー達が解決しなくてはならない問題としては、これまで衝撃の吸収について高い信頼性を誇るランディング・ギアが無かったという点が挙げられます。
デビン・ディギンス氏はオーリン大学の3年生で機械工学専攻のエンジニアです。このチャレンジを受け入れ、1年以上スノット・ボットに取り組んでいます。オーリンの「インテリジェント・ビークル・ラボ(乗り物研究所)」のメンバーであるディギンス氏は、ロボット・システム工学の教授であるドリュー・ベネット教授の下で研究をしており、プロトタイプのドローンを改良する新しい方法を模索しています。スノット・ボットに海水耐性を与えることから、荒いランディングにも耐えられるランディング・ギアをデザインすること、(プロペラの)ブレードを荒々しい波から保護することなど、二人のペアはこのドローンに幾多の挑戦を挑んでいます。ドローンの効率的デザインにはバランスが最重要となります: 重すぎるデザインだとバッテリー寿命をすぐ消耗し、軽すぎるデザインだともろく壊れやすくなってしまいます。
スーパー強化
「我々の元のランディング・ギアは従来的な炭素合成の構造で、ランディングの際に度々破損していました・・・」ベネット教授はこう説明します。「もっと性能が良く、柔軟で従順なものを必要としていました。かつ強くです」。従来の炭素繊維の構造は強さが十分ではありませんでした。従来のランディング・ギアは衝撃を吸収するにはもろ過ぎました(陸上でテストする場合ですら)。このため同チームは異なるソリューションを必要としており、それもかなり急いでいました。鯨調整の可能性は狭まってきており、ディギンス氏とベネット教授には別の(優れた)部品の発注を待っている時間もありませんでした。「テストの最中もこういう問題があったため、本番ではどうかと憂いていました。我々の機体を鯨の上に飛ばし何か問題があったら、ランディング・ギアが壊れ機体を取り戻せないだけでなく鯨を害することになりかねません。」と、ディギンス氏は言います。「Markforged社について聞き及んだ際、デザインは変えずランディング・ギアの複製を3Dプリンティング出来ると気付きました。これまでのものより軽く、そして強くなるであろうと」プリンターにある長繊維(材料)のオプションにより様々なデザインや材料を、時間をさほど掛けずに試すことが出来ました。ベネット教授はこう回想します: 「どういうランディング・ギアがベストか、とはやってみないと分かりませんでしたので、Markforged社の助けを借り様々な材料を試してみました。またランディング・ギアに対し様々な形状を試し、プリントしてはテストするということを繰り返しました・・・。デザインにも変更を加え、オーシャン・アライアンスの調査に関するニーズに応えられるランディング・ギアを迅速に作成することが出来たのです」Mark Oneのナイロンと配合されたケブラー(芳香族ポリアミド系樹脂)により、軽量のソリューションをついに実現しました。「ケブラーによりそのような形状に適する強度を実現し、一方で衝撃を吸収するための柔軟性も手に入れました」ベネット教授は語ります。

「Markforged社のプリンターにより、ポリマーにどのような繊維を加えるか、変更しました。これで部品の特性が激変したのです・・・。同機に合った部品を作り出し、問題の解決につながりました」
Markforged社のサービスは当初ランディング・ギアを急いで修正するためだけに用いられていましたが、他にもプロジェクトを通じてプロトタイピングや発見ツールとして非常に役に立つと分かってきました。「我々の機体をデザインする次のフェーズで、水上で飛ばす際にうっかりモーターが水に使ってシステムを破損してしまうリスクもあると気付きました」ディギンス氏はこう説明してくれました。「これを念頭に、ヘクサコプター(6個の回転翼を持つヘリコプター)のアームのアセンブリーをMarkforged社による部材で再デザインすることにし、水面近くでも安全に操作が出来るようにしました」アームがドローンの機体から特定のアングルで突き出るように再デザインし、モーター部分が水面から高い位置で離れるようにしたのです。スノット・ボットの他の部分と同じように、マルチコプター(翼が複数あるヘリコプターの総称)の機体を支えるためにアームも軽くかつ強くならねばなりませんでした。標準の炭素繊維によるアームでこの二つの要件のバランスは十分に満たせますが、一方で屈折炭素繊維チューブは非常に高価なもので簡単には入手出来ません。ディギンス氏はMarkforged社のプリンターを用いて製造時間と部品重量を削減し、かつ強度を保つことに成功しました。「我々が作り出したい部品は・・・必要な精度・強度を生み出すための加工を要します。が、通常の加工による部品では正確に鯨の真上を飛ばすには重すぎるものになってしまいます。ここで、Markforged社の3Dプリンティングがお手軽に偉大な力を発揮してくれます」まとめると、同社のプリンターは調査遂行に必要な部品を作るのに最高のプロトタイピング・ツールだと判明したのです。
離陸

二人のエンジニアのペアはこのアップグレードに大変満足しました。「もう機体がバラバラになって帰って来ることを心配しなくてよいのです」ディギンス氏は語ります。スノット・ボットは上記の改造以来一回もランディング・ギアの故障を引き起こしていません。最新のアーム・アダプターはまだスノット・ボットでテストされていませんが、ともかく3Dプリティングによるドローン・ギアの最初の試行が成功したことで、他の部品についても高い期待を抱くようになってきています。ベネット教授は自身の学生の偉業を誇りに思い満足しています。「Markforged社の手助け無しにはディギンスもこうも正確にはアセンブリー出来なかったでしょう」Markforged社のプリンターの力により、オーリン・インテリジェント・ビークル・ラボはより速く・強く・安価なプロトタイプを作り出すことが出来、これは自身のドローン軍団だけではなく学校全体にも及ぶこととなります。同社のプリンターは強度の高い部品を必要とする学生一般に新しい強力な製造リソースとして登場し、ベネット教授も学生たちが非常にクリエイティブな方法で同プリンターを用いているのに驚いています。「Markforged社に出会えて幸せです。今の心持ちとしては、一生使い続けたいと思っています。どう使うか思いついた、と思う度別の学生が同デバイスの全く新しい使用方法を予想もしなかった形で持って来ます」同社のプリンターの名声は採用した学期中にすでに広がっており、スノット・ボットもMark Oneが手掛けた多くのプロジェクトの一つに過ぎなくなってしまいました。
スノット・ボットの成長の軌跡はこちらよりご覧いただけます: http://www.whale.org/tag/snotbot/
引用元の記事はこちら。
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