
ケーススタディ:Markforged社3Dプリンタで炭素繊維のファイティング・ロボットを製作
今回は、Markforged社の3Dプリンターで製作した、炭素繊維のファイティング・ロボットについてご紹介いたします。
この記事は、Markforged社によるケーススタディを翻訳したものです。原文はこちら。
Markforged社のパーツ、激闘!!
ジャミソン・ゴ氏、Markforged社の3Dプリンティングで炭素繊維のファイティング・ロボットをプリント
コスト | 時間 | |
アルミニウムから工業機械で | $1,090.41 | 3~5日+発送 |
Markforgedでプリント | $54.70 | 52時間 |
攻撃を喰らっても
刃をブンブン回転させ、炎を吹き、武器を振り回す・・・これがコンバット・ロボットの世界です。もしデザイナーが自身のロボットに勝たせてやりたいと思ったら、何度攻撃を喰らっても耐えられるよう頑丈に、一方で素早くきつく攻撃が出来るようパワフルかつ軽量にロボットをデザインしなくてはなりません。これらの機械仕掛けの作品は多く強化鉄鋼、重厚な機械鎧となるフレーム、とがったエッジ等々から組み立てられます。デザイナーのタイプは幅広く、この分野で百戦錬磨のベテランから、自分のロボットの剣の腕を試そうとバトルに参加してくるニューフェースまで様々です。
このようなデザイナーの一人に、MITの博士課程で3Dプリンティング技術を研究し、より工程を早くしようとしているジャミソン・ゴ(Jamison Go)氏があります。「バトル・ボッツ(BattleBots)」のような作品に感銘を受けて育ってきた氏は、いつかコンバット・ロボティクスの世界で名を成してやろうと長年思っていました。氏の主要作品の一つである「DDT」は「アント・ウェイト級(超軽量級)」に属しており、これは全体の重量が1ポンド未満でなくてはならないことを意味しています。ゴ氏はこの制約がいかにきついかについて説明してくれました: 「コンバット・ロボティクスの世界では、各ロボットは自身属する重量の階級で戦わなくてはならず、このことは各ロボットに一定の重量制限があることを意味します。このため、使う部品をいかにサイズと重量の面で効率的に用いるかが重要となってきます」。このように、強靭な素材、パワフルな部品、そして重量効率のよい設計がいい試合をする決め手となります。
問題をリフレーム
DDTの元のデザインはかさばって厄介なフレームで覆われていました。多くの加速器、積み重ねられたプレートやプラスチックの部品、という感じです。「以前の機体は何重ものUHMWプラスチック(高分子量プラスチック)を用いて製造されており、いくつかの長いボルトでつなぎ合わされていました。こういう古臭いデザインは多くの異なる加速器が必要で厄介であり、かつ硬度の高いプラスチックは加工し易いながらこういうデザインにはあまり向いておらず、結果機体が非常に重くなってしまいました」とゴ氏は語ります。これは、ゴ氏が自身のロボットの重量の大半を扱いにくいフレームに割かなければならなかったことを意味しています。「前のデザインも・・・悪くはありませんでした。試合にも確かに何度かは勝ちました。しかしフレーム自体が重いためにその他の部品において軽く力不足のもので妥協しなくてはならず・・・結果最後の試合で完全に破壊される羽目になりました」。
ゴ氏にとってこのひどい試合は自身のデザインを再考する良い機会となりました: 「DDTの当時のフレームはもうオワリ、という感じでした。良い機会だと思って近年温めていた自身のデザインに関する信条を再訪することにしました・・・。それでまずDDTから始め、自身の軍団のロボットを次々発展させていくことになります」。Markforged社の3Dプリンターに出会い、ジャミソン・ゴ氏は同社のプリンターでDDTの胴体を改造し、単一の軽い部品とすることを思いつきました。「同社のプリンターは、プリンティングの各レイヤーに途切れのない繊維の塊りを埋め込む能力がある点でユニークです。縦のプリント軸には繊維を配置出来ませんが、張力という点で画期的な進歩を遂げています・・・。ナイロンを基礎素材としてプリンティングに用いますが、我々が使うに際して工学的にABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、3Dプリンティングの材料となる樹脂の一つ)より優れていると感じます」。ゴ氏は引き続きどうMarkforged社のプリンターを自身の新しいデザインに用いたか説明してくれました。「Markforged社のテクノロジーの可能性や応用方法についてさらに証明するためにも、DDTをナイロン・ケブラー(高強力・高弾性率・耐熱性の芳香族ナイロン)の単一ボディでプリントすることにしました。これによりDDTはずっと軽くかつ強くなり、その軽くなった分もっと強力なアクチュエーター(駆動装置)や武器を搭載することが可能となり、発展し続けるコンバット・ロボティクスの世界で頭角を現すこととなります」。
写真1: DDT ver. 3 単一ボディCAD
複数のボディ・パーツのアセンブリーを単一ユニットへ減ずるのは容易ではありませんでした。ゴ氏が言うには、「部品、部品同士の接続、アセンブリーの順序等様々なディテールがあり、しかも予め把握しておく必要があります。このプロセスでCADが欠かせないツールとなってきます。各部品で恐ろしく細部に踏み込んだモデリングが必要で、特に機体の後部で詳細なアセンブリー手順を制定する必要がありました」。コンバット・ロボティクスと3Dプリンティングの両方に情熱を示す氏は、ついに不要な素材重量を伴う多くのプレート、ボルトやその他の留め金を追いやり、ストラクチャー全体を一つの部品にまとめあげることに成功しました。「全てを小型化し、もっとコンパクトで効率良くするために、自身の選んだ部品に適合する細かいデザイン仕様を山のように織り込むことに成功しました」。
「機体によっては完成させるのに3日ほど掛かります。ここでやはり”Mark One”がこのような複雑で長いプロセスにおいて私が信頼出来る唯一のプリンターです」。ゴ氏は自身のプリンティングのプロセスについてそう言及しました。Markforged社の素材により機体を以前よりもっと強く、もっと軽くした後、高い期待と共にDDTを再び戦いの場へ送り込みます。
決勝
DDTはゴ氏が期待した以上の働きをしました。Markforgedで部品をプリントすることにより、同機の胴体重量は半分になり、一方さらに強くなっています。「結果、元のデザインの51%の重量のフレームを作ることが出来ました。そして、さらに強くもなっています」。
写真2: DDTで獲得した賞
これは、余った重量をより高パフォーマンスのモーターや電動系部品をDDTに組み込むのに割くことが出来ることを意味し、同ロボットをさらに凶悪なものに仕立て上げました。DDTの新しい軽い胴体はリングで信じられないほど速く動くことが出来、敵のロボットを素早く強烈に、向こうがパンチを撃つ前に打ちのめしました。「この新しいデザインはこれまで驚異的な成果を叩き出しています。4つの異なる大会に出場させましたが、どの大会でも1位か2位を獲得しています。DDTは現在属する階級の世界ランキングで2位に着けています」とゴ氏は解説します。「こいつを大会に連れて行くと対戦相手や観客は実に驚いた顔をします。まず3Dプリティングによるものだ、ということが信じられないんです。Markforged社のプリンターのお陰だ、と教えてやっています」。
ニューDDTは短期間のうちにアント・ウェイト級の名だたるコンバット・ロボットにのし上がり、今では全世界で2位となっています。DDTの成功によりゴ氏は自身の誇る他のロボットもアップグレードし、どれも同様Markforgedによる単一ボディでデザインを手掛けています。
引用元記事はこちら。
Markforged社の商品は、正規代理店のDDDJapan.comから。