
3Dプリンターが乳がん再発防止に役立つ―BCN3Dとジローナ大学が3DPI Awardsで受賞
スペインの3DプリンターメーカーBCN3D Technologiesとジローナ大学は、3D Printing Industry Awards 2019(3DPI Awards)にて、3Dプリンターを使用して乳がんの再発防止へ貢献したとして、 the Best Medical, Dental or Healthcare Application(医療・歯科・ヘルスケアのアプリケーション)のカテゴリーにて受賞しました。
(画像:BCN3D Technologies)
受賞にいたった研究はどういったものなのか、ご紹介します。
3Dプリンターでスキャフォールドを作製
スペインのジローナ大学では、3Dプリンターを使用して最も攻撃的な乳がんの1つから幹細胞を分離することに成功しました。
研究チームは、BCN3Dの3Dプリンター「Sigma」を使用して、体の組織や繊維にある構造を再現したスキャフォールド(細胞の増殖を支持する基材)を3Dプリントしました。このスキャフォールドは、乳がんの再発の原因となる幹細胞を分離することができます。
幹細胞を分離することにより、調査が容易になるだけでなく、患者の体の健康な箇所にダメージを与えずに幹細胞のみを攻撃する薬を見つけ、がんの再発を防止につながります。
このプロジェクトの研究者の一人、Teresa Puig博士は、こういった腫瘍細胞は、化学療法や放射線療法の後でも体内に残り、がん再発の原因になるといいます。
Puig博士によれば、研究中のトリプルネガティブがんは、20~30%の若い女性患者が3~4年のうちに再発するとのことです。また、腫瘍はたくさんの種類の細胞からできており、これらの細胞は低比率で含まれているため、腫瘍の中の細胞を見つけるのは難しいそうです。
しかし、幹細胞の分離する新しいシステムを用いると、後々こういった細胞に対処しやすくなるといいます。
(画像:BCN3D Technologies)
2次元では不可能だったものを可能に
この研究には、スキャフォールドの最適な構造を開発することが必要でした。
研究チームは、スライサーソフトBCN3D Curaを使い、積層ピッチ、インフィル密度・パターン、等の様々なパラメータを試して最適なものを探し、BCN3Dの3DプリンターSigmaで3Dプリントしました。
品質工学を用いて、27種もの異なる構造のスキャフォールドが造られ、分析されました。キャラクタリゼーションおよび細胞増殖アッセイを用いて分析するために、各構造のスキャフォールドは少なくとも10セットは3Dプリントされました。これにより、どの形状の構造ががんの再発につながる幹細胞を分離するのに最も効果的かを調べることができました。
ポロシティや各要素の距離などのパラメータに基づいたこのメッシュ構造こそが、最終的に細胞をマトリックスに結合させる、成長させる、または自らを強化させることができます。
(画像:BCN3D Technologies)
以前造られた培養細胞は2次元で、効果的に細胞を分離させることができず、幹細胞を攻撃する特定の医薬品を作ることができませんでした。
しかし、Sigmaで作製した3次元のスキャフォールドによって、乳がんの幹細胞を分離することができるようになりました。そして、腫瘍の原因となる生物指標を探す研究をより深く行うことができるようになり、腫瘍を攻撃する医薬品を見つけることができます。
「こういった幹細胞に対してどういった対処をすべきかはまだ分かりませんが、幹細胞を分離する方法は見つけました」とPuig博士は話します。この3Dプリンティング技術を使った医用生体工学のプロジェクトは「ONCOen3D」と呼ばれています。このプロジェクトでは従来の分析方法と比べてコストを抑えることができ、さらにこれによりがん細胞の実験を増やすことができます。
この研究結果は大きな成果であり、科学誌の「International Journal of Molecular Sciences」と「Polymers」に掲載され、国際学会でも紹介されました。
このように3Dプリンティング技術を使った新たな医療の道が開かれており、3DPI Awardsでの受賞からも分かる通り、その功績が認められ、今後の更なる活用に期待されています。
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