
3DPC「Markforged Mark Twoマニュアル」:成形手順 - Eiger上での設定 Part 1
DDDJapan.comの運営会社である、株式会社3D Printing Corporationが執筆した「Markforged Mark Twoマニュアル」から一部抜粋した情報の連載です。
※本記事の掲載内容は本ブログ記事公開時のものです。最新版のご注文はこちら。
II. 成形手順
II.b. Eiger上での設定
II.b.i. Eigerへのログイン
EigerはCADデータをMark Two用に変換するブラウザソフトです.
Google Chromeブラウザで https://www.eiger.ioに移動し下記アカウントでログインします.違うブラウザでは起動できません.
図 II.18 Eigerのログイン画面
アカウント登録は,https://www.eiger.io/registerでMark Two購入時に添付されているシリアルコードにより行います.II.b.ii. Eigerへのインポート
ログイン直後のLibrary画面上部にあるをクリック(あるいはEiger にドラッグ&ドロップ)し,STL形式のCADデータをインポートします.
通常インポート後はそのままデータ編集画面に移動しますが,時にLibrary画面に戻ってくることがあります.この場合は,再度インポートを実行します.
Eigerはブラウザソフトであり,インポートしたデータはMarkForged社のサーバに格納されます.
1つのアカウントで同時に操作可能なPCは3台なので,複数人で運用する場合には注意が必要です.アクティブに使用していない場合でも,ブラウザで画面を開いているとカウントされるので,使用しないときはEigerのタブを閉じておきます.
II.b.iii. Eiger上の設定
EigerにCADデータをインポートするとデータ編集画面に移動します(図 II.19).ここでは,成形物に関する様々なパラメータを設定して,3Dプリントの準備をします.パラメータ設定後,一定の拘束条件を満たすとき,構造に正しく繊維配置され,FRPの3Dプリント用 データを作製することができます.
CADデータは層状にスライスされ,繊維配置設定をONにすると,繊維材が自動的に指定した層に配置されます(手動で繊維配置することはできません).
拘束条件や条件を満たすための設計ノウハウについては II.a.iii.作成にあたっての拘束条件と設計ノウハウを参照.また,パラメータ設定に関するノウハウについては,II.b.iv.設定時のノウハウを参照.
おおまかな作業手順は以下の通りです.
• データ編集画面に移動する
• 印刷パラメータを設定(パラメータに関するTipsは下記)
• SAVEボタンをクリックして編集したデータをセーブ
• INTERNAL VIEWをクリックして内部を確認 想定した繊維配置が設定されているかチェック
• 内部を確認しながら内部パラメータ(下記)を調整
• 再度SAVEをクリックし調整したデータをセーブ
• 使用する材料の体積を確認し,Mark Twoに装填されている材料の量が十分であることを確認する(2016年7月のアップデートで材料使用量がフィードフォワードされるようになった).
印刷パラメータ

Eiger上では日本語表記が可能ですが,Mark Twoに転送後文字化けを起こすので英語表記が望ましいです.
・Cloud Slicing: Cloud上に接続されたPCと連携してスライスします.Onにするとデータセーブ時の処理時間が短くなります.
・Printer Model: 使用するプリンターを設定します.
・Scale: インポートしたデータ寸法を1として3軸方向に等方的に拡縮することができます.設計値が拘束条件を満たさない場合にどの程度数字が足りないかを調べるときに利用すると便利です(具体的な利用法は II.a.iii.の条件3のノートを参照).また,Inventorを使用してSTLデータを作成した場合Scaleを10倍にしないと設定したサイズで出力できないという事例が報告されています.
・Rotate: ユーザーインターフェース上でCADデータの表面をクリックすることで,その面を底面に置き換えることができます(図 II.20).このとき選択された面は水色に着色されます(図 II.20左).Manual Rotationをクリックすると3軸各方向に回転することができます.
・Plastic Material: 母材樹脂をナイロンかオニキスか選択します.
図 II.20 Eiger上のユーザーインターフェースで選択した面を下にするように回転させることができる.選択した面(及びそれに平行な面)が青色に着色され,クリックするとその面が下になる.

・Use Fiber: FRPを使用するかどうかを決定します.
・Fiber Material: 繊維材料の種類を fiberglass/ Carbon Fiber/ Kevlar/ HSHT glassから選択.繊維の種類により1層あたりの厚さが異なる点に注意が必要です.
・Total Fiber Layers: 繊維を配置する層の数を選択します.フルで繊維を使用しない場合には,上下から半分ずつFRP層を積層する設定となります.例えば左図の場合,天井の直下にある3層と床の直上にある3層に繊維配置する設定となります.基本的に後でInternal viewでマニュアル操作するのでここでわざわざ設定しないでも良いです.
・Fiber Fill Type: 繊維配置の仕方を設定します.この設定により以降の設計パラメータが変化します.
Concentric Fiber: 渦巻き状に外から内あるいは内から外に向かって繊維配置します.
Isotropic Fill: 従来の積層板のように繊維を1方向に配向させた繊維配置.Mark Two実装に合わせてCarbon Fiberでも利用できるようになりました.ただし,折り返し部分は曲率が高く,Carbon Fiberではジャミングの原因となるのであまりお勧めしません.その他の繊維タイプで は良好な繊維配置が可能です.
Concentric Fiberを選択した場合
・Walls to Reinforce
渦巻き状の繊維配置を内側と外側どちらから開始するかを決定します.All wallsでは両側から繊維を渦巻き状に配置します.このとき例えば次に説明するパラメータConcentric Fiber ringsの設定が2場合,外側と内側両方に2周ずつ繊維配置されます. Outer Shell Onlyでは外側のみ,Inner Hole Onlyでは内側のみ繊維配置します.片側のみの場合,巻き数は Concentric Fiber Ringsの設定値に一致します.
・Concentric Fiber Rings
何周分繊維を配置するか設定します.このとき,最短繊維長さ(約45mm)を越えるように設定します.最短長さに関する詳細は2.A.b’条件4を参照.
Isotropic Fiberを選択した場合
・Concentric Fiber Rings
2016年11月のアップデートで疑似等方配置の外周にConcentric Fiberでハイブリッドに繊維配置可能となりました.設定した巻き数だけ外側から繊維を配置します.
・Fiber Angles
デフォルトの設定が0,45,90,135となっていますが,このようにカンマを用いて数列を入力すると,設定した数字の角度で順々に繊維配向角を変えていくような繊維配置になります.例えばデフォルトの設定でFRP層8層分積層すると,0,45,90,135,0,45,90,135となります.注意すべき点は,このままでは対称積層とならない点です.
・Advanced Settings (以下のような詳細設定が可能)
・Use Supports
Support材を印刷するかどうか設定します.基本的にサポート材を使わないメリットは少なく,成形を安定させるためにOnにするべきです.デフォルトでもOnの設定になっています.Eigerにより自動でサポート材が補足されるのは,垂直角30°以上の下向き表面です(詳細は II.a.iii.条件 8を参照).一方で,満足な成形精度を上回るのであれば,サポート材なしでの印刷の方が印刷時間が短くなるので,必要があればサポート材なしを試してみる価値はあります.
・Supports Angle
補足されるサポート材の配向角を指定することができます.0度は横軸方向です.このとき配向角を変えることによって変化するのは,印刷にかかる時間とサポート材を取り除いた後の成形物の表面粗さ,サポート材の取り外し易さです.サポート材の直線経路が長ければ長いほど時間は短く(といっても大抵の場合ほとんど変わりませんが),表面に垂直な方向に配向すると表面にサポート材が残りやすく,サポート材を取り除きにくい傾向にあります.よってサポート材は基本的にサポート材が取り外しにくい部分の下側表面に平行になるように配向すべきです.サポート材が取り外しにくい部分とは,具体的には円筒内部などの奥まった部分や壊れやすい構造近辺のことです.
・Raise Part
サポート材を補足した際に部分的にサポート材が小さくなりすぎて印刷後取り外しにくくなってしまうことが時々あります.その場合は Raise Partを Onにしてサポート材の体積を大きくして取り外しやすくします.十分に工具がそろっていればあまり必要はありません.また,20層分のサポート材を使用するため,成形物の大きさによっては消費するフィラメントの量はかなり大きくなってしまいます.
・Expand Thin Features
細い線や薄板のような部分は,場合によっては Eigerによって除外されてしまいます. これを防ぐためにExpand Thin FeaturesをToggle Onします.具体的にどのような特徴がでるかは II.b.iv.設定時のノウハウの 6.2.を参照.
・Use Brim
Brimを構造下部に配置し,成形物のプリント中の脱着や反り返りを防ぎます.Brimは 日本語で「いかだ」を意味します.
・Original Units
単位をmmからInchesに変更できます.日本語圏では通常使用しません.
・Layer Height
1層ごとの高さを設定します.Carbon Fiberでは 0.125mm,Fiberglass/Kevlar/HSHT glassでは0.100mmに固定.母材樹脂のみの積層では変更可能で0.100/0.125/0.200mmから選択できます.ハード的には可能であるはずですがFRPを同時に積層する場合はナイロンの層の厚さのみ変更することはできません.
・Fill Pattern
樹脂材料の充填パターンを設定します.成形時間や密度,曲げ強度などに差があります.ただし,いずれの設定の場合でも,FRP層に隣接する層はRectangular Fillになります. この機能によりどのFill Patternでも繊維配置が安定します.FRPに隣接する層のFill Patternを変更したい場合は,II.a.iii.の条件 2の後半を参照.
Hexagonal Fill 質量比曲げ強度が最も高いハニカム構造
Rectangular Fill 最も安定して繊維を載せることができる
Triangular Fill 狭い領域の Fillに適している
・Fill Density
樹脂の充填率を設定します.樹脂の密度,印刷時間が変化します.特に必要がなければデフォルトの50%で問題ありません.50%以外の設定にすると,設定画面左に警告が表示 されるますが,特に気にする必要はありません.
・Roof and Floor layers
成形物の天井と床に充填する樹脂材料の層数を設定します.上下の層数を表しているので例えば1なら上下1層ずつ計2層が樹脂層となります.最低1層は必要.2層以上にしたほうが繊維の配置が安定しやすいです.4以外の設定にすると,設定画面左に警告が表示されますが,特に気にする必要はありません.天井は印刷の途中で印刷を一時停止し母材樹脂をMark Twoから排除することで印刷しないようにすることができます.詳細は II.b.iv.6.5.を参照.床は繊維配置するために必要ですが,II.a.iii.の条件 2の後半に記載している様に,印刷後に取り外し易くすることはできます.
・Wall Layers
成形物の壁に充填する樹脂材料の層数を設定します.層はz軸垂直方向に充填されます.最低1層は必要.薄すぎると天井と床との接続が悪くはがれやすくなってしまうため,なるべく2層以上にします.2以外の設定にすると,設定画面左に警告が表示されるますが,特に気にする必要はありません.Floor印刷後一時停止し母材樹脂を排除することで印刷しないようにすることもできます.詳細は II.b.iv.6.6.を参照.
Internal View
上記の設定及びsave後,Internal Viewをクリックすると,構造内部の繊維配置に関するパラメータを詳細に設定することができます.ただし自動配置であることは変わりません.
・Visibility 積層する部分ごとに画面に表示するかどうかを設定できます.
画面ではをToggleスイッチで切り替えて設定することができます.イメージは3Dが選択されている状態で,2Dの部分をクリックすると2D viewに切り替わります.
3D view
・Materials Bar
CADデータを層状にスライスした各層に使用される材料の種類が色分けされています.Carbon fiberは青,Fiberglass/Kevlarは黄色,HSHT glassは橙色,母材樹脂は白色です.
・Editing layers
Materials Barでクリック/ドラッグして選択した層が下層から数えて第何層か(あるいは何層~何層か)を表示します.選択した層は画面右上のEditing Layersでパラメータを再設定することができます.
・Editing Layers
Materials Barで選択した層のパラメータで設定します.Fiber Fill Type, Walls to Reinforce, Concentric Fiber Ringsは割愛します.Start Rotation Percentは一筆書きの繊維配置の開始位置を設定するパラメータです.単位は%で,0%で左上,時計周りに開始位置が移動していき100%で元の位置に戻ります.Create Groupで,選択された層(1層から複数層)を上記の指定された繊維設定で,グループとして新規作成します.上書きする際は再び層を選択し設定を変えて Create Groupボタンを押します.
2D viewは 3D viewより細かく,1層ごとに設定を編集することができます.2D viewではPause After LayerのToggleスイッチが追加されます.Pause After LayerをOnにすることで設定した層の印刷直後に自動的に一時停止することができます.このスイッチを利用して,ナットや電装部品などといったコンポーネント挿入などの様々な応用が可能です.
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