3DPC「Markforged Mark Twoマニュアル」: 構成

3DPC「Markforged Mark Twoマニュアル」: 構成

DDDJapan.comの運営会社である、株式会社3D Printing Corporationが執筆した「Markforged Mark Twoマニュアル」から一部抜粋した情報の連載です。

※本記事の掲載内容は本ブログ記事公開時のものです。最新版のご注文はこちら

 

I. 構成 

I.a. Mark One / Mark Two

i. Mark One / Mark Twoとは

Mark One(及びその後継機である Mark Two)は世界初連続繊維 CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を印刷可能にした複合材料3Dプリンターです.3DCADデータをインプットすることで,自分のデザインした CFRPや GFRP の構造体を 3Dプリントすることができます.

Mark Oneのときの特徴を挙げるなら以下の3点でした.
・故障しやすい
・使える材料の種類が少ない(ナイロン, Carbon Fiber, Fiberglassしか使えなかった)
・だいたい不機嫌

 図 I.1 Mark Oneはすぐ駄々をこねる

図 I.1 Mark Oneはすぐ駄々をこねる

しかし,Mark Twoに世代交代し,1つ目の特徴が大きく改善され,一般的な 3Dプリンターと比べても満足できる性能のプリンターとなりました.今なお継続的にアップデートが図られているユーザーインターフェースは他のプリンターを遥か上回る使いやすさ(いわゆる直観的な操作ができるような)を持っています.

“できる”だだっこであった Mark Oneは成長して優秀なオトナ(Mark Two)となったわけですが,一方で,体調管理に気を付けなければ,その優秀さを十分に発揮できない点は,他の3Dプ リンターと同じです.常に万全の状態で維持することが,Mark One/Mark Twoを継続的に運用する最良の手段です.注意すべき点は,Mark One/Mark Twoが機嫌を損ねるときは常に科学的,物理的な原因が存在する点です.本マニュアルは,科学的,物理的に Mark One/ Mark Twoの万全の状態を維持するためのものです.

以下では基本的に特に断らずにMark Twoのみについて記述します.

ii. 本マニュアルの使い方

本マニュアルは基本的に,3Dデータ設計時の参考書として,あるいは故障時のトラブルシュー ティングとしての利用を主眼に置いています.

参考書として利用する場合には,主に 2.A.b’作成にあたっての拘束条件と設計ノウハウの項目を確認します.トラブルシューティング時は,4章で故障時の現象から逆引きしやすいように努めています.CAD作成についてMark Twoの性能を最大限発揮するための設計(DfAM)ノウハウは様々記載していますが,CAD初心者が CADの使用法自体を学習できるものではありません.CADの使用法はそれぞれの CADソフトの説明書やインターネットにあるページをご参考ください.

また,セットアップについては MarkForged社 HPに記載されている他,3D Printing Corporationでセットアップサービスがあるので,そちらをご参考ください.

iii. MarkTwoの成形方式

Mark Twoは熱溶解積層法(以下単に FDM)を採用しています.FDMでは,線状のフィラメント材を 加熱溶融後にベッドに線状に積層し,積層後材料は冷却され固着します.線状積層物は予めスライサにより設定された経路を辿り,全体で1つの形状を形作ります.

連続繊維 FRP(以下では短繊維CFRPであるオニキスを除く連続繊維 FRPのみを単に FRPと呼ぶ) のFDMでは,1)連続繊維の切断時,2)フィラメント溶融中プリントノズル通過時,3)積層後の冷却固着時に,通常のFDMと異なる挙動を示します.Mark Twoでは,フィラメントにあらかじめ連続繊維に母材樹脂を含浸させることで簡易に連続繊維を切断できるように工夫しています.

1)連続繊維の切断

一般的な樹脂のFDMでは,材料を溶融させ,材料の自重とプリントヘッドとベッドの相対移動により材料を切断します.一方でFRPに用いられる連続繊維は,この方法では切断できないほどの強度を持つため,能動的にカッターで切断する必要があります.Mark Twoでは同軸になるよう調整した2本の金属チューブで両端から連続繊維FRPフィラメントを変位拘束しわずかに開いた 金属チューブ間をカッターが通過することで,フィラメントに含浸された母材樹脂ごと連続繊維を切断します.

図 I.2 連続繊維の切断機構
図 I.2 連続繊維の切断機構

2)フィラメントが溶融中にノズルを通過する時

FRP 層を積層する際に下層に FRP を接合させることが難しいです.これは,1)フィラメント内に連続な強化繊維が内装されているため,ノズル通過中曲率が大きくなるポイントでは,フィラメントの反発力が繊維強化されていないフィラメントに比べて大きくなります.さらに,2)FRP フィラ メントは母材樹脂(ナイロン,オニキス)の密度が通常より低いため,下層との接着力が小さいことによります.これによりFRP層の積層にはいくつかの制限がかかるほか,故障の原因になりやすくなっています.

2-a)FRP層を直接ベッドに積層できない

Mark Twoでは成形物の最下層に母材樹脂を敷き詰めなければなりません.

2-b)FRPの曲率が制限される

FRPの曲率が大きすぎると,繊維のうねりや熱収縮により発生する応力のために下層とFRP層の接続が弱くなるあるいは内部で繊維破断が発生します.詳しくは 2.A.b’.3に記載.

2-c)下層との接続が外れる場合がある

Mark TwoではFRP切断後のFRP出力をプリントヘッドとベッドの相対運動に頼っています.そのため,下層とすでに固着したFRP が相対運動の反作用で引きちぎられる場合があります.この場合以降のプリントが失敗する可能性が極めて高いため,再印刷やその層を処理して印刷再開する必要があります.詳しくはトラブルシューティングを参照.

3)積層後の冷却固着時

FRPは複数の異種材料を含む複合材料です.そのため,冷却に伴い異なる収縮率で繊維と樹脂が収縮し,内部に残留応力が発生します.このとき,成形物の断面二次モーメントが小さいと,冷却後成形物が変形します.大まかな指標として FRP積層板でいうところの対称積層にすること,また薄板構造の場合には Carbon Fiberでは 4-6層以上強化することで回避できます.また,強化する層は外側であるほど効果が高いです.

図 I.3 熱収縮による造形物の変形
図 I.3 熱収縮による造形物の変形

I.b. Eiger

Mark Twoの印刷データを作成するライブラリ兼スライサーです.2Dプリンターでいうところのプリンタードライバーと同じ役割をもち,プリントするデータの数・使用する材料の設定など基本的なもの以外にも,Mark Twoの特徴である連続繊維の配置に関する設定はEiger上で行います. 読みは「アイガー」.3DCAD データをSTL形式で入力し,Eiger上で各種条件を設定します.STL形式のデータは別途 3DCAD作成ソフトを導入して作成する必要があります.

Eiger は Google Chromeのみで動作するブラウザソフトです.印刷するSTLファイルは一度Eigerサーバに転送され,MarkForged社が参照可能となります.

EigerとMark Two間のデータ転送はWifi/LANのインターネット回線かUSBフラッシュメモリ経由で行います.インターネット接続制限が厳しい会社ではUSBフラッシュメモリによるデータ転送が推奨されます

また、データ管理を重視する会社向けにオフライン版Eigerも販売されています(有償).

 図I.4 Eigerのトップページ

I.c. 材料発注

Mark Twoはプリンタであるが故,長期の運用には十分なストックが不可欠です.

常にインクのストックを用意しておくことで,急な要請に対応できるようにしておくことが望ましいです.

具体的には,

・FRPドラム(50ml)は最大稼動で 1日 1個程度消費する. 
・3D Printing Corporationに依頼した場合発注から約 3営業日かかる.

これらを考慮して1台あたり3個程度のストックを用意しておくことが望ましいです. 

ナイロンやオニキスについては Mark Two1台が出力しきれる量を1度に使うことはほとんどないので,ストックは 1つずつで十分です.

 

I.d. 故障パーツ

Mark Twoのパーツが故障した場合の対処法は大きく分けて 2つ存在します.

i. インハウスでの修理

所有者の施設ケーパビリティーに左右されますが、パーツによっては修理可能なものは多い。 それぞれにおいて該当する物には、具体的な手段をIV.で記載します。

ii. 代替パーツをオンライン検索・購入

自力で修理することが難しい,あるいは交換する方がコストが安い場合,代替パーツを購入します。

 

上記2つの方法で解決しない場合や、本マニュアルに記載のない問題がMark Twoに発生した場合は、正規代理店であるDDDJapan.comまでご連絡ください

 

・・・この続きは、本ブログに連載予定です。

Markforged社の3Dプリンターの詳細は、日本代理店であるDDDJapan.comにてご覧ください。


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