金属用3Dプリンターでできることは? 従来の金属加工との違い

金属用3Dプリンターでできることは? 従来の金属加工との違い

今では、カーボン材料・スーパーエンプラ・金属等の様々な素材を3Dプリンターで造形することが可能になってきました。使用できる材料が増えたということは、活用範囲も広がってきたということです。本記事では、特に金属3Dプリンターの特徴や基礎知識に関して、従来の加工法とも比較しながらご紹介していきます。
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3Dプリンターで使用できる素材の種類

失敗しない3Dプリンティングのためには、用途に応じて、造形物の形状はもちろんのこと、素材も適切なものを考慮する必要があります。金属用3Dプリンターの話をする前に、まずは主要な素材の大分類から見ていきましょう。

素材1.プラスチック

最も頻繁に使われる材料の一つは、プラスチック素材です。個人用・家庭用の3Dプリンターで扱える材料は、基本的にプラスチックに分類されるため、目にする機会は多いでしょう。多用される最大の理由は、加工が設備が簡便な点でしょう。プラスチック素材にはPLA・ナイロン・ABSなど多くの種類が存在しますが、ほとんどが加熱で柔らかくなる熱可塑性を持っていたり、光によって硬化する光硬化樹脂です。また、他の素材と比較して安価なものが多いです。

一方で、加熱で柔らかくなるという特性は、耐熱性の観点からすれば弱みでもあり、高温環境で使用する場合には注意が必要です。工業用パーツとしては使いづらくもあります。スーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれるような、耐久・耐熱・耐薬品性に優れたプラスチック素材も存在しますが、取り扱い可能な3Dプリンターの値段は相応に高価です。

素材2.コンポジット

2種類以上の材料を組み合わせた複合材料のことをコンポジットと呼び、3Dプリンターの業界においては、主にプラスチックとファイバー(繊維)材を複合したFRP材(繊維強化プラスチック材)を指します。炭素繊維やガラス繊維、ケブラー繊維などを混ぜ込むことで繊維材が材料を強化し、プラスチック単体では実現できない高強度を実現します。コンポジットによる3Dプリント造形物は、プラスチックの加工の容易さや軽さを保ちつつ、金属にも劣らない強度を発揮します。

ただし、主材料がプラスチックなので、高熱や表面の摩擦に弱い点はプラスチックと同じです。その点を考慮した上できちんと活用すれば、プラスチックより強く、金属より軽く安いという、競争力の高い部品の製造が可能であり、すでに多くの産業分野で活用されています*。

※参照はこちら

素材3.金属

3つ目の大分類として、本記事のメイントピックである金属素材について紹介します。一般的に金属は、プラスチックより高い耐熱性と、高強度・高剛性、さらに耐薬品性や電気伝導性を持つ材料です。この特徴から、金属3Dプリンターはより厳しい条件下で活用することができます。

その一方で、金属はプラスチックより安定性が高く、変形させるのに手間がかかるため、加工には大掛かりな設備が要求されます。素材や造形物に重量があるほか、電機や換気の設備が工業水準で求められ、3Dプリンター機器そのものだけではなく、設備側も一定以上の規模が必要になります。管理が必要な薬品を使用する場合もあり、プラスチック材料対象の3Dプリンターほど気軽に導入はできません。

しかし、3Dプリンターを用いる効果は多数あるため、やみくもに導入するのではなく、効果的な場面を見極め、適切な場面で運用するのが望ましいです。詳細は以下でご紹介していきます。

番外編:エラストマー

番外編としてご紹介するのが、エラストマー素材です。高分子樹脂に分類されるため、プラスチックとも近しい素材ですが、ゴムのように柔らかく、造形後もある程度の変形や伸縮性、反発性を持つ点が特徴です。そのほとんどは光硬化によって3Dプリントされ、靴のクッション部分やバネのような部品など、複雑かつ毎回求められる形状が異なるような分野で主に活躍しています。

また、研究レベルでは細胞・半導体・磁石などがの3Dプリントが試みられております。これらについては、別途ブログ記事にてご紹介いたします。



金属用3Dプリンターの特徴・加工方式

一口に金属3Dプリンターといっても、その方式は様々です。造形方式によって、使用可能な材料種、造形可能な形状、大きさ、後加工方法等大きく変わるため、適切な方式を選択することが重要です。ここでは、主要となる3つの造形方式をご紹介します。

PBF(Powder Bed Fusion)方式

metal-pbfPBFは「粉末床溶融結合」と訳される方式です。機器の内部に、細かな金属の粉末を薄く敷き詰め、レーザービームや電子ビームを等で加熱して部分的に融かして結合させ、それを繰り返して積層させてゆき、造形物を作ります。3Dプリンティングらしく複雑な造形が可能な一方で、光の反射率が高いアルミ・銅などの材料を苦手とし、粉塵爆発を防ぐ設備や金属粉末の酸化を防ぐ不活性ガスの重点・管理など、大規模な設備と装置が必要となります。さらに、使用済みの金属粉末はリユース可能な一部を除いて廃棄が求められ、材料を交換するだけでも専門家による大規模なメンテナンスが要ります。

WAM(Wire Additive Manufacturing)方式

metal-wam日本語では「ワイヤー積層造形方式」と呼ばれる、溶接の肉盛りを応用した3Dプリンティング手法であり、金属のワイヤーをアーク放電によって融かし、積層造形していきます。大ぶりな造形になってしまいますが、PBF方式と比較して高速な造形が可能で、対応している金属材料が豊富です。ただし、精度が求められる部分には切削や研磨が不可欠のため、既存の切削加工手法とほぼ同じ形状的制約を受けます。形状の複雑さよりも高速さと造形物の大きさを優先した方式といえるでしょう。

ADAM(Atomic Diffusion Additive Manufacturing, MIM×FFF)方式

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ADAM方式は「原子拡散積層造形法」とも訳される方式で、プラスチック素材の3Dプリンターで活用されているFFF*(Fused Filament Fabrication:積層造形)と、金属を型成形するMIM(Metal Injection Molding:金属粉末射出成型法)を掛け合わせたものです。

まず、熱で溶ける蝋と金属粉を混ぜた専用の素材を用いて、FFFによる3Dプリントを行い、グリーンパーツと呼ばれる成形物を得ます。このグリーンパーツは蝋と金属粉が混ざった状態なので、蝋を洗浄して除去した後、成形物を高熱の炉で焼結させることで、シルバーパーツと呼ばれる完成品を得ます。この焼結過程で成形物が縮小するため、3Dプリンターで造形するグリーンパーツは、最終形状より少し大きめに変換した3Dデータを用いるという特徴があります。

上記のPBFやWAMと比較して設備要求が少なく、形状はプラスチック用3Dプリンターと同等の複雑なものが期待できる点が強みです。

※FDMと呼ばれることもあります。



金属用3Dプリンターと従来の金属加工の違い

従来の金属加工のほとんどは、射出成形に代表されるような「FM:Formative Manufacturing」と呼ばれるものと、切削加工に代表されるような「SM:Subtractive Manufacturing」と呼ばれるものに分類されます。一方で、金属3Dプリンターによる造形方法は「AM:Additive Manufacturing」と呼ばれ、FMやSMと異なる特徴を持つ新たな製造方式です。それぞれを簡単にご紹介します。

Formative Manufacturing

鋳造やプレス成形のように、内部の詰まった密な構造を造形する方式です。型枠へ融けた金属を流し込み、後に型から取り出します。場合によってはオーバーハング角などの形状的制約があり、設計者はそれらを考慮して工程を設計します。型を繰り返し使要することで、同一形状を量産できるため、大量製造に適した手法です。

Subtractive Manufacturing

切削に代表される手法で、芸術分野における彫刻のように、対象物の材料を取り除きながら加工するため、引き算的手法とも呼ばれます。加工面へのアクセス(加工機器の先端が接面すること)が可能であれば、かなり自由度の高い造形ができます。実際の製造現場では、他の手法と合わせて、後加工や仕上げとして用いられる場合もあります。

Additive Manufacturing(3Dプリンター)

SMとは逆に、足し算的手法と呼ばれる手法です。材料を追加しながら積み上げてゆくことで造形する方式であり、3Dプリンターのほとんど箱の分類に属します。

上記2つの従来加工法と比較すると、造形の自由度が高い点が大きな強みとして挙げられます。FMにおいて欠かせないオーバーハング角を意識する必要がなく、またSMにおいて欠かせない加工面のアクセシビリティも意識する必要がないためです。型や治具・固定具が不要な強みもあり、3Dプリンター機器と消費した材料以外の経費をほとんど考慮せずに済む点において、従来の加工法とは大きく異なります。さらに、入力データの変更により素早く製造物の形状を変えられる点も重要な特徴です。
metal-3d-printer▲ADAM式3Dプリンター Markforged「Metal X」



金属用3Dプリンターで可能なこと

これまでの内容を踏まえて、金属用3Dプリンターで可能なことや、わかりやすいメリットについて紹介していきます。3Dプリンターによる造形方式そのものの特徴に関しては、別途ブログ記事にてご紹介していきます。

金属製品の高性能化

金属3DプリンターによるAMであれば、従来のFMやSMでは造形不可能だった、トポロジー最適化やメタマテリアルに代表される高性能な複雑形状を成形可能です。例えば、内部を蜂の巣のようなハニカム構造状にすることで軽量化したり、三次元的に表面積を増やして熱交換効率を上昇させるなど、部品の「高性能化」を実現できます。
トポロジー最適化の例▲トポロジー最適化の例

接合箇所の削減

上記の内部構造の複雑化にも関係しますが、かつては造形物を接合することでしか実現できなかった構造を、金属3Dプリンターであれば一体造形することが可能です。

例えば、複雑に絡み合う配管は、従来は直線やカーブなどの比較的単純な形状のパイプを接合して組み立てる必要がありました。そのため、接合まで考慮した全体の工程設計そのものに多くの時間とリソースが割かれていました。しかし、金属3Dプリンターによって絡み合った配管を丸ごと造形すれば、接合や組み立て作業そのものが不要になるため、工程設計にかかる時間ごと圧縮が可能です。接合点数の削減は、接合工程の省略や、品質管理工程の軽減にもつながるのです。
metal-adam2▲従来部品をADAM式3Dプリンター「Metal X」で一括造形。

金属部品の修復

一度破損してしまえばパーツ交換が基本であった金属部品も、金属3Dプリンターを活用し、破損した箇所に新たに材料を付けたすことによって、失った部分を再生することが可能です。設計書などが残っていない場合も、在庫品の光学的なスキャニングによって、まるまる複製するようなリバースエンジニアリングを現地で実施することが可能です。



まとめ:金属用3Dプリンターの可能性

いかがでしたか? 3Dプリントに使える材料のまとめに始まり、金属3Dプリンターの分類、実際の用途や特徴をご紹介いたしました。最後に、実際の導入に関するお話をいたします。

有効に活用すれば、従来の課題を解決に導ける金属用3Dプリンターですが、他の製造法と同様に、万能の装置ではありません。方式によっては積み上げが可能な形状に限られたり、使える材料種に制約があります。また、3D CADデータが必須な点も留意が必要です。

そして費用の面では、金属3Dプリンターを活用するために一千万~数億円の初期投資が必要であり、想定用途や運用体制を十分に整備しなくてはなりません。

しかし、AMという製造方式は、FMやSMといった従来の製造方式とは異なる特徴を持っています。金属3Dプリンターの活用により、研究分野や製造現場で、これまでにない課題解決法が今も生み出されているのです。工業に新たな未来を実現し得る技術であることは、疑いようがありません。

DDDJapan.comの運営会社である3D Printing Corporationは、実際の活用におけるコンサルティングから、ベンチマークの試験的製造、設備導入のご案内まで、丁寧にサポートいたします。ご興味を持たれましたら、お気軽にご相談ください。

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