3Dプリンターで用いるフィラメントとは?種類別の特徴と用途

3Dプリンターで用いるフィラメントとは?種類別の特徴と用途

フィラメント(filament)とは、細長い構造のものを指します。電球の発光部分にも同じ名前が使用されていますね。今回は、3Dプリンターの材料・素材である「フィラメント」についてお話しいたします。

3Dプリンターで使われるフィラメントとは

3Dプリンターで最も身近な方式は2つありますが、その一方がフィラメントと呼ばれる材料を用いる方式で、FFF(FDM)方式と呼びます。FFF方式はFused Filament Fabricationの頭文字を取ったもので、プラスチック材料をリール状のスプールに巻いた「フィラメント」を用いて3Dプリントを行います。

FFF方式は、国内では「FDM(Fused Deposition Modeling)方式」という愛称で呼ばれる事がありますが、FDM方式は1988年にStratasys社が特許を取得した造形方式になります。そのため、以下ではFFF方式全般にいえることに関して説明していきます。

フィラメントは直径1.75mmのものが一般的で、3Dプリンターのホルダにセットして使用されます。材料の種類は豊富に存在し、ナイロン (PA)、PET、ASA、ポリカーボネート(PC)、耐摩耗性や耐油性等に優れたポリウレタン系熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリウレタン(TPU)といったようなプラスチックもあります。耐衝撃性、耐摩耗性、靭性、柔軟性、透明性などの要件やアプリケーションにより最適な材料を選択することができます。

セットされたフィラメントは材料口から挿入され、モーターの駆動力により輸送され、ノズル付近の加熱部に送られます。ノズルの直径は0.4mmのものが多く、加熱部で加熱されたフィラメントは溶融し、そのノズルから押し出されることで、細いストリップ状の線材となり3Dプリントされます。FFF方式の場合、3Dプリントらしい中空な構造を形状を出力する際にサポート材を造形します。サポート材とは中空な構造の天井部分を造形するための足場となる構造です。

「熱で溶かし押し出して出力する」を可能にするために、主な特徴として、FFF方式の材料には熱可塑性樹脂が採用されています。熱可塑性樹脂とは、熱を与えると溶け、冷えると硬化するプラスチック材料のことです。対義語として熱硬化性樹脂がありますが、熱硬化性樹脂は1度硬化すると熱を加えても溶けずに炭化してしまうため、FFF方式に用いることができません。

また、材料開発目線での特徴として、小規模な設備でフィラメント成形が可能である点とフィラメントにフィラーを配合すれば、性能を調整できる点が重要です。フィラメントは押出成形により造形されたフィラメント材をリール状に巻くことで利用可能となります。フィラメント成形には、安定した径、ボイドの少なさ、適切な温度履歴などが求められますが、私たちDDDJapan.comが提供する3devoであれば、簡単にフィラメント成形をすることが可能となります。
添加するフィラーによって性能を調節でき、例えば軟質フィラーならば柔らかく、硬質フィラーならば硬く、難燃性フィラーならば燃えにくく、導電性フィラーならば導電性を、作り出すフィラメントに特性として不可できるのです。


ABSフィラメントの特徴と用途

ABSはPLAと並んでFFF方式で最も一般的なプラスチック材料です。ABS樹脂は耐久性、引張強度、耐熱性に優れており、値段が安いという高い汎用性を持つ素材です。適度な柔軟性があるため研磨しやすく、接着性に優れるため、機械部品での使用に最適です。アセトンによる後処理を組み合わせることでスムーズな表面を手に入れることができます。一方で、適切なプリンターセットアップでないと正しく造形できない点がネックです。特に温度管理が重要で、冷却速度が速すぎると割れやすくなってしまいます。また、現場の利用者にとって3Dプリント時に発生する焦げたような臭いは堪らないので、使用頻度が高い場合には十分な換気設備が必要となります。

用途としては、プラスチックで連想される多くの部品に用いることができ、試作品、治工具からコンシューマ向けの製品まで幅広く適用することができます。注意点としてABSは食料安全は保障されていないため、食器などの食品周りの製品を作ることには適しません。

PLAフィラメントの特徴と用途

PLAはABSに並ぶ3Dプリントで最も一般的な材料です。PLAは十分な引張強度に加え、外観に優れた素材です。光沢があり、半透明で様々なカラーバリエーションがあるため、様々な外観的要求に応えることができます。また、近年話題のSDGsに相性が良い材料でもあります。PLAは生分解性ポリマーであり、他のプラスチックに比べ環境負荷が小さい点は他の3Dプリント材にない特徴です。ABSに比べ低温で成形できるため、小さな設備要求でより高速に造形できる点も魅力です。一方で、ABSに比べると耐熱性が低く、50-60度の使用環境では高いレベルでの製造工程の管理が求められ、それ以上の環境温度で使用することはできません。ABSと同様に食器等に扱うことは推奨されません。外観の良さに反して、大きく変形した部分の色が白く濁る点には注意が必要です。

用途としては、外観を重視する試作品・商品が多くなります。ライトアップする電子デバイスには特に相性が良いです。透明性を活かした造形物で、ライトアップする場合には、ライトをLEDにして温度が高くなりすぎないよう管理する必要があります。

特殊フィラメントの特徴と用途

その他の材料として特徴的なものを4つご紹介します。

1.FRP材料

FRP材料とは、Fiber Reinforced Plasticの略で、日本語では繊維強化プラスチックと呼びます。プラスチックに繊維材が混ぜ込まれた材料で、繊維により高強度・高剛性を発揮します。FRP材によっては金属と同等かそれ以上の強度・剛性が得られる材料もあり、高性能化・軽量化を求める方にオススメの素材です。特殊な材料であるため、専用の設備が必要となります.Markforged社の材料がその代表格で、プラスチックをベースとする材料でありながら5000番台のアルミ合金並みの剛性を持ちます。主に耐力が求められる構造や軽量化が求められる構造に使用されます。

2.耐火材・耐熱性材料

プラスチックは高分子材料であるため、基本的に熱に弱く有機溶剤に反応しやすい材料がほとんどです。その中で、特殊なフィラーを添加することで耐火性を得た素材や耐熱性の高い素材が存在します。耐火性で言えば、Markforged社の材料Onyx FRが好例です。耐熱品性ではエンジニアリングプラスチック(PAポリアミド系の材料は耐薬品性が高いと言われています。用途は材料名そのままに、耐火、耐薬性が求められる環境のパーツです。


3.エラストマー

プラスチックは一定の温度帯では柔らかく変形しますが、基本的には硬い材料です。エラストマーは柔軟素材であり、3Dプリント用材料ではTPU、TPEなどがあります。ゴムライクプラスチックは、軟質フィラーを添加することで、材料を軟化させたプラスチックで、ゴムのように変形させ、元の形状に戻ることができます。これらの材料は、人間のインターフェイスとなるパーツや衝撃を和らげる緩衝部品など、軟質素材が求められる環境で用いられます。

4.金属材料

最後に金属材料です。金属材料は、高い引張強度・剛性、耐熱性、導電性を持つ素材です。FFF方式を応用して、プラスチック材に金属を混ぜ込み、プリント後にプラスチック材を除去することで金属構造体を成形するプリンターがあります。ベースがFFF方式なので、設計方法を共有することができます。

材料を選ぶポイント

フィラメントを選ぶ時のポイントは4つです。


1.使用する3Dプリンターで造形可能な材料であること

まずは使用する想定の3Dプリンターが造形可能な材料を確認しましょう。ABSの項目で示したように、適切な温度管理が必要な材料の場合、適切な管理が可能なプリンターと不可能なプリンターがあります。不可能な例としてはプリントベッドを60℃まで昇温できない機器で、プリントベッドを60℃に加熱して造形してくださいと注意書きがある材料は使用できません。


2.要求される仕様を満たす材料であること

要求される仕様を満たす材料を選ぶことは不可欠です。使用環境の温度・想定される荷重・許容される変形量・接触する有機溶剤など要求は様々ですが、これらを想定し材料を選ぶことは重要です。


3.適切な後加工が実施可能な材料を選ぶこと

要求される仕様を満たすために後加工が必要な場合があります。その場合、必要な後加工を適用できる材料であるか確認する必要があります。切削や研磨などが可能か、想定する接合法は適しているか、利用可能な後加工法を用意できる材料かなどを考慮する必要があります。


4.より経済性の高い材料であること

最後に材料の経済性は重要です。最後に、と強調するのは、3Dプリントの初期的なゴールは目の前の課題解決であることが多くその中で材料価格が支配的コストになる場面はほとんどないためです。一方で、利用頻度が高まるほどに、材料の経済性は重要度を増していきます。この段階に来て初めて、利用者は経済性の高い材料を重視すべきです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回はFFF方式で用いられるフィラメント材の種類や選び方についてご紹介しました。現場の課題解決では、適切な材料・プリンター・後加工法の迅速な選択が重要です。より戦略的な課題解決として、新しい材料開発という選択肢もありますが、まずは材料を選ぶポイントの4で述べたように、細かい経済性より目の前の問題を解決することを目指すことが重要だと思います。

DDDJapan.comは現場での課題解決からより戦略的な課題解決まで、広くサポートする3Dプリントのワンストップサービスを提供しています。3Dプリントに関する課題や疑問があればお気軽にご相談ください。


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