
Markforged社3Dプリンター材料「Onyx」をリサイクル【3devo事例】
今日、多くの企業がSDGs達成に向けてサステナブルな製造を目指しており、廃プラスチックのリサイクルも推進されています。
中でも3Dプリンターによる製造はもともと廃材が少なくコスト面でもメリットがありますが、不要になった3Dプリント品や失敗したパーツから再度フィラメントを作製するリサイクルが可能で、サステナブル製造として注目が高まっています。
今回は、3devo社のリサイクル装置「SHR3D IT」と「フィラメント・エクストルーダー」を使用して、炭素繊維材料3Dプリンターで人気のMarkforged社の材料「Onyx」で造形したパーツのリサイクル事例をご紹介いたします。
※本記事では、一部の詳細を割愛させていただいております。詳細を記載した完全版資料をご希望の方は、本ページの下部のフォームから無料ダウンロードしていただけます。
3devoを使用したMarkforged社材料「ONYX」のリサイクル
カーボンファイバー強化素材のシュレッディング、押出しのレポートならびに手引き
3devo社で行われた、Markforged社の材料「ONYX」で製作された3Dプリント廃棄物のシュレッディング(粉砕)とフィラメント作製(押出し)の調査レポートをご紹介いたします。本レポートでは、素材を「ONYX」と記載します。
目次
- レポートの前書きと背景
- シュレッディング
- 準備と前処理
- 押出し(1): 開始と最初の観察
- 押出し(2): 調整手順
- 押出し(3):スプール作り
- 結論と提言
ONYX の要点
- 黒色で不透明、滑らかな表面仕上げ
- ナイロンと刻んだ炭素繊維を含む配合
- 高強度(曲げ強度含む)で優れた耐久性を持つ、構造用途向けの高性能素材
- 連続炭素繊維強化材と合わせて3Dプリントすると、アルミニウムと同等の強度を実現
- かなり高い耐熱性(通常の処理温度は285℃)
1.レポートの前書きと背景
本レポートは、3devo社の試験ラボで行われた、ONYX製3Dプリント廃棄物の「シュレッディング」と「押出し」のプロセスを紹介するものです。最適な設定、最高の品質をもたらした実験過程について説明します。
試験の目的は、様々な形状のONYX製3Dプリント品を1.75 mmフィラメントへとリサイクルすることです。図1は、段ボール箱に入った元の3Dプリント品の写真です。
第2章では、押出しの前に行われたシュレッディングについて説明します。第3章〜6章では、押出し試験自体に関連した、主な実験手順を詳しく説明します。なお、手順は一連の調整によって成り立っています。また、重要な点は、押出し試験を2 mmノズルを取り付けたフィラメント・エクストルーダー(Precision)装置で行った点です。第7章ではONYXのリサイクル性についての包括的な結論を述べ、レポート全体を要約します。
図1 - ONYX製3Dプリント品
2.シュレッディング
シュレッディングは比較的単純な作業で、4 mm粒子フィルターを備えたSHR3D IT(図2)で行いました。より体積の大きなパーツもあった一方で、プリント品の一部は柔軟でシュレッダーへの投入が容易でした。
図2 - シュレッダー SHR3D ITの写真
シュレッディングではすぐに良い結果が出ました。図3の供給の写真では、一部の廃棄物がとても柔軟だったことが確認できます。シュレッディングの速度を上げるため、機械のハンドルを使い手動での圧送が行われました。

図4は、シュレッディングから得られた最初のリグラインドのサンプルの写真です。いくつかの4 mmを超える顕著な粒子を除けば、リグラインドの品質(均一性)が良好だったことが示されています。

図5はONYX製リグラインドのサイズと形状を、一般的に押出しに使用され、高品質な結果が得られる標準的なポリ乳酸(PLA)ペレットと比較した写真です。リグラインドの粒度分布は比較的に狭く、粒度は標準的なPLAペレットと同等かそれ以下であることが確認できます。つまり、プラスチックのエクストルーダーへの供給、そして溶融が容易であることを示しています。
図6は、リグラインドのバッチ全体が均一に見え、顕著な不純物がないことを示す写真です。素材を複数回シュレッダーにかけるか、シュレッダーに3 mmフィルターを取り付けることで、希望する品質のリグラインドを得ることができます。


ONYXの再シュレッディング: フィルターのサイズを超えたプラスチック破片が残った場合、粒度の均一性を向上させるために再度シュレッディングを行うことができます。最初に得られたリグラインドはシュレッダーのホッパーを速く流れるため、このステップは非常にシンプルで容易です。通常は数分ほどで、素材のバッチを再度シュレッダーにかけることができます。2回目のシュレッディングはとても有益です。なぜなら、より均一なサイズのリグラインドを得ることで、押出しの過程で流れがより安定し、より優れたフィラメント品質が実現するからです。
3.準備と前処理
素材は湿気から保護されていない段ボール箱に保管されていました。通常、ナイロンベースの配合物を処理する場合は乾燥が重要なステップになります。乾燥は3devoの乾燥機「AIRID」(図7参照)を使用して、**°Cで*時間行いました。
押出し試験の前に、以下の化合物でフィラメント・エクストルーダーをパージングしました。
- Devoclean MidTemp:バレルを綿密に掃除するため
- HDPE:より容易にONYXに移行するため
このパージ・移行プロセスは***℃で行いました。その後、***℃でOnyxを投入しました。
* 数値は完全版資料にご紹介しております。
注意! 新しいグレードのプラスチックでの実験では、プラスチックを十分に高温で投入することで、十分な溶融を確保し、装置が詰まらないようにすることが最も重要となります。
図8は供給を、図9はHDPEからONYXへの移行を写した写真です。移行はわずかな時間で起こり、突如とした目に見える変化がありました。



4.押出し(1):開始と最初の観察
押出し試験では、最初に以下の設定を用いました。
パラメータ | H4 | H3 | H2 | H1 | スクリュー速度 | ファン速度 |
設定値 | *** °C | *** °C | *** °C | *** °C | ** RPM | **% |
* 数値は完全版資料にご紹介しております。
なぜ「***°C」を用いるのか? ・・・(完全版資料にてご紹介)。
なぜ「** RPM 」「**% ファン速度」を用いるのか? ・・・(完全版資料にてご紹介)。
最初の結果: HDPEからの移行はスムーズかつ速く、流れはさほど妨げられなかった様子でした。流れはわりと安定している様子でしたが、押出し材が液状になりすぎていました。フィラメントにぐらつきがあり、プラーによって平たくなっていたため、しっかり引っ張ることが難しくなっていました。フィラメントの表面はかなり粗く、素材が劣化したか、溶融物内に空気が閉じ込められていたかのようでした。
ラット・ホーリング: もう一つ観察された現象で、供給に影響を及ぼしているものがありました。ラット・ホーリングと呼ばれる現象です。これは配合物がホッパー内で凝集して吐き出し口をしっかりと流れず、流れが減少してしまう現象であり、一般的に粉末やリグラインドが影響を受けます。図10でもこの現象が確認できます。数分ごとに棒を使って形を崩すか、継続的に攪拌を行う装置を用いることで供給を改善できます。

5.押出し(2): 調整手順
このステップの目的は、フィラメントセンサーを使って最適な押出し設定を見つけることです。主な問題は、押出し材が熱すぎたため、プラー・ホイールがフィラメントを平たくしてしまったことです。図11は、フィラメントがスプールに巻きつけるに十分な品質に届く前の調整段階のときの写真です。
フィラメント冷却用ファンの速度: プラーに到達したときの押出し材が熱すぎたため、適切な対策としてファンの冷却パーセンテージを上げました。**%〜**%の間で複数の選択肢を試しました。
スクリューRPM: スクリュー回転速度を徐々に** RPMまで引き上げました。フィラメント冷却用ファンは高い速度が必要であったにもかかわらず、**〜** RPMのスクリュー回転速度が安定した流れをもたらすことが分かりました。更なる調査によって、生産速度を下げることで流れの安定性が高まることが発見されるかも知れません。
温度: 全ての温度は5℃ずつ徐々に下げられ、***℃まで下げられました。この時点ではRPM変動が増え、素材が十分に溶けることが難しいことが示されました。また、「低 - 高 - 低」のベル曲線が最適な温度プロフィールであることが分かりました。つまり、素材のバレル内での溶融が早すぎず、遅すぎない様子で、これが安定した流れを得るために最適な状況だといえます。
乾燥の重要性: ナイロンは、押出し前に乾燥させないと処理が難しくなります。実験では、湿気が押出しのプロセスとフィラメント品質に対して非常に悪い影響を与え得ることが示されました(図は第6章を参照)。押出し前に素材を乾燥させると、表面が滑らかに仕上ります。もう一つ重要なのは、水分はフィラメント内に"空間"を作り出す可能性があることです。素材に閉じ込められた水分はフィラメントの芯部分に気泡を形成し、それにより収縮が不均一になり、表面は粗くなり、内部で物質が"欠如している"ためにフィラメントを3Dプリントできなくなります。
* 数値は完全版資料にご紹介しております。

5.押出し(3): スプール作り
調整段階で最終的にたどり着いた設定のもと、フィラメントのスプール作りを行いました。
パラメータ | H4 | H3 | H2 | H1 | スクリュー速度 | ファン速度 |
設定値 | *** °C | *** °C | *** °C | *** °C | ** RPM | **% |
* 数値は完全版資料にご紹介しております。
上記の設定により、スプールを作ることに成功しました。図12、図13の顕微鏡写真は「不適切な設定での再生ONYXフィラメント」「適切な設定での再生ONYXフィラメント」「元の市販ONYXフィラメント」の3つの製品を写しています。過度に高い温度などの不適切な設定を用いたり、押出し前に素材を乾燥させなかったりすると、表面仕上げの質が低下します。適切な設定を見つけることで、元のフィラメントと同様の表面の滑らかさが得られました。また、目標とする製品の品質を定義することで、適切な設定を見つける過程がより容易になりました。
図14は、製造したスプールの一つに対応したデータログをグラフ表示したものです。スプール作りのプロセス全体を通して、フィラメントの太さは非常に安定しており、通常の業界許容値(1.75±0.05 mm)内に十分に保たれています。



7. 結論と提言

押出し実験では、非常にポジティブな結果が得られました。2 mmノズルを取り付けたフィラメント・エクストルーダー(Precision)を使用し、高品質な1.75 mmフィラメントを実際に作ることができました。このフィラメントを使って3Dプリントする調査はまだ行なっておりません。それによってはじめて一連の調査が完結し、高品質パーツの3Dプリントが可能になるわけですが、今回の実験からいえることは、ONYX素材は大きな問題が起こることなく非常に容易にシュレッディングを行い、押出すことができ、得られたフィラメントの太さは業界の許容基準(+/- 50ミクロン)内に十分に収まっていたということです。比較的低い温度で素材を処理できたことにより、プロセスの開始は容易になりました。ただ、配合物が濃い黒色だったため、パージングにより手間がかかりました。図15は、当社での数日間の試験で得られたスプールの写真です。
レポートのまとめ:
推奨事項:
- 最適な品質のため、温度は***℃付近に保つ
- 素材は**℃で少なくとも*時間乾燥させる(乾燥機またはオーブンで)
- 押出し後は、Devoclean MidTempを使って綿密なパージングを行う(処理温度で)
- 最初にHDPEを使用してからONYXに戻す。必須ではないものの、ONYXを節約することができます。
注意事項:
- シュレッダーとエクストルーダーは、細心の注意を払って使用する(ブレード、熱といった要素があるため)
- シュレッディング中、保管中は不純物(主にホコリ)に注意する。不純物は最終品の質を低下させます。
- 部屋の状態によっては、ファン速度を**〜**%の間で調整することが必要な場合がある。
- 手動で、または継続的に攪拌する装置で、常にホッパー内を攪拌し、ラット・ホーリング対策をとる。
パラメータ | H4 | H3 | H2 | H1 | スクリュー速度 | ファン速度 |
設定値 | *** °C | *** °C | *** °C | *** °C | ** RPM | **% |
* 数値は完全版資料にご紹介しております。
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