3Dプリンターを活用するメリットは?使用事例や使うためのポイント

3Dプリンターを活用するメリットは?使用事例や使うためのポイント

近頃では、Adidasがランニングシューズのミッドソールの製作に3Dプリンターを活用したり、JINSが3Dプリンターによる造形物を使ったサングラスを発売したりと、最終製品の生産に3Dプリンターが使用されることが増えてきています。本記事では、主に製造業における使用事例やポイントを挙げながら、3Dプリンターを活用するメリットをご紹介いたします。

本記事はこんな人におすすめ:
  • ものづくりで3Dプリンターがどのように活用されているのか知りたい方
  • 今後3Dプリンターの購入を検討している方
  • 既に3Dプリンターを持っているが活用できていない方、など

3Dプリンターを活用することで得られるメリット

3Dプリンターの活用で得られるメリットとして、主に以下の3点があります。
  1. 時間短縮
  2. コスト削減
  3. 手間の削減

1. 時間短縮

・試作開発の高速化(ラピッドプロトタイピング)
3Dプリンターの活用方法として最も知られている「ラピッドプロトタイピング」。その名の通り、高速に試作を行う活用方法で、日本でも3Dプリンターは試作への活用において普及しています。3Dプリンターを活用することで、試作を内製化して、外注時に掛かっていた納期を短縮することができます。数量が少ない試作品でも素早く作れるため、開発サイクルを短くでき、お客様のニーズにも応えることができます。

・製品の市場投入の迅速化
AdidasのシューズやJINSのサングラスの例のように、3Dプリンターを使って製品の生産ができるようになってきています。素材もコンポジット(複合材料)や金属等さまざまなものが使用できます。
3Dプリンターの活用により、製品の改良における時間を短縮することができます。日本では、完成品ができてから市場に出すという考え方が一般的ですが、世界の流れを見るとそれは遅れた考え方になってきています。今日では、現段階での最高品を提供し、製品を改良したら改良版を市場に出していくという考え方が普及してきています。こういった考え方は、ソフトウェアなどでよく見られていましたが、それをハードウェアの世界に持ってきたのが3Dプリンターなのです。例えば、Space Xのロケットの部品の多く(燃料タンク、ノズルなど)が3Dプリントされています。一度完成品ができてから量産するのではなく、現時点での最高品を市場に出しておきながら改良を進め、製品を進化させていくのです。それゆえ、製品の市場投入をスピーディーに行うことに成功し、同じ生産ラインでありながら常に最新のものを製造することができるのです。

2. コスト削減

時間短縮にも相関しますが、3Dプリンターを活用するとコスト削減にも繋がります。ものを作る時間が長いということは、それだけ人件費が掛かっているということであり、もののコスト(生産費用)が高くなります。一方で、3Dプリンターを使った時の製造に掛かる時間が早いということは、製造コストの安さにも貢献しているのです。
また、生産費用において、材料コストと製造コストだけを見るのは前時代的といえます。実際には、設計者の人件費、治具・工具の費用、開発サイクルに掛かるコストなどが発生する中で最終製品が形成されるのであり、できあがった製品の売上・利益は最終的にサービスの利益として還元されます。したがって、材料コストだけを比較して製造コストを判断しようとするのは間違っているといえるでしょう。3Dプリンターの活用により、コスト要因として最も大きい人件費を削ることができます。Teslaの工場がアメリカにある理由は、その製造設備の人件費が大きなコスト要因にならないということであり、人件費が低い国に設備がなくても低コストで生産ができているということなのです。

 

3. 手間の削減

2.「コスト削減」の項目でもご紹介したように、人間の手間が省けるのが3Dプリンターの大きな役割です。省ける手間は大きく3つあります。

1つ目は、設計の手間です。3Dプリンティング以外の多くの製造は、製品の形状設計後に工程の設計をしなければなりません。3Dプリンティングの場合は工程の設計は不要です。なぜなら、製造工程を人間の代わりにコンピューターが設計するからです。他の製造方法の場合はどうしても工程設計に人間が関わらなければなりません。そのため、設計段階で3Dプリンティングと比較して大きな設計労力がかかるのです。

2つ目は、設計更新の手間です。3Dプリンティング以外の多くの製造では、最初の設計だけではなく、それ以後の設計を更新するときに大きな手間が発生し、製造工程まで含めて設計する必要があります。実際、金型など従来の製造方法の場合に設計を更新しようとすると、工程設計を含めて二重三重の手間がかかってしまいます。一方で、3Dプリンティングでは最終形状だけ設計すれば済みます。

3つ目は、技術継承の手間です。3Dプリンティング以外の方法では、基本的に作業者間で技術の受け渡しを行う必要があり、時間が掛かります。なぜなら、設計技術や製造技術は基本的に数値化されていない上に、作業者自身が教育のプロではないため、技術継承に余計な労力が発生します。3Dプリンティングの場合は、製造工程がデータドリブンになっているため、技術の継承が容易です。ある製品を別の地域の新たな拠点で作ろうとした時に、従来の製造方法では、新しく製造技術者を設けるか、既存の技術者を現地に派遣する必要があります。一方で、3Dプリンティングの場合は、データを現地に送信するだけで同じものを作ることができるのです。

これら3つの手間が省けることによって、必要な人的コストが劇的に下がるというメリットがあります。これは、先に挙げた1.「時間短縮」と2.「コスト削減」にも直結します。


上記で見た「時間短縮」、「コスト削減」、「手間の削減」の3つのメリットのうち、特に「時間短縮」と「コスト削減」を達成できる部品・製品の製造から、3Dプリンティング技術に置き換わってきています。

 

3Dプリンターの活用事例

上記でご紹介したメリットについて、それぞれ事例を見ていきましょう。

1. 時間短縮の事例

廃盤した自動車部品の再生産
保証期間が終了した自動車部品は廃盤し、型や設計図が既に消失していることがあります。名車は再生産の需要が高いものの、型を再設計・再生産すると時間・コストが掛かり赤字になってしまいます。
そこで、当社で元の部品を3Dスキャンし、CADを修正して設計図を再生、部品を3Dプリントすることに。元の部品が当社に到着してから48時間以内には試作品が完成しました。3Dプリンターを使って、月300個の部品の生産を実施しました。

従来手法(型) 3Dプリンティング
最小生産
数量
1,000 1
納期 90日 2日

※秘密保持のため、デフォルメした部品を使用し、一部の情報を変更しております。

2. コスト削減の事例

溶接固定具の製作
オフロード車のカスタム製品を設計・開発するSDHQ Off-Road社では、溶接時にカスタムの固定具を使用していますが、カスタム固定具の製造は高額で時間が掛かる上に、不具合や人的ミスが起こりやすかったのが課題でした。
そこで、Markforged社の複合材料3Dプリンターを導入。炭素繊維強化プラスチックを使用して高強度の固定具を3Dプリントし、カスタム固定具の製造費を99%削減しました。さらに、これまでは複数の部品を組み立てていましたが、3Dプリントすることで、複数部品を統合してユニボディで部品を製作可能になりました。

従来加工法 3Dプリンティング 削減率
費用 88,000円 1,000円 99%
時間 156時間 12時間 93%

 

3. 手間の削減の事例

治具の設計自動化
対象物の治具設計は、時間とコストが掛かり、専門のスキルを持つ人員が必要です。外注する場合でも、外注先の探索や見積もりなどを含めると実質の納期は数カ月もかかります。
当社の治具自動設計プログラムを使用することで、治具設計の手間を省くことができます。治具の自動設計を行うことで納期は10倍以上短縮し、大幅な高速化が可能になりました。また、ソフト調整により、公差設定などはDX(デジタルトランスフォーメーション)化し、治具の微調整が簡素化しました。
⇒ 当社の治具の自動設計の詳細は、お問い合わせください

外注 内製 自動設計
作業者 オペレータ 自動化プログラム
設計時間 数日
(+外注作業時間)
1~2時間 3秒
倍率 1倍 1200~2400倍

 

3Dプリンターを活用するために必要なもの

3Dプリンターを活用するために必要なものは、基本的に以下の4つです。
  1. 3Dプリンター
  2. 材料
  3. 環境(電源など)
  4. データ

これら4つの中で、1~3は一度セットアップすれば使用できます(なお、材料は都度供給が必要です)。4つめのデータについては、造形するもののが変わる度にデータを変更したり作成したりする必要があるので、その手間は考慮しておきましょう。

当社DDDJapan.comの運営会社である株式会社3D Printing Corporationが提供する製造プラットフォームでは、1. 3Dプリンター、2. 材料、3. 環境のご提供、あるいはリモートで当社保有の3Dプリンター運用が可能です。4. データに関しても当社の自動設計を活用することで省労力化・時間短縮することができます。当社の製造プラットフォームの詳細は近日公開予定です。

3Dプリンターの使い方について、さらにお知りになりたい方は「【企業向け】3Dプリンターの使い方解説|導入する際の注意点」をご参照ください。



3Dプリンターを効果的に活用するためのポイント

3Dプリンターは、材料コストと製造コストだけでなく、従来の製造方法で見落としてきた、製品の1個目が製造されるまでの時間、人件費と手間、材料費以外に掛かる1個当たりのコストを考えることで初めて効果的に活用することができます。
そのポイントとしては、3Dプリンターが苦手なものを無理して作ろうとするのではなく、3Dプリンターが得意なことから挑戦することです。3Dプリンターが得意とすることは、最初に挙げた3つのメリット「時間短縮」「コスト削減」「手間の削減」です。この3つの得意なことのうち、2つ以上に当てはまる製造物を選ぶことが重要であり、製造のどの部分で3Dプリンティングを使っていくかという考えを深めていくことが重要です。
DDDJapan.comでは、貴社内で3Dプリントすべきものを選ぶお手伝いや、その時に必要な3Dプリンター機種を選ぶサポートをしております。ご不明な点があればお気軽にご連絡ください。

 

まとめ

3つのメリット「時間短縮」「コスト削減」「手間の削減」をより活かせるものから優先順位をつけて3Dプリンターの活用を始めることが大切です。私たちは3Dプリンターを活用すべきものを選ぶところから、機器や造形方式を選んだり実際に製造したり、必要なデータを用意したりどんな場面でもサポートしています。ご興味がありましたらお気軽にご連絡ください。

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