3DPCは、2024年1月にCaracol(カラコル)社と日本総代理店契約を締結し、大型積層造形(以下「LFAM」)を可能にしたロボットアーム式大型樹脂3Dプリンター「Heron AM」の取り扱いおよび販売を開始いたしました。
・関連記事:https://www.3dpc.co.jp/news/caracol-3dpc-partnership
LFAMは「Large Format Additive Manufacturing」の略で、従来の積層造形技術と比較してハードウェア・ソフトウェア・自動化が統合された、大型サイズを造形できる新しい技術のことをいいます。この技術は、建築や建設、自動車、航空宇宙、海洋、鉄道などの厳しい要件が求められる業界で注目を集めています。LFAMは、すべてのものづくりにおける、デザインの柔軟性と作業の効率性を向上させる技術になると期待されています。
この記事では、LFAM技術が搭載された「Heron AM」の紹介および同機器を使用した事例とそのメリットをご案内いたします。
「Heron AM」は、最大4mサイズの製品の造形を可能にし、さらにシステムを延長すれば最大で幅12mまで造形が可能です。造形ヘッド、ペレットの乾燥装置、ソフトウェアなど造形を開始するために必要なすべてが揃っています。また、幅広い高性能ポリマーから複合材料、リサイクル材料まで対応しており、ペレットから直接造形できるため材料費を大幅に削減できます。ペレット材によって生じる表面のざらつきも、付属のツールで削ることで滑らかな表面に仕上がります。
「Heron AM」は、幅広い高性能ポリマーから複合材料、廃棄物をリサイクルした材料まで、多くの材料に対応しています。以下の材料は、Heron AMで使用できるよう徹底的にテストされているため、最適な材料となっています。
1)PP、PP + 35% Glass Fiber、PP + 30% リサイクル済みのGlass Fiber
2)ASA、ASA + 20% Glass Fiber、ASA natural
3)PET-G、PET-G + 20%リサイクル済みのGlass Fiber
4)PC、PC + 20% Carbon Fiber
5)ABS、ABS + 30% Glass Fiber、ABS + 20% Carbon Fiber
6)PLA
7)TPE
8)PEI、PEI + 20% Carbon Fiber
・メール経由:info@3dpc.co.jp
Caracol社とTitans of CNC社は、「Heron AM」と同社のカーボンファイバーで強化したABS材料を用いて、Gas Monkey Garageによる1968 Chevrolet C10のフロントグリルのモックアップを製造しました。それにより、最終部品となるアルミ製のオーダーメイド部品を共同で製造できるようになりました。
オーダーメイドで自動車部品を製造する場合、モックアップが大きな役割を果たします。
・部品が正確にフィットするかの検証
・エラー、欠陥、やり直しのリスクを軽減し、コストと時間の節約
・設計の自由度を高めより複雑でユニークな形状を可能にする
このようにモックアップは必要不可欠ですが、従来の方法で製造すると、コストと時間がかかるだけでなく材料の無駄が多くなる傾向がありました。
「Heron AM」を使用すると、モックアップのような大きな部品を一体化した一つの部品として製造することができます。またペレットから直接造形できるため、材料費の節約とコストの削減を実現。さらに、従来の方法では製造が困難だった複雑な形状も造形できるため、設計における制限がなくなりました。
これらにより、従来の方法と比較してより短いリードタイムで、より優れた品質、フィット感、コスト削減を達成しました。
【部品詳細】
・材料:ABS(カーボンファイバー入り)
・サイズ:1900 x 300 x 500 mm
・製造時間:10時間
【従来の製造方法と比較し、Heron AMを活用した結果】
・リードタイム:70%短縮
・ランニングコスト:60%削減
トリミングツールとドリルは、航空機の機体の製造やメンテナンスの工程に欠かせません。アルミニウム、複合材、チタンなど、さまざまな材料を切断・成形し、最終的な航空機の機体を構成するさまざまな部品を作成・修正するために使用されます。これらの工具は、使用する材料の種類や具体的な作業内容に応じて慎重に選択する必要があります。適切な工具と技術により、航空機メーカーは、航空業界の厳しい安全基準を満たす、精密で信頼性の高い機体を作成しています。
この治具はCaracol社のABS 20GFを使用して製造され、製造作業中にかかるあらゆる機械的圧力に対する耐性を保証しながらも、高い費用対効果を維持しており、軽量部品の交換を行う際に使用されています。
【部品詳細】
・材料:ABS(ガラスファイバー入り)
・サイズ:1650 x 400 x 1000 mm
・重量:100 kg
【従来の製造方法と比較し、Heron AMを活用した結果】
・重量:最大で80%軽量化され、輸送や保管が容易に
・廃棄物:最大で60%削減
・リードタイム:12週間から6週間に短縮(50%の節約)
・ランニングコスト:50%削減
スーパーカーのカーター用カーボンファイバーカバーを製造するための治具を製造しました。Caracol社とAirtech社が共同開発した材料を使用。材料には同社のダールトラムC250-CF素材(20%のCFで強化されたPC)を使用しており、最高180℃、6barまで耐えられるため、中温中圧での使用に最適です。
最大の特徴は、最終完成品とラミネート用の金型を直接製造することで、工程のステップを削減し、総重量を減らして物流と部品の保管を簡素化したことであります。造形後、金型はCNCで後加工され、ラミネート等を行うために必要な表面品質で寸法の誤差を最小にするために、金型上に最終部品をトリミングするための溝が設けられています。
【部品詳細】
・材料:PC、CF
・サイズ:500 x 500 x 200 mm
・重量:21 kg
【従来の製造方法と比較し、Heron AMを活用した結果】
・重量:最大で60%軽量化
・廃棄物:最大で70%削減
・リードタイム:8週間から2週間に短縮(80%の節約)
・ランニングコスト:50%削減
従来の製造方法と比較し、「Heron AM」で製造することでリードタイムやランニングコストの削減など様々なメリットを提供することがわかりました。
3DPCでは、今回紹介したLFAM技術を採用した「Heron AM」の機器販売に加え、同機器を活用した受託製造を行っています。是非お気軽にお問い合わせください。
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最先端技術を搭載した海外製3Dプリンターやフィラメント製造機、表面処理装置、造形品などを見て触ることができる工場見学を開催しております。
ご興味のある方は是非お申込みください。
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射出成形は、プラスチック製品業界において、大量生産を目的とした最も手ごろで広く普及している製造方法のひとつです。
射出成形には主に4つの工程があります。
① 溶融プラスチックの射出
② 金型内での圧縮
③ 冷却処理
④ 成形品を取り出す
文献調査によると、成形サイクルの約70%から80%もの時間が冷却処理に使われていることがわかりました。品質を保ちながら、より製造効率を向上させるには、最も長い時間を占めている冷却処理にかかる時間が重要なポイントであり、その短縮が成形利益率を上げることにつながるといえます。
この記事では、近年注目されている研究である、射出成形における冷却時間の短縮を実現した、Conformal Cooling Channel(以下「3次元水管」)※1 がもたらすメリット、さらに3次元水管金型をより安価に速く製造できるワイヤーDED方式金属3Dプリンター「Meltio M450」(Meltio社)をご紹介します。
※1: 自由な設計を可能にした金属3Dプリンターを用いて製造する金型の形状に沿った複雑な水管
経済的観点からみると、射出成形金型の製造には多額の投資が必要です。したがって、収益性を最大化するために、金型の寿命をより長くすることが求められています。つまり射出成形金型は、その性能や品質を落とすことなく、何度も成形サイクルに耐えられるものでなければなりません。
冷却工程が成形サイクルのボトルネックであることを考えると、金型内に高効率の冷却流路を持つことは不可欠です。冷却が不十分であったり低性能であることは、最終製品の品質に直結するため、望ましくない変形や収縮を引き起こすなど悪影響を及ぼします。従来の冷却流路は、製造は簡単なものの、金型形状におけるプラスチック製品の複雑な形状や輪郭に正確に適合しないため過度に長くなってしまい、温度のばらつきが生じます。このばらつきが最終製品の品質に影響を与える一因です。
この課題を解決するために、3次元水管の研究が注目されています。
3次元水管は、射出成型に変革をもたらすゲームチェンジャー※2 で、4つの利点があります。
① 構造的完全性※3 の強化
② 効率的な熱放散
③ 成形サイクルの時間短縮
④ 成形部品の品質向上
※2: 既存の状況や考え方を大きく変える存在
※3: 製品が、自重を含む荷重を受けても壊れたり過度に変形したりすることなく保持できる能力
一般的に、冷却工程を管理する上で重要なのは、冷却時間と冷却性能の2つです。
まず、冷却時間を短縮することは、冷却処理の工程の向上として、最も望まれています。これは製品の変形や収縮のリスクを軽減すると同時に、より短い時間での成形サイクルを実現し、さらに高い生産率を可能にします。
2つ目の冷却性能は、主に金型の材料特性と冷却用途によって向上可能です。これらのうち、金型材料の特性については、熱伝導率の値よりも主に強度、重量などの機械的特性が優先されて決定されるため、実用的用途における性能向上の要因とは考えられていません。そのため、主に冷却用途が性能向上の要とされています。
複雑なプラスチック製品とは、製品内の曲線の難しさによって定義されています。このような曲面を、直線に穴のあいた冷却流路に沿わせるのは非常に困難です。その結果、冷却時間が長くなるだけでなく金型表面温度が均一でなくなるため、製品の品質が低下し、不良品につながります。
これまで、流路間隔、流路径、流量、流路を循環する冷却材の熱特性などを最適に設定することで、冷却性能を向上させてきました。しかし、複雑なプラスチック製品では、流路や機械加工の設計上の制約から、前述の方法だけではまだ不十分なことがあります。
そこで、射出成形における冷却性能を向上させる画期的な解決策として、冒頭で紹介した3次元水管が注目されています。3次元水管は、金型の形状やプラスチック製品の輪郭に沿って、より効率の良い冷却流路を精密に設計することを可能にしました。これにより冷却時間が短縮されるだけでなく、金型表面温度の均一性を高め、冷却性能を飛躍的に向上させます。
Meltio社のワイヤーDED方式金属3Dプリンター「Meltio M450」は、格子構造からなる3次元水管を配置した射出成形金型の製造を可能にし、工業生産の領域にこれまでにない成形サイクルを提供します。格子構造によって金型の全体的な構造的完全性を高めるだけでなく、射出成形工程での効率的な熱放散を促進します。これにより、正確な温度制御が可能になり、成形サイクルの時間を短縮し、成形部品の品質と一貫性の向上が可能になります。
さらに「Meltio M450」は、3次元水管を配置した射出成形金型を、従来の金型よりも安価に速く造形できます。実際に、今回研究を目的に造形された金型では、従来のものと比較して冷却時間を約50%短縮、成形利益率の約55%上昇を実現しました。
基本的に、3Dプリンティング技術は3次元水管と相性が良いですが、この技術によって射出成形工程における効率、費用対効果、性能向上を促進し、製造におけるこれまでの固定観念を覆します。
3Dプリンティング技術を活用して製造する射出成形金型における3次元水管のメリットを評価するため、2つの金型サンプルの熱流体シミュレーションを実施しました。
画像左は穴あけ加工による従来の冷却流路を配置した金型、右はジャイロイド格子構造からなる3次元水管を配置した金型です。シミュレーションには、Autodesk Fusion 360ソフトウェアを使用しました。
熱流体シミュレーションでは、射出成形の工程を最適化するために金型の温度を効率的に管理することに重点を置いています。シミュレーションで設定した熱負荷は、射出された溶融プラスチックの推定温度に相当する80℃を金型表面温度とし、それぞれの冷却流路に最適な冷却水の温度を20℃としました。
両方の金型に同じパラメーターを使用した結果、3次元水管を配置した金型の方が優れた熱流動を示すことが判明しました。熱流に関しては、数値が高いほど熱伝達率が高いことを示しており、溶融プラスチックから冷却流路内の冷却材への熱伝達が促進されている可能性が考えられます。さらに格子構造にすることで、界面表面積と冷却材の流れを増加させるため、円形の冷却流路に比べても熱伝達率を向上させることも観察されました。このことからも、成形サイクルの間の金型の冷却性能は、生産性の向上、溶融プラスチックを凝固させることによる成形部品の品質向上に有益であることがわかります。
この研究では、3次元水管を持つ金型が、より均一な温度分布を示すことも明らかになっています。
高い熱伝達率をもつ3次元水管は金型内の温度をより一定に保つことに貢献しており、その結果、金型表面温度の均一性が向上し、成形部品の品質がより安定しました。加熱された界面の温度勾配が非常に低いことが明示されたことで、このような3次元水管は、熱バランスが重要な射出成形金型の用途に最適である可能性が見込まれます。
3Dプリンティング技術を活用して製造する3次元水管を配置した射出成形金型は、その形状やプラスチック製品の輪郭に沿ってより効率の良い冷却流路が設計できるだけでなく、金型表面温度の均一性を改善し、今までにない生産性の向上を実現することがわかりました。従来の冷却流路を配置した射出成形金型と比較しても、かつてない成形サイクルの向上と費用対効果をもたらし、プラスチック射出成形に変革をもたらします。
Meltio M450には金属3Dプリンターに必要なすべてが準備されているため、使いやすく、誰でもすぐに造形をはじめられます。使用する金属ワイヤーはMIGワイヤーなどの既成材料を含め、ステンレスやチタンなど様々な材料に対応しています。さらに、鋳造品以上の強度をもった小~中サイズの造形が可能で、バイメタル製品の研究にも最適です。厳格な設置要件のある周辺設備や保護具を必要としない高い安全性があるので、初めて金属3Dプリンターを導入する企業や大学などの教育機関にもおすすめです。
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参照
1. Santos, Mailan. Fabricación Aditiva En Acero Para Herramientas H11 de Útiles Para Moldeo Por Inyección: Verificación de La Conformidad. 27 Nov. 2023, p. 190.
2. B. B. Kanbur et al., «Metal Additive Manufacturing of Plastic Injection Molds with 3次元水管s», Polymers (Basel), vol. 14, n.o 3, p. 424, ene. 2022, doi: 10.3390/polym14030424.
3. Plastics Technology, «Why Conformal Cooling Makes Sense. » Accedido: 26 de noviembre de 2023. [En línea]. Disponible en: https://www.ptonline.com/articles/why-conformal-cooling-makes-ense
4. M. Mazur, M. Leary, M. McMillan, J. Elambasseril, y M. Brandt, «SLM additive manufacture of H13 tool steel with conformal cooling and structural lattices», Rapid Prototyp J, vol. 22, n.o 3, pp. 504-518, abr. 2016, doi: 10.1108/RPJ-06-2014-0075.
5. S. Feng, A. M. Kamat, y Y. Pei, «Design and fabrication of conformal cooling channels in molds: Review and progress updates», Int J Heat Mass Transf, vol. 171, p. 121082, jun. 2021, doi: 10.1016/j.ijheatmasstransfer.2021.121082.
]]>3DPCが取り扱っている、Photocentric社の光造形方式3Dプリンター「LC Magna」で、アルミ金型に匹敵する射出成型用金型の製造に成功しました。
イタリアの靴メーカーのGrisport社は、射出成形の技術を使用して靴に必要なアルミ金型を製作していましたが、より早く新製品を市場に流通させたいという課題を抱えていました。
そこで、Photocentric社の光造形方式(LCD)3Dプリンター「LC Magna」を導入し、同社の新材料「HighTemp DL401」を採用した金型を製造することで、流通の迅速化に加えて、コストの削減を実現しました。また限定版やカスタム製品の生産も可能にしています。
3Dプリンティング用の金型の設計から、射出成型機、最終製品にいたるまでの様子
「3Dプリンティング技術は、私たちの靴などの製品や新モデルを市場に送り出す方法を、大きく変えました。これまで、射出成型で金型を製作していた際、設計から最終製品になるまでに約4か月かかっていましたが、LC Magnaで金型を3Dプリントした場合、約1か月半ほどで最終製品が完成します。今回、靴の金型に使用したPhotocentricの新しい材料「HighTemp DL401」は、PUの射出に必要な高温に到達し、安定した温度を維持できるため、金型の製造に非常に優れています。3Dプリンターを使用して社内で金型を製造することは、私たちにとって革命的です。」
さらに、金型製造におけるランニングコストは、従来の約80万円から約4万円まで大幅に削減。高性能の高温プラスチックを使用して造形された、射出成形用金型はアルミ金型の性能に匹敵し、低コストで迅速な大量生産を可能にしました。
Grisport社の3Dプリンティングで造形する金型の設計は、これまでの設計と同様のものでした。つまり、今回の靴の金型製造で、従来の設計のまま3Dプリンティング技術に置き換えることで、リードタイムを短縮し、ランニングコストの削減が可能であることを実証しました。LC Magna と HighTemp DL401は、靴の金型を発端に、射出成形用金型の製造方法に大きな変化をもたらすと期待されています。
HighTemp DL401は、3Dプリンティング用に特別に開発されており、高い剛性と延性を兼ね備えた、高温にも耐える金型用途向けの硬質樹脂です。さらに、高温流体やガスマニホールド 、耐熱ハウジング、治具などの製造にも最適。
LC Magnaは、小型から大型サイズの部品や製品、最終部品を高精度に造形します。1時間あたり、最大で高さ16 mmの造形を可能にするほど造形速度が速く、試作・大量生産・最終部品の製造に最適な3Dプリンターです。
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製造業で多く使われており量産に向いている射出成形ですが、同じく量産に対応できて自由度の高い3Dプリンターがないか探しているという方もいるでしょう。
また、射出成形と3Dプリンターを比較してどちらを導入すべきか、悩んでいるという方も多いはずです。比較する際は、さまざまな観点から総合的に検討する必要があり大変に感じてしまいます。
そこでこの記事では、射出成形と3Dプリンターの特徴の解説と比較をしていきます。
比較では、成形や造形速度・コスト・形状の自由度・設計変更への対応・品質の安定性という5つの観点からそれぞれを比較。どちらを選ぶべきかを検討する際のポイントをまとめていきます。ぜひ、生産効率に優れたモノづくりの参考にしてください。
射出成形と3Dプリンターの大きな違いは「製造物の型を必要とするかどうか」です。まずは、それぞれの特徴から確認してみましょう。
射出成形とは、金型を用いた成形法です。加熱して溶かしたプラスチック樹脂などの材料を金型に流し込み、冷やして固めることによって成形品を作ることが一般的です。
使用する機械は、材料を溶かして金型に流し込む「射出装置」と、金型を成型する「型締め装置」という2つの構造に分かれています。
また射出成形では、金型を入れ替えることによって形状の異なる製品を成形できます。連続してスピーディに量産できるという強みがあり、モノづくりの手法として製造現場で古くから活用されています。
3Dプリンターとは、デジタルデータをもとに3次元の立体造形物を造形する装置です。
3Dプリンターのなかにもさまざまな方式がありますが「溶かした材料を1層1層積み重ねることによって造形する」という仕組みが基本となります。
製造物の金型を作成する工程そのものを省けるというメリットがある3Dプリンターは、製品開発のなかでも主に試作段階で活用されてきました。
しかし、近年では試作品だけでなく量産型にも対応可能な3Dプリンターが登場しており、多くの企業が3Dプリンターを導入しています。
関連記事:
・3Dプリンターによる量産に適した場面とは?量産事例や課題も紹介
・試作だけで終わらない!Carbon社3Dプリンターで最終製品の量産に成功した事例を紹介
ここでは射出成形と3Dプリンターの詳細な違いについて、項目別に比較していきます。
【射出成形と3Dプリンターの比較表】
以下では、それぞれの比較項目を詳しく解説していきます。
射出成形と3Dプリンターを成形・造形速度で比較する場合、「量産できるかできないか」によってスピードメリットの大小が変わります。
金型が完成すれば短時間で多くの製品を製造できる射出成形は、量産時にスピードメリットがあります。ただし、試作型・本型それぞれの金型が完成するまでには時間がかかります。作成した金型が不合格になれば、修正時間も必要です。成形開始までのロスタイムが発生するため、小・中規模の生産では、思うようなスピードメリットが得られないことがあります。
一方、3Dプリンターの場合、単純な造形速度による比較では射出成形に劣る製品が多いものの、金型が不要な分スピーディに製造に着手できます。大規模な生産でない場合は、3Dプリンターにスピードメリットがあるといえるでしょう。
コスト面での比較についても「量産できるかできないか」という点に左右されます。
射出成形では金型作成の工程に製造費や人件費がかかるため、1点あたりの製造コストが割高になりがちです。ただし、量産時のスピードアップができれば、全体的なコストを抑えられる可能性があります。
一方、3Dプリンターでは金型作成にかかるコストが発生しないため、試作段階や小ロットの生産時にコスト的なメリットを得やすいでしょう。大量生産に不向きな機種を使用してしまうと、射出成形を使用した場合と比較してコストがかさむことがあるため、機種選定には注意が必要です。
形状の自由度で比較した場合、3Dプリンターに軍配が上がります。
射出成形には、材料の流動性や冷却温度、型の開閉など、成形にあたって多くの要件があります。
そのため、射出成形では下記のような形状の製造が困難です。
一方、3Dプリンターでは複雑な形状の製品でも簡単に造形できるだけでなく、複雑なパーツを1つの設計に統合する一体造形も可能です。
設計変更に対する対応の難易度も、3Dプリンターのほうが簡単です。
設計変更の際、射出成形では金型の作成からやり直す手間がかかるため、コストはもちろん金型の完成まで1週間以上の時間を要する場合があります。
その点、3Dプリンターはデータを差し替えるだけで簡単に設計変更ができます。試作段階の試行錯誤はもちろん、顧客からの要望による設計変更にも柔軟に対応できるでしょう。
射出成形は、長年にわたって品質の安定性の高さが支持されてきた成形方法です。量産時にも高い品質を維持し続けられる点は、射出成形の強みといえます。
一方で3Dプリンターは、射出成形と比較して精度に劣ると評価されることが一般的です。繊細な動作にも対応できるぶん、軽微な修正や材料変更に造形エラーを起こす恐れがあるため、機種によっては3Dプリンターによる量産は不向きだといえます。
ただし、3Dプリンターの種類によっても性能は異なるほか、技術の進歩が著しく新しい機種も続々と発表されています。現在の業界動向を理解した上で、作りたい製品にマッチした3Dプリンターを選ぶことが大切です。
射出成形と3Dプリンターを比較した場合、両者はそれぞれ以下のような傾向があります。
ただし、これはあくまでも現時点での一般的な「傾向」であり、使用する機械や製造する製品の種類、納期によっても比較結果は異なります。
また、近年における3Dプリンターの目覚ましい発展も考慮すべきポイントです。
たとえば、「光造形方式」の3Dプリンターは、成形速度が速く生産力が高いだけでなく、造形精度も高いことが特徴です。こうした機械を選ぶことで、一般的な3Dプリンターのデメリットをカバーすることも可能となります。
機械を選ぶ際は、一般的なメリット・デメリットだけでなく、広い視野で総合的に比較検討することがおすすめです。
射出成形と3Dプリンターにはそれぞれメリット・デメリットがありますが、製造物や使用機種によって異なるため、単純に比較することが難しくなっています。
それは、3Dプリンターの進化が著しく、比較検討するためには最新動向を知るプロの意見を参考にする必要があるからです。
弊社では、量産にも対応可能な光造形方式(DLP方式)を採用したPhotocentric社の3Dプリンターならびに、同じく光造形方式(DLS方式)のCarbon社3Dプリンターを販売しております。下記の3種類から、状況にあわせてご選択いただけます。
・LC Opus:初心者にも扱いやすいコンパクトなサイズで高速・高解像度を実現
・LC Magna:大型サイズの造形や大量生産に適した、超高速・高精度3Dプリンター
・Carbon M3 Max:最終製品の量産を可能にした3Dプリンター
「射出成形と3Dプリンターのどちらを導入すべきか悩んでいる」という方は、まずはお気軽に以下のフォームからご相談ください。
■設計・開発から製造、後加工、品質評価まで一貫したサービスを提供
3DPCでは、金属・樹脂合わせて10種類以上の3Dプリンターを取り扱っており、知見や経験が豊富な社員のもと、設計・開発から、製造、後加工、品質評価まで一貫したサービスを提供しています。また機器のご紹介も行っており、ご購入後は、1日から2日間のトレーニング、修理、メンテナンスのサポートを実施しております。
■工場見学開催中!最先端技術を搭載した海外製3Dプリンターが10種類以上
具体的なイメージが持てるように、実際に3Dプリンターや造形品を見て触ることができる工場見学を開催しております。また、樹脂であれば無料で造形を承っており、金属の場合は50%オフで造形を行っています。※お申し込み時にデータをいただき、工場見学の際に造形品をお渡しいたします。
ご興味のある方は是非お問い合わせください。
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近年、軽量化・コスト削減・性能の向上を目的とした部品開発において、「異種金属接合」や「バイメタル」といった、異なる金属材料を用いた製造技術が採用され始めています。しかし、まだ開発・研究段階であることが多いため、事例が少ない技術でもあります。
この記事では、異種金属接合とバイメタルの特徴から、弊社取り扱いのワイヤーDED方式金属3Dプリンター(以下「Meltioシステム」)でバイメタル部品を造形するメリットをご紹介いたします。また、Meltioシステムを用いて製造されたバイメタル部品も紹介。
異種金属接合とは、異なる種類の金属材料を「接合」する技術のことをいいます。
一般的に、接合方法は3種類あり、「機械的接合」・「化学的接合」・「材料的接合」といった方法があります。それぞれの接合方法は下記の通りです。
ねじや圧力、焼き嵌め、カシメなどの固定による接合のことを機械的接合といいます。具体的には、接着剤と圧力を使って接合したり、金属を加熱することによって生じた膨張を利用して接合するなどといった方法があります。
原子やイオン、ファン・デル・ワールス力やアンカー効果など、分子の間に働く力を利用した接合方法です。接合には接着剤を使用しており、エポキシ系接着剤から、嫌気性接着剤、弾性接着剤、瞬間接着剤、紫外線硬化型接着剤などが主に用いられています。
部材を溶融させて接合する「溶融接合」と、ロウやハンダを溶融させて接合する「液相接合」の2種類の方法があります。
上記のように、異種金属接合には3種類の接合方法があります。
異種金属接合と似てるようで違う特徴をもつ「バイメタル」について説明していきます。
バイメタルとは、異なる金属材料を使って1つの部品を「造形」することをいいます。
異種金属接合の場合は、接着剤を使用したり、金属を加熱したり、部材を溶融するなど様々な方法を用いて接合していますが、Meltioシステムでは、機械の開始ボタンを押すだけで、簡単にバイメタル部品の造形が可能です。
Meltioシステム:
異種金属接合と同様に、バイメタルも、軽量化・コスト削減・性能の向上が実現可能となっていますが、Meltioシステムを使用したバイメタル部品の造形には、下記のようなさまざまなメリットもございます。
造形中、金属ワイヤーは自動で安全に交換されるため、手動による材料の交換は必要ありません。
異なる金属材料が使えることにより、サポートの部分や造形が重要でない部分(中身をうめないといけない時など)に低コストの犠牲材を使用することが可能です。
異なる高性能な金属材料を使用してクラッディングすることができ、また部品の性能を向上させることができます。
どちらのワイヤーもほぼ100%使用され、また造形や交換の過程で材料が無駄になることもありません。
実際に、Meltioシステムを使って造形したバイメタル部品をご紹介します。
上のブレード部分は、加工が困難な Inconel® 718 で造形されています。下のラフト部分はSUS 316L で造形されているため、より簡単に削ることができ、費用対効果の高い部品となっています。
材料:ブレード部分 Inconel® 718 | ラフト部分 SUS 316L
サイズ: 35 x 75 x 135 mm
重量:1.11 kg
鋳鉄の中には、ステンレス鋼のような材料を直接成膜できないものがあります。このような場合、ニッケル含有量の高い中間層を適用することで、接合と部品の強度を高めることができます。
材料:中間層 Inconel® 718 | 補修部分 SUS 316L
中心部に Inconel® 718 を使用することで腐食性の高い液体を運ぶことができ、 ウォータージャケットには SUS 316L を使用して部品コストを下げるなど、バイメタルの利点を活用しています。これにより、高価な Inconel® 718 の使用量を 66%以上削減できています。
サイズ:108 x 108 x 150 mm
重量:5 kg
材料:ウォータージャケット SUS 316L | 中心部 Inconel® 718
造形時間:16 時間 37 分
中心部に SUS 316L を使用し、表面に Inconel® 625 を使用したことで、少量生産に適した最小限のコストになりました。柔軟性があり、鋳造よりも材料費が安く、また超合金に比べ低予算となっています。
材料:中心部 SUS 316L | 表面 Inconel® 625
サイズ:73.14 x 47.98 x 17.00 mm
重量:1.6 kg
他にも、部品の先端部分だけに Inconel® 718 を使用して、耐摩耗性を向上させるなど、様々な目的でバイメタル技術が活用されています。
このように、それぞれの金属材料が持っている性質を組み合わせて、性能を向上させたり、コスト削減を試みた部品の製造や研究が増えています。
3DPCでは、設計からサポートしており、実際に「Meltioシステムを活用してバイメタル部品をつくってほしい、つくってみたい」などのご要望がありましたら、是非一度お問い合わせください。
・メール経由:info@3dpc.co.jp
3DPCでは、金属・樹脂合わせて10種類以上の3Dプリンターを取り扱っており、知見や経験が豊富な社員のもと、設計・開発から、製造、後加工、品質評価まで一貫したサービスを提供しています。また機器のご紹介も行っており、ご購入後は、1日から2日間のトレーニング、修理、メンテナンスのサポートを実施しております。
具体的なイメージが持てるように、実際に3Dプリンターや造形品を見て触ることができる工場見学を開催しております。また、樹脂であれば無料で造形を承っており、金属の場合は50%オフで造形を行っています。※お申し込み時にデータをいただき、工場見学の際に造形品をお渡しいたします。
ご興味のある方は是非お問い合わせください。
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3Dプリンターは、主に部品および製品の機能や品質を確認するために、試作目的で使用されることが多かったですが、近年では技術が進歩しているため、最終部品の製造や量産目的としての活用も多くなっています。
今回は、Carbon社の3Dプリンターを用いてどういった製品が量産されているのかをご紹介します。
Carbon社の3Dプリンターは、最終部品や製品の量産を高品質にすばやく製造することができるため、世界中で注目されています。
アディダス社のミッドソールから、NFLのプロフットボール選手のヘルメット、サントリーホールディングス社のペットボトルのキャップまで、様々な業界で量産目的として活用されており、量産に最適な3Dプリンターです。
実際に、Carbon社の3Dプリンターを使って量産に成功した事例が多数あり、2点紹介していきたいと思います。
フットボール選手の試合中による頭部への度重なる打撃は、脳震盪や神経変性疾患などを引き起こす問題があり、頭部をより安全に守るための方法はないかと多くの企業が模索していました。
スポーツ用品メーカーのRiddell社は、打撃からの守りを強化するため、Carbon社と提携し「Riddell SpeedFlex Precision Diamond helmet」のライナーを開発、製造しました。
選手の頭部をスキャンすると、Carbon社独自のシステム「Carbon Lattice Engine」がデータベースから自動的に選手の頭部にあった最適なライナーの設計をしてくれます。
ライナーにはラティス構造※1 の技術を用いており、万が一衝撃を受けたとしても、元の形状に戻るよう設計されています。
さらに、選手1人1人の頭部に正確にフィットするよう設計されているため、これまでのヘルメットと比較すると、安全性は非常に高く、快適なフィット感を提供しています。
※1: 幾何学形状が規則的もしくは不規則的に並ぶことで造形物を構成する構造
毎年NFLのシーズン前に、NFLとNFLPAは、市場に出回っているすべてのヘルメットの安全性を徹底的にテストしています。
どのヘルメットが頭部への衝撃を最も軽減できるかを評価するために、研究が行われ、Riddell社のヘルメットはTOP10にランクインしています。(2023年の調査の結果)
これまで、医療用インソールを入手するにあたって「コストが高い」「フィット感がいまいち」「手に入るのに時間がかかる」といった課題がありました。
inStryde社は、このような課題を解決するため、Carbon社の3Dプリンターを導入しました。
ラティス構造の技術を取り入れたことで、クッション性と衝撃吸収性、反発性のバランスがよくなり、優れたフィット感を提供するだけでなく、痛みを和らげることができています。
さらに、同社は独自のソフトウェア「SmartFit」をアップデートし、身長や体重、歩行、足の形に関する情報を提供できるスキャン機能を搭載しました。
顧客は、スキャンするだけで自分の足にあったインソールを手に入れることができます。
さらに、自社による設計や製造が可能になったことで、通常依頼してから受け取りまでに約2ヵ月かかるところ、inStryde社では約10日間で納品が可能になりました。
また、病院などでインソールを購入する場合、二足で約6万円のところ、inStryde社では半額の3万円で購入が可能となっており、顧客は手頃な価格でインソールを入手することができます。
inStryde社の医療用インソールと他医療用インソールの比較は下記の通りです。
病院や市販のインソールとinStryde社のインソールを比較してみると、inStryde社のインソールが総合的にはるかに優れていることがわかります。
このように、3Dプリンターは試作だけでなく、最終部品および製品の量産も可能なことがわかりました。
別記事では、どのような現場が3Dプリンターによる量産に適しているのか、解説しています。
・3Dプリンターによる量産に適した場面とは?量産事例や課題も紹介
弊社では、Carbon社の3Dプリンターを販売しており、また3Dプリンターを使った受託製造も承っております。
ご興味のある方は、是非一度お問い合わせください。
写真提供:https://www.instryde.com/
参考:https://www.whatproswear.com/football/news/top-5-helmets-rated-by-the-nfl-nflpa/
3DPCでは、金属・樹脂合わせて10種類以上の3Dプリンターを取り扱っており、知見や経験が豊富な社員のもと、設計・開発から、製造、後加工、品質評価まで一貫したサービスを提供しています。また機器のご紹介も行っており、ご購入後は、1日から2日間のトレーニング、修理、メンテナンスのサポートを実施しております。
具体的なイメージが持てるように、実際に3Dプリンターや造形品を見て触ることができる工場見学を開催しております。また、樹脂であれば無料で造形を承っており、金属の場合は50%オフで造形を行っています。※お申し込み時にデータをいただき、工場見学の際に造形品をお渡しいたします。
ご興味のある方は是非お問い合わせください。
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3Dプリンターによる量産が可能になれば、生産性の向上を期待できます。
実際に、世界に名を馳せる企業も、3Dプリンターによる量産に取り組んでいます。
とはいえ「自社製品の量産に3Dプリンターを活用できるのかどうかよくわからない」というケースもあるでしょう。
そこでこの記事では、どのような現場が3Dプリンターによる量産に適しているのか、具体的な量産事例とともに解説します。
3Dプリンターを活用することによって、より効率的に製品を量産できるケースがあります。
3Dプリンターによる量産に適しているのは、次のような場面です。
・カスタマイズ製品を量産する必要があるとき
・スピーディな量産を求められるとき
・需要の変動をともなう量産に対応したいとき
・複雑なパーツを量産したいとき
「受注生産」と「大量生産」という、一見すると相反してみえる2つの要望をかけあわせた「マスカスタマイゼーション」という製造方法があります。
顧客から寄せられる要望に個別に対応しながら製品を量産することは、簡単ではないでしょう。
とはいえ、製品の付加価値を高めるためにも、マスカスタマイゼーションが求められるシーンは少なくないはずです。3Dプリンターは、このようなカスタマイズされた製品の量産に適しています。
3Dプリンターでは、設計データを3Dプリンターにアップロード・造形することによって製品を製造します。データを顧客のニーズに合わせて変更して造形するだけで、パーソナライズされた製品を簡単に製造することが可能です。
スピーディな量産が求められる場面においても、3Dプリンターが活躍します。
たとえば、従来の射出成形ツールを使用する場合、金型が仕上がるまでは製造に着手することができません。
製造開始までに時間がかかるようでは、顧客の要望や消費者の需要にいち早く対応することは難しいでしょう。
その点、金型を必要としない3Dプリンターでは、設計データをアップロードするだけで製造を開始できます。適切な製造環境を整えれば、最小限の監視のみで高品質な製品を24時間製造することも可能です。
また従来の方法では、1つの製品に含まれる各部品に合わせて鋳造や溶接・プレス加工・切削加工といったさまざまな加工法を使い分ける必要があるため、設計段階から加工法に配慮しなければなりません。
一方、加工法による制約を受けにくい3Dプリンターを活用すれば、加工法ごとに品質や技術などを検討する工程そのものを削減できるため、迅速な量産につながります。
製品によっては、時期によって需要が大きく変動するケースもあるでしょう。一時的に大量生産する必要があっても、後に需要が減少し、その対応に苦慮することもあります。
3Dプリンターは、設計データさえあれば必要なときに必要な分だけ製品を製造することができます。そのため、急な需要増への対応はもちろん、需要が急に減少したときにも簡単かつ迅速に対応しやすいというメリットがあります。
未使用の在庫を残すことがなくなるため、製品の輸送や倉庫での保管にともなうコストや労力を削減することも可能です。
需要の増減にあわせて無駄のない生産体制を確立できる点は、3Dプリンターの強みといえるでしょう。
3Dプリンターは「複雑な形状が原因で他の方法では生産が難しい」という製品の量産にも適しています。
3Dデータをもとに積層方式で物体を形成する3Dプリンターは、細部が複雑な形状のパーツでも簡単に製造することが可能です。さらに、複雑なパーツを1つの設計に統合することもできるため、後で組み立てる必要がなくなります。
組み立てにかかる手間や材料コストを抑えつつ複雑なパーツを量産できる点も、3Dプリンターの強みといえます。
世界的に有名な企業も、3Dプリンターを活用した量産に取り組んでいます。
ここでは、3Dプリンターのメリットを活かして製品を量産している具体的な事例を紹介します。
世界で数百万足が販売されているadidasのランニングシューズ「4DFWD」も、3Dプリント技術を駆使して量産されています。
ひときわ目を引く格子構造のミッドソールは、1足(両足分)あたり約30分で造形できるとのことです。(出典:adidas|4DFWD)
CHANELの化粧品部門はフランスのメーカーと提携し、3Dプリント技術を活用したマスカラブラシを量産しています。
楕円形に5組の毛が植毛された非常に精密な形状は、3Dプリント技術だからこそ実現できた量産事例です。
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カミソリ製品のブランドであるジレット(Gillette)でも、3Dプリンターを利用してカスタマイズしたカミソリのハンドルを量産した事例があります。
"
その他にも、自動車や航空・医療・日用品など、さまざまな分野において3Dプリンターを活用した量産事例があります。
【量産事例】
・ゴルフのパター
・フィギュア
・メガネフレーム
・バックパック
・タービンブレード
・医療用インプラント
・補聴器
・金属アクセサリー
・小売用ネームタグ
など
大手自動車メーカーBMWも、自動車部品の大量生産における3Dプリンティングの実現可能性を試す研究を始めています。
3Dプリント技術の活用シーンは、今後さらに増加していくでしょう。
また、別記事にて、3Dプリンターにおける量産事例をさらに詳しく書いています。
・試作だけで終わらない!Carbon社3Dプリンターで最終製品の量産に成功した事例を紹介
3Dプリンターによる量産には、いくつかの課題も存在します。
主な課題には以下の2つがあります。
それぞれ解説していきます。
3Dプリンターによる量産を行うためには、大型または多数の3Dプリンターを用意する必要があります。
また、新しいワークフローを設計・実装する際は、材料やオペレーティングソフトウェアも必要となるでしょう。
初期費用が高額になりがちな点は、3Dプリンターによる量産の代表的な課題に挙げられます。しかし、3Dプリンターの場合、製造にかかる条件が一度整えば、同じ条件で安定的に製品を量産することが可能です。
長期的にみればコスト減を期待できるため、経費バランスを考慮して導入を検討する必要があるでしょう。
繊細な動作にも対応できる3Dプリンターは、軽微な修正や材料の変更であっても造形エラーを起こす恐れがあります。
再現性という意味において、現状の技術では3Dプリンターによる量産には不向きな製品もある点は、今後の開発によって解決していくべき課題といえます。
もちろん、導入する3Dプリンターによっても特徴や強みは異なります。製品の量産のために導入を検討する際は、製造したい製品にマッチした3Dプリンターを選ぶ必要があります。
3Dプリンターを活用した効率的な量産法は、近年多くの企業が注目しています。
将来性のある分野であることから現状では課題も残るものの、適切な生産工法の選択肢のひとつとして期待されていることは間違いないでしょう。
弊社では、量産に最適な、Carbon社並びにPhotocentric社の3Dプリンターを販売しており、また3Dプリンターを使った受託製造も承っております。個数によって量産対応も行っておりますので、3Dプリンターによる量産を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。
3DPCでは、金属・樹脂合わせて10種類以上の3Dプリンターを取り扱っており、知見や経験が豊富な社員のもと、設計・開発から、製造、後加工、品質評価まで一貫したサービスを提供しています。また機器のご紹介も行っており、ご購入後は、1日から2日間のトレーニング、修理、メンテナンスのサポートを実施しております。
具体的なイメージが持てるように、実際に3Dプリンターや造形品を見て触ることができる工場見学を開催しております。また、樹脂であれば無料で造形を承っており、金属の場合は50%オフで造形を行っています。※お申し込み時にデータをいただき、工場見学の際に造形品をお渡しいたします。
ご興味のある方は是非お問い合わせください。
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昨今、電気やバイオテクノロジー、自動車、航空宇宙分野において、小型化デバイスの需要が急増し、サムネイル画像の左※1 のような、マイクロ単位の部品開発に関心が高まっています。3Dプリンターを活用してこのような小さな部品をつくることを「マイクロ3Dプリンティング」または「マイクロアディティブマニュファクチャリング(AM)」と呼びます。マイクロ3Dプリンティングを活用すれば、従来の製造方法では不可能だった形状の極小部品を、より迅速かつ低コストで製造できます。
※1 HD Slateによる新生児の心臓ケアを改善するための小型心臓カテーテル(サイズ比較のためにプッシュピンを利用)
マイクロ3Dプリンティングとは、マイクロ単位の複雑な部品を製造する技術のことをいいます。マイクロマシニングやマイクロ射出成形のような従来の製造方法と比較し、マイクロ3Dプリンティングの主な利点は、高価な道具や時間のかかる機械加工の工程を必要とせずに、マイクロ単位の複雑な形状をした部品を、高い精度と解像度で製造できることです。さらに、マイクロ3Dプリンティングは、少量生産から中量生産までを得意としており、設計の繰り返しを迅速に行うことができるため、従来の製造方法よりも材料の無駄が少なくなります。
B9 Creations Elite Micro による造形品(サイズ比較のためにサイコロを使用)
マイクロ3Dプリンティングには、以下のメリット・デメリットがあります。
1. 設計の自由度
マイクロ3Dプリンティングでは、従来の製造方法では困難、または複雑な形状をした部品の製造や、複雑な設計が可能です。設計がより容易になったことで、非常に細かい精密部品の製造が可能になるだけでなく、製品開発プロセスでのカスタマイズも実現可能です。
2. 少量生産でのコスト効率
少量生産から中量生産までを得意としており、従来の製造方法と比較して、一般的に費用対効果が高いです。従来の製造方法では、セットアップコストが高くつくことが多く、少量から中量の生産には向いていません。
3. ラピッドプロトタイピング
マイクロ3Dプリンティングは、迅速に試作を何度でも行えます。さらに、新しい道具や長いセットアップ時間を必要とせず、設計の変更を簡単に実装できるため、開発から製造が終わるまでの時間が短縮され、製品開発がよりスピードアップします。
4. 材料の無駄を削減
従来の製造方法では、大きな部品から余分な材料を取り除く引き算的な工程が多く用いられてきました。その結果、余計に材料の無駄が大きくなります。一方でマイクロ3Dプリンティングでは、必要な部分にのみ材料を追加するため、無駄が最小限に抑えられ、材料の利用率が最適化されます。
5. 複雑な組み立て部品の一体化
マイクロ3Dプリンティングでは、組み立て部品を1つの統合部品として製造できます。これにより、組み立てが不要になり、部品点数が削減され、製品全体の信頼性が向上します。
6. オンデマンド製造と在庫管理
マイクロ3Dプリンティングでは、オンデマンド製造が可能です。つまり、必要に応じて部品を製造できるため、過剰在庫を抱える必要がなくなります。これは、コスト削減とより効率的な在庫管理につながります。
7. カスタマイズとオーダーメイド
マイクロ3Dプリンティングは、マイクロ単位でのカスタマイズをより現実的なものにし、特定の顧客の要件を満たすオーダーメイドの製品を可能にします。
8. 必要な場所で生産
社内で3Dプリントを行うことで、長距離輸送の必要性が減り、分散生産が可能になります。
9. リードタイムの短縮
金型が不要なマイクロ3Dプリンティングは、従来の製造方法に比べてリードタイムを大幅に短縮します。また、3Dプリンティングは複数の製造工程を1つの工程にまとめ、生産を合理化し、組み立ての必要性を減らします。このような利点は、時間に制約のあるプロジェクトや、要求が急速に変化する業界にとって特に有益です。
10. 生産個数を自由に調整
マイクロ3Dプリンティングは、需要の変動に合わせて生産量を簡単に調整できます。
1. 大型サイズ部品には向いていない
そもそもマイクロ単位の精密な部品を造形するために開発されているため、大きなサイズの造形には向いていません。
2. 材料に限りがある
B9 Creations の Elite Micro※1 は、市販材料に対応しているものの、使用できるメーカー純正材料は3つしかないため用途が限られます。
※2: 弊社取り扱いのマイクロ3Dプリンター。詳細は以下をご覧ください。
弊社では、マイクロ単位の超精密部品を造形できる3Dプリンター、B9 Creations Elite Micro を取り扱っています。詳しくは下記をご覧ください。
B9 Creations Elite Microは、高解像度(20 μm native pixel size XY、10-20 μm Z)、高精度、高い再現性を提供し、マイクロ射出成型部品を上回る超精密部品を造形することができます。38.4 x 21.6 x 127mmの最大造形サイズをもち、複雑な形状にも対応。また、メーカー純正材料以外にも、市販材料を使用することができます。さらに、キャリブレーションは必要なく、付帯設備として自動洗浄装置と後処理装置(硬化)がついてくるため、スムーズなワークフローを提供する非常に使いやすい3Dプリンターになっています。
造形サイズ:38.4 x 21.6 x 127mm
造形速度:1 - 7+ mm / hr
解像度:20 μm native pixel size XY、10-20 μm Z
材料:HD Slate、HD Clear、ABS/PC、市販材料
波長:385 nm
機械サイズ:267 x 420 x 593 mm
マイクロ3Dプリンティングは主に、研究や試作で使用されていますが、電気部品からウェアラブルセンサー、埋め込みセンサー、マイクロチップ部品、プリント基板に至るまで、最終部品用途での活躍も増えています。
遊園地
HD Clearによるマイクロ流体デバイス
本記事では、マイクロ3Dプリンティングの特徴とメリット、デメリットを解説いたしました。単に小さい部品を作れるだけでなく、複雑な形状を造形可能にし、材料の無駄を削減、またリードタイム短縮など、様々なメリットがあることがわかりました。
私たちは、B9 Creations Elite Micro の受託製造および販売をしております。さらにB9 Creations Elite Microについて詳しく知りたい・興味がある、という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
・メール経由:info@3dpc.co.jp
■設計・開発から製造、後加工、品質評価まで一貫したサービスを提供
私たちは、金属・樹脂合わせて10種類以上の3Dプリンターを取り扱っており、知見や経験が豊富な社員のもと、設計・開発から、製造、後加工、品質評価まで一貫したサービスを提供しています。また機器のご紹介も行っており、ご購入後は、1日から2日間のトレーニング、修理、メンテナンスのサポートを実施しております。
■工場見学開催中!最先端技術を搭載した海外製3Dプリンターが10種類以上
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]]>3Dプリンターには、フィラメントやペレットと呼ばれる材料が用いられます。
特に、近年注目を集めているペレット式についてはまだ情報も少なく、3Dプリンターの導入時にどちらの方式を選ぶべきか悩むケースも多いでしょう。
それぞれの特徴を理解することで、より自社の目的にマッチした3Dプリンターを導入することができます。
そこでこの記事では、それぞれの特徴や違いやメリット・デメリットについて解説します。ぜひ、3Dプリンターを検討する際の参考にしてください。
フィラメントやペレットとは、ともに3Dプリントに用いられる材料のことです。文章や画像をプリントする通常のプリンターにたとえると「インク」にあたります。
フィラメントとペレットのどちらを用いるかどうかは、使用する3Dプリンターによって異なります。ここでは、フィラメントとペレットの特徴について解説します。
フィラメントとは、熱溶解積層方式または材料押出方式(MEX方式・FDM方式)の3Dプリンターで広く用いられる材料です。
直径1.75mmまたは2.85mmの細長い糸状に加工してあることが一般的で、「熱可塑性樹脂」と呼ばれる合成樹脂でつくられています。
加熱すると柔らかくなり冷やすと固まるという特性を活かし、3Dプリンターの押し出しノズルに挿入して熱を加え柔らかくした後、押し出すことによって積層します。
現在普及している3Dプリンターには、フィラメントを使用するフィラメント方式が多く採用されています。
ペレットとは、フィラメントに加工する前の材料のことです。
3Dプリンターの中には、ペレットをそのまま使用できるペレット方式(FGF)を採用するタイプがあります。
ペレット方式の3Dプリンターでは、フィラメントからペレットへ成型し直す工程そのものを省けるため、粒状素材を直接造形することが可能です。
材料コストやSDGsの観点などから、ペレット方式の3Dプリンターは近年一層注目を集めています。
フィラメント方式とペレット方式には、それぞれ強みと弱みがあります。
自社に適した3Dプリンターを選ぶためには、それぞれのメリット・デメリットを比較検討することが大切です。
ここでは、フィラメント方式とペレット方式のメリット・デメリットから、それぞれの方式の違いを確認します。
フィラメント方式の3Dプリンターには、以下のメリット・デメリットがあります。
フィラメント方式のメリットは造形解像度に優れ、小規模な製造にも適している点が挙げられます。
ペレット方式と比較して製品の選択肢も多いため、自社の希望に合う3Dプリンターを見つけやすいというメリットもあります。
ペレットからフィラメントへの加工の手間が生じるぶん材料費がかさみ、造形スピードも遅くなってしまう点は、フィラメント方式のデメリットに挙げられます。
ペレット方式の3Dプリンターには、以下のメリット・デメリットがあります。
「フィラメントへの加工」という工程を必要としない点が、ペレット方式の最大の強みといえます。
フィラメント方式と比べて造形速度が速く、材料コストに至っては最大1/10程度まで削減することができます。
ペレットを成型しなおす必要がないことから、幅広いリサイクル素材に対応することも可能です。
廃プラスチックの大幅削減や排除に役立つ点も、SDGsに取り組む企業にとって大きなメリットやブランディングになるでしょう。
フィラメント方式と比べると造形解像度に課題が残ることは、ペレット方式のデメリットに挙げられます。
フィラメント方式と比較した場合、製品の選択肢が少なめです。
フィラメント方式とペレット方式のメリット・デメリットをふまえた両者の比較は、次のとおりです。
【フィラメント方式とペレット方式の比較表】
比較項目 |
フィラメント方式 |
ペレット方式 |
造形速度 |
遅い |
速い |
材料コスト |
高い |
安い |
造形解像度 |
高い |
低い |
製造規模 |
小規模から可能 |
小規模から可能 |
材料の選択肢 |
少ない |
多い |
環境保全・SDGs |
適していない |
適している |
製品の選択肢 |
多い |
少ない |
もちろん製品によって強みや弱みは異なりますが、一般的な違いとして比較の参考にしてください。
この記事では、3Dプリンターにおけるペレットとフィラメントの違い、メリットとデメリットを解説してきました。
知名度の高さから「3Dプリンターといえばフィラメント方式」と考えている方も多いかもしれませんが、ペレット方式の方が適しているケースもあります。
3Dプリンターを導入、また部品や製品を製造する場合、両者の特徴を知り、メリット・デメリットを踏まえて検討することが大切です。
DDDJapan.comでは、ペレットから直接3Dプリントできるペレット方式(FGF)3Dプリンター「WASPシリーズ」を取り扱っております。製造業や研究、材料開発をはじめ、アート、自動車、家具など幅広い分野でご活用いただけます。
ペレット方式3Dプリンターについて詳しく知りたい・興味がある、という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
また、運営会社の株式会社3D Printing Corporationでは、3Dプリント技術を用いて、設計から製造、後加工、品質評価まで一貫したサービスを提供しています。3Dプリントに関してご興味のある方は、是非一度お問い合わせください。
・メール経由:info@3dpc.co.jp
■工場見学開催中!最先端技術を搭載した海外製3Dプリンターが10種類以上
具体的なイメージが持てるように、実際に3Dプリンターや造形品を見て触ることができる工場見学を開催しております。また、樹脂であれば無料で造形を承っており、金属の場合は50%オフで造形を行っています。※お申し込み時にデータをいただき、工場見学の際に造形品をお渡しいたします。
ご興味のある方は是非お問い合わせください。
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金属3Dプリンターには、主に4つの代表的な造形方式があります。
今回は、金属3Dプリンターの中でも特に多くの企業から採用されているPBF方式と、DED方式の用途や、どういったメリット、デメリットがあるのか、解説します。
※DED方式には、使用する材料が粉末とワイヤーの2種類ありますが、この記事では弊社取り扱いのワイヤーDED方式金属3Dプリンター「Meltio」を中心に説明します。
PBF方式
PBF方式は、金属3Dプリンターの中でも企業から多く採用されている方式です。
ベースプレート上に金属粉末を敷き詰め、造形する部分に熱源のレーザーやビームを照射し溶融・凝固していくことで、部品や製品を造形します。
複雑な形状を高精度に造形できることから、航空宇宙などで主に使用されています。
DED方式
DED方式は、金属ワイヤーをレーザーで溶かして、ビルドプレートに部品を積層していく方式です。
造形だけでなく、既存部品の補修や、新たに機能を追加させるためのクラッディング(肉盛り加工)なども可能です。
弊社取り扱いのDED方式金属3Dプリンターのご案内:
PBF方式の活用例
複雑な形状やラティス構造を用いた造形を得意としているため、厳しい条件やこれまでの製法では製造できないような形状が求められる、航空宇宙産業にて多く使用されており、実際にジェットエンジンのノズルや、ロケットのエンジン部品が製造されています。
DED方式の活用例
ハウジング部品から、ガスタービン、金型まで様々な用途に対応。大型部品の造形や補修にも向いていることから、航空宇宙、造船、建築、エネルギー産業などで主に活用されています。
PBF方式のメリット
・小~中サイズの複雑な形状や微細な形状を高精度に造形
・ラティス構造※1を用いた造形が可能
・優れた表面仕上げを提供
・多くのメーカーが開発しているため、購入時に選択肢が多い
※1: 幾何学形状が規則的もしくは不規則的に並ぶことで造形物を構成する構造
DED方式のメリット
・造形時間が速い
・材料費が安い
・高密度(99.998%)な造形を実現
・既存部品や製品の補修、クラッディングが可能
・材料が金属ワイヤーなため、取り扱いが容易
・ニアネットシェイプ成形で納期短縮が可能
・材料をほぼ使用できるため、歩留まりが良い
・異種金属接合ができる
PBF方式のデメリット
・金属粉末による粉塵爆発などの危険性がある
・初期費用にお金がかかる
・造形時間が長い
・材料費が高い
・コンタミネーションの予防や洗浄が困難
DED方式のデメリット
・表面が粗い
・造形できる形状が限られる
上記をまとめると、PBF方式は複雑な形状を高精度で造形できる一方で「材料費が高い」「造形時間が長い」「材料の取り扱いに注意しないといけない」「高密度の造形が難しい」「メンテナンスが大変」といったデメリットがあります。
しかし、DED方式は、表面が粗いといった点や、造形できる形状に限りがあるといったデメリットを除けば、材料費を大幅におさえることができ、造形時間もはるかに速いためリードタイムの短縮が可能です。
例として、直径5cmのキューブを造形するのに、PBF方式金属3Dプリンターでは12時間かかりましたが、DED方式金属3Dプリンターでは、たったの1.5時間で造形ができました。
「速いと品質は落ちているんじゃないか?」と思う方もいるかもしれませんが、高密度(99.998%)での造形が可能なため、品質は落ちません。
その他にも、PBF方式と比較すると、DED方式は既存部品や製品の補修、クラッディングができたり、異種金属接合が可能であったりと、多くのメリットがあることがわかりました。
この記事では、PBF方式とDED方式の違いや活用例、メリット、デメリットをまとめてきました。
実際に、どんな金属3Dプリンターが必要で、どんなことに役立つのか、どんなふうに活用できるのか、わからないという方も多いでしょう。
わたしたち「3D Printing Corporation」は、日本市場におけるMeltio社の金属3Dプリンターの販売を行っているほか、同プリンターを使用した造形サービスも行っております。
また弊社工場見学にて、実機や造形品をご覧になることができます。お申し込み時にデータをお送りいただけますと、50%オフで見本品の造形を承っております。ご興味のある方は「工場見学案内ページ」からお気軽にご相談ください。
メール経由:info@3dpc.co.jp へ「Meltioに関する問い合わせ」等の旨をご記入の上、お問い合せください。
記事内でもご紹介した金属3Dプリンター「Meltio」は、弊社が運営しているオンラインストアで販売しております。
Meltio詳細情報:Meltio M450、Meltio Engine Robot
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「好きな場所で、好きな時に、作りたいモノを作れる未来へ」
私たちは、デジタルで既存の製造業のサプライチェーンをかえていくことを目標に、3Dプリントによる技術を活かし、金属・樹脂問わず、設計・開発から、製造、後加工、品質評価まで一貫したサービスを提供しています。また各々の人に適した機器のご紹介、導入、修理、メンテナンスのサポートといった専門的かつ包括的な業務を提供しています。私たちは、3Dプリント技術を活用した内外製品の高付加価値化や、納期の短縮、コスト削減の実現に貢献し、皆さまが必要なものをいつでもどこにいても製造しながら発展していける未来を目指しています。
金属3Dプリンターの技術は航空宇宙から医療、自動車産業に至るまで、多岐にわたる分野で革新的な変化をもたらしています。
この記事では、金属3Dプリンターの造形方法や使用される材料の種類と特性、それらがどのように産業界に影響を与えているのかについて詳しく解説します。
最先端の技術とその応用例を知りたい方だけでなく、金属3Dプリンターの導入を検討している方にとって必読の内容です。
近年あらゆる産業で3Dプリンティング技術の活用が進み、製造現場での金属3Dプリンターの利用も増加しています。
金属3Dプリンターは、3Dデータを基にレーザーや電子ビームなどのエネルギー源を用いて金属を一層ずつ積み重ねて積層造形する装置です。
CADソフトウェアによって作成された3次元モデルを装置に送信し、レーザーや電子ビームなどのエネルギー源を用いて積層造形していきます。
現在では航空宇宙、医療、自動車など多岐にわたる分野で利用されています。樹脂3Dプリンターと比較すると価格が高いため、個人用ではなく工業用途で使用されることが一般的です。
金属3Dプリンターをさらに詳しく知りたい方はこちら:
金属3Dプリンターとは?造形方式の種類とメリット、デメリットを解説
ここからは、金属3Dプリンターの造形方式の種類とそれぞれの特徴をまとめていきます。
パウダーベッド方式は、金属粉末を敷き詰め、レーザーまたは電子ビームで金属粉末を焼結または融解させて固める方法です。
最も高精度な成形が可能であり、複雑な形状の製造を実現します。
幅広い金属材料の使用が可能であり、製品の強度も非常に高いことが特徴です。ただし、時間とコストがかかる方法でもあります。
熱溶解積層方式は、金属材料を溶かして押し出し、一層ずつ積み上げて固める方法です。
他の方法に比べて低コストに抑えられること、中速での造形が可能となります。
精度や強度はパウダーベッド方式に比べ劣るため、プロトタイプ製造、小規模生産向けと言えます。
バインダージェット方式は、金属粉末に液体の結合材(バインダー)を吹きつけて固化させて成形する方法です。
大型部品の製造に適しており、複雑な形状の成形も可能です。高速な造形も可能ですが、強度が弱い造形方法になります。
デポジション方式は、レーザーや電子ビームで金属材料を溶融した後、ノズルから噴出し積み上げる方法です。
高い構造強度と耐久性が特徴であり、大型サイズの造形が可能です。特殊な金属合金を使用でき、高速な造形も期待できます。
最近注目されている金属3Dプリンターは、さまざまな材料で部品や製品を製造する能力を持っています。
単にプラスチック製のモデルだけでなく、特定の強度と特性を備えた金属合金製の部品も作ることができます。
以下が一般的に利用されている材料です。
ステンレス鋼 |
広範囲の化学・熱的性質を有し、耐食性と高い強度を持つ材料です。主に航空宇宙分野や機械部品などに使用されます。 |
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純チタン |
軽さと高い強度が特徴で、生体適合性も非常に高い材料です。航空機体や化学工業用機器などに使用されています。 |
チタン合金 |
高温環境で必要な機械部品の製造に適しています。航空宇宙分野や医療分野に多用されています。 |
ニッケル基合金 インコネル718 |
耐熱・耐食性を備え、航空宇宙、自動車、エネルギー産業など幅広い分野で使用される材料です。 |
ニッケル基合金 インコネル625 |
高温環境下でも強度が落ちない特性があり、航空宇宙分野のエンジン部品などに使用されています。 |
タングステン |
高密度と高い融点を有し、高温強度が求められる部品に使用されている金属です。 |
マグネシウム合金 |
超軽量メタルとも呼ばれるこの材料は、軽量で強度が強いため航空宇宙分野などで使用されます。 |
アルミ合金 |
箔やパイプ、 線材、 板材など形状を選ばず多岐に渡る用途をもつ材料。熱交換器やブレーキキャリパなどに使用されています。 |
コバルト基合金 |
医療・歯科器具、 ガソリンエンジンのエンジンコンポーネントなどに使用されます。 |
マルエージング鋼 |
航空・宇宙分野の構造材として開発された金属であり、強度、 耐温性、 耐酸性などの特性が非常に優れています。 |
弊社が取り扱っている金属3Dプリンター「Meltio M450」は、ワイヤーDED方式のプリンターです。
主に以下の材料の使用が可能となっています。
・ステンレス綱
・工具綱
・ニッケル基合金インコネル718
・ニッケル基合金インコネル625
・炭素鋼
・チタン合金
上記のように、既成材料を含め、ステンレスやチタンなどのさまざまな材料に対応しています。
また、現在も銅合金・アルミなどの新材料の開発も進めています。
ワイヤーDED方式金属3Dプリンター「Meltio M450」の商品ページはこちら
金属3Dプリンターでの材料選定は、製品の性能とコストを最適化する重要なプロセスです。
金属3Dプリンターは、さまざまな産業分野で使用されます。
従って目的の製品の用途に応じて、強度、耐熱性、耐食性などの特性を考慮して材料を選ぶことが必要です。
例えば、航空宇宙、医療機器、自動車などの分野においては強度や耐熱性が重視されます。
適切な材料を選ぶことで、製品の要件や性能を満たすことが可能です。
材料素材の特性によっては造形条件の調整を要する場合があるため、金属3Dプリンターのパラメータと材料特性の関係を理解することが必要です。
造形パラメータの最適化によって材料の特性を最大限に引き出すことが可能です。これにより、製品の性能を向上させることができます。
この理解は、より高品質な造形結果を得るために欠かせません。
高品質な材料の使用はコストがかかるため、品質とコストのバランスを考慮する必要があります。
目標はコストを抑えながらも、必要な品質を確保することです。適切な材料選定によって、コストパフォーマンスを最適化できます。
金属3Dプリンターを使用することで、さまざまな製品が製造できます。
以下にいくつかの例を挙げます。
・自動車部品や航空機部品
・ 医療用のインプラントや人工関節
・宝石やアクセサリー
・工業製品や機械部品
これらの製品は、金属3Dプリンターの高精度な造形技術によって作り出されます。
材料としては、ステンレス鋼、チタン、アルミニウムなどの金属を使用することが一般的です。これにより、耐久性や強度を備えた製品を製造できます。
金属3Dプリンターの技術の進歩により、製造業界は大きく変化しています。
短納期やカスタマイズ性が求められる現代の需要に応えるため、金属3Dプリンターはますます重要な存在となっていくでしょう。
金属の製造において、金属3Dプリンターと切削加工は異なる技術ですが、それぞれの特徴によって使用方法が区別されます。
金属3Dプリンターはデジタルファイルから直接物体を製造する技術で、複雑な形状や内部構造の部品、試作品の製造に適しています。
一方、切削加工は材料を削り取りながら物体を形成し、精度が高く大量生産や高精度の部品製造に向いています。
これらの技術を適切に使い分けることで、より効果的な製造プロセスを構築できるでしょう。
この記事では、金属3Dプリンターの造形方式と材料の種類、選定ポイントをまとめてきました。
記事を読んでも、機種や材料の種類が幅広くどれを選べば良いのかわからないという方も多いでしょう。
わたしたち「3D PrintingCorporation」は、日本市場におけるMeltio社の金属3Dプリンターの販売を行っているほか、同プリンターを使用した造形サービスも行っております。
弊社工場見学にて、実際に実機をご覧になることも可能ですので、ご興味のある方は工場見学案内ページからお気軽にご相談ください。
また見本品の造形を50%オフで造形しておりますので、お申し込み時にデータをお送りください。
ご予約お待ちしております。
記事内でもご紹介した金属3Dプリンター「Meltio」は、3DPrinting Corporationが運営しているオンラインストアで販売しております。
Meltio詳細情報:Meltio450、Meltio Engine
]]>今回は、スーパーエンジニアリングプラスチック(以下「スーパーエンプラ」)に分類され、幅広い特性をバランスよく備えるULTEM™を3Dプリントで活用するメリットをご紹介します。
ULTEMとは、スーパーエンプラに分類され、アルミの半分以下の軽さと高い強度重量比を持ちながら、以下のような様々な特性をバランスよく持つ材料です。
・耐熱性 (耐熱温度180~220℃)と、高温下での寸法安定性
・UL94 V-0規格認証の難燃性と、燃焼時の低煙性・低毒性
・耐UV性、耐候性
・アルコール、酸などへの対薬品性
・高い絶縁耐力
・人体と食品に対する衛生性
これらの特性を持つULTEMは、スーパーエンプラに分類されている他の材料と比べ、比較的安価です。また融点が低いため、製造しやすいのも特徴の一つです。ULTEMが使用されている例として、航空宇宙産業では航空機内のブラケット、自動車産業ではオイルポンプ、石油化学工業では作業工具、医療産業では手術器具、一般消費者向け製品としてはメガネフレームやギターピック等の製造材料として使用されています。
市場に出回るULTEMの種類は、コンポジットなどが混合される種類を含め、100種類以上ありますが、そのうち3Dプリント技術で使用されているのは、ULTEM 9085とULTEM 1010の2種類です。
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ULTEMはスーパーエンプラに分類される材料の中では比較的安価ですが、エンプラや汎用プラスチックに比べると高額で、約15〜20倍の価格となっています。高額な材料を扱うのにも関わらず、従来工法の場合、材料の無駄と余分な工程が発生していました。
機械加工の場合、ULTEMを切削して形状を再現するので、切削される部分が無駄になります。コストの浪費は勿論ですが、地球環境への負荷にもなります。
射出成形の場合、金型を製造する工程が必要なので、余分なコストが発生します。また、ULTEMはプラスチック全体の中では融点が高く、成形時に金型を約175℃まで熱する必要があります。金型が膨張と収縮の繰り返しで徐々に脆くなり、使用できなくなると、その都度金型を新しく製造する必要があります。
3Dプリントの場合、無駄になる材料がほぼ無く、金型を製造する工程が必要ないため、従来工法に比べ費用対効果が高いです。
ULTEMはアルミの半分の重量であることから、軽量化を目的として、アルミ部品の置き換えとして使用される機会が多いです。その場合、ULTEMで従来形状をそのまま造形しても軽量化は達成できるのですが、更なる軽量化を目指す方法があります。その方法のひとつが、ソリッドモデルを、下の写真の右側のモデルのようにインフィル構造に置き換えることです。
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出典:DfAMとは "
従来工法では製造が難しいインフィル構造のような複雑形状は、3Dプリントでは容易に造形ができます。そのため、インフィル構造を取り入れたモデルをULTEMで造形することで、完成した造形物は、ソリッドで造形した場合に比べ軽くなります。
航空会社は、昨今の環境・エネルギー問題の深刻化により、機体を製造する上での資源の無駄を削減することや、機体の総重量の軽量化が求められています。エアバス社は、3Dプリントを活用し、ULTEM部品を機体内部に実装しています。
当社は、A350の実装部品の材料に、ULTEM 9085を活用しています。100種類以上あるULTEMの中、9085を使用する理由は、9085が軽くて丈夫で、難燃性、燃焼時の低煙性・低毒性の認証を持つことは勿論ですが、最大の理由は、当材料が3Dプリントできることです。従来品を3DプリントしたULTEM品に置き換えることで、資源の無駄が最も少ない方法で機体の軽量化を達成できます。
"
弊社で取り扱いがあり、ULTEMが使用できる3Dプリンターをご紹介します。
Markforged社の最新商品、FX20は、ULTEMにカーボンファイバ一を入れ込んで造形できることが特徴です。カーボンファイバーを入れることで、造形物が更に軽量化され、機械的特性も増します。
・対応材料:ULTEM 9085、Onyx、ナイロン、PLAなど
・造形ベッドサイズ:525×400×400 mm
[参照元]
高機能プラスチックとは
プラスチックの特性
Sabic社ウェブサイト
Ready Printの高機能プラスチックフィラメントで造形工程がシンプルに
エアバス機内で実際に採用されているULTEM部品
PEIはどのくらい高いのか
なぜ3Dプリンターで造形するのがよいか
UL94認証に関して
ULTEMの特徴とアプリケーション
ULTEMでの造形時の工夫
DfAMを活用する
DfAMとは
近年、多種多様な製品の生産後の膨大な製品種のアフターサービスの維持において3Dプリンター技術(Additive Manufacturing; 積層造形技術;付加造形とも。以下、AM)は、小・中量生産、スペアパーツや補修機能において重要な役割を果たしています。また金属AMは、リードタイムの削減だけではなく、コストの削減や部品のデジタル化、サプライチェーン維持の補助を実現します。例えば、破損した金属部品を取り換える場合は、設計図や金型を起こすところから始める必要がありますが、スキャニング技術とAMの特徴を活用することで品質を維持したまま欠損部分のみを肉盛りと機械加工によって再生することができます。そのためには、金属AMにおける代表的な設計プロセスを理解しておくことが必要です。
近年、多種多様な製品の生産後のアフターサービスの維持においてAMは、小・中量生産、スペアパーツや補修機能において重要な役割を果たしています。AMは、リードタイムの削減だけではなく、コストの削減や部品のデジタル化、サプライチェーン維持の補助を実現します。例えば、インフラ産業の例を挙げると、古いプラント等で金属部品が破損し、部品製造元の会社が存在しておらず、部品供給に支障が発生した場合があるとします。この際は別の製造会社を探すなり、最悪、設計図や金型を起こすところから始める必要があり、大きな作業コストが発生します。但し、スキャニング技術とAMの特徴を活用することで品質を維持したまま欠損部分のみを肉盛りと機械加工によって再生し、コスト発生を回避することができます。
本稿では、スキャニング技術と金属AMにより、インフラ産業や他産業等で使用される金属部品(以下、本製品)が破損したケースを想定した場合の補修プロセス(設計、製造プロセス)について解説をしています。本稿には、あるインフラ装置で使用される部品が破損した場合を想定して、金属AMで補修できるようになるまでのプロセスについて説明します。その後、試験片と仮定の部品(部品A)を作成し、試験片においては試験機を活用した引張試験を実施して、単一材料と複数材料(肉盛り材料)の定量的な比較評価までを行います。タービンブレードを活用するインフラ産業や他産業等の実務について言及しません。
留意点:本稿は「インフラ産業や他産業等」で利用されている「タービンブレード」をAMとスキャニング技術を活用した場合を想定し、株式会社3D Printing Corporationが作成したレポートです.あくまで仮定ベースのプロセスの解説であり、実部品等の造形・耐久実験等は行っておりません。
Table 1 前提条件
金属部品が破損した状況を仮定して、金属3Dプリンターを修理や補修手段として活用した場合の製造プロセスに関して説明します。前提条件はTable1の通りです。
また、本稿ではDED(Direct Energy Deposition)方式の一つであるワイヤーDED方式を採用した金属3DプリンターであるMeltio450を活用します。金属3Dプリンターの主流は金属粉末材料ですが、本機は金属ワイヤーを活用します。金属ワイヤーの3Dプリンターには大まかにDED方式とWAAM方式があります。金属ワイヤー方式を活用する理由とDED方式である本機を活用する理由は以下の通りです。
WAAM方式でなくDED方式を活用する理由は、入熱量です。WAAM方式では破損した金属部品等の修理・補修を金属3Dプリンターで行う場合は、入熱量が多いため、熱変形を考慮する必要があります。なぜなら、大きな入熱量は部品の熱変形を起こし、パフォーマンスに悪影響を及ぼすからです。(※入熱量による修理・補修の対象となる金属部品の熱変形等の解析・分析については、また別のコラムで紹介します)
金属ワイヤーを活用する理由は、オペレーションが簡単で運用コストが低い、また安価だからです。金属粉末を活用した金属3Dプリンターは精度の高い製品をサポート材が少ないあるいは使用せずに造形できます。ただ、金属粉末を活用した金属3Dプリンターは付帯設備導入等のコストが大きく、粉末状の材料である性質上、粉塵爆発等の危険性が高く、オペレーションが複雑で運用が難しいという傾向があります。また、そのため一品当たりの造形コストが高くなります。また、造形やメンテナンスの維持に多大なケアが必要になります。
上記の理由から、金属部品のパフォーマンス向上のためにはワイヤーDED方式を採用したMeltio450が有効であると判断しました。
本稿のMeltio450は3軸の3Dプリンターなので、Z軸方向にしか成膜することができません。ゆえに、3軸の3Dプリンターを利用して肉盛りする場合、まずは破損品を地面から水平に切削し、造形部分をFig. 1の右側ように3Dプリンターの仕様で造形できるように本製品の破損部分を整える(≒切削して)必要があります。これをすることで、Z軸方向に成膜するための平らな土台が施された残存部分(以下、母材)が完成します。
Fig 2:左)破損部分の切削前 右)破損部分の切削後
Fig 3:部品Aを削っている様子
「3」にて破損部分と母材の間にある破損によって生じた凸凹を平らにしました。ですが、このままでは3Dプリンターで欠損部分の肉盛りをすることができません。3DプリンターはFig. 4のような手順を踏んでようやくプリントをすることができます。
3Dプリンターはデータを起点とします。今回の母材のように、既に存在する物体の上に3Dプリンターにプリント指示を出すためには、物質世界の物体の寸法に限りなく近く、正確なデジタルデータを作成する必要があります。これを「ネットシェイプ(Net Shape)[1]」といいます。そのような正確なデジタルデータを作成するには、一次的に3Dスキャン技術のように物質世界のものをデジタルに変換する技術を活用します。そのための手順がFig. 4です。
オペレーターが3Dスキャナーを活用し、物質世界にある物体の表面情報(点群データ)を収集して、荒い3D(メッシュ)データを作成します。
[1] Net Shape: 正味の、掛け値なしの最終形状
Fig 4:「3Dデータ」から「完成」までの手順
「4」で物質世界の情報をデジタルデータに変換しました。デジタルデータの正確性は、その3Dスキャナーの仕様と性能、測定を実施する環境に依存し、現在ではかなり完成度の高いデジタルデータを最初の測定で作成することができます。しかし、メッシュデータは3Dプリンターで使用するには精度が不足しています。そこで、メッシュデータをより高次元なデータ(以下、3DCADデータ等)に変換する必要があります。現状ではその不足をソフトウェアによる自動生成機能による補助や人間(エンジニア等)の手で補っています。
母材の3DCADデータが完成したので、修理・補修用データ(以下、肉盛りデータ)の作成を始めることができます。今回は「5」で作成した3DCADデータを基礎に、本製品欠損部分の再設計をします。ここで、再設計の際に念頭に置かなければならない前提が切削加工の工程です。
切削を前提に考えた場合、欠損部分と同じ体積のみを肉盛りしてしまっては切削後の完成品がネットシェイプより小さくなってしまいます。これを防ぐためには、破損部分に余肉(あまじし)を付与する必要があります(Fig. 8参照)。このように完成品に限りなく近い形状を「ニアネットシェイプ(Near-Net Shape)[2]」といいます。
[2] Near-Net Shape: 最終形状に近い形状
再設計データを活用して、金属3Dプリンターでの修理・補修を始めることが可能になります。母材の上にワイヤーを成膜していく方法は従来のミグ溶接等の溶接技術とほとんど同じですが、こと金属3Dプリンターでは工作機械である性質上「基準点」の定義が大事になってきます。基準点がずれると結果的に母材と再設計データにずれが発生し、正常に成膜することができなくなります。基準点は3軸金属3Dプリンターのほかにも、ロボットやポジショナーを活用した5軸・6軸の金属3Dプリンターも存在します。
基準点を合わせて、プリントが完了した試験片がFig. 10/Fig. 11/Fig. 12のようになります。母材の上に余肉が付与された欠損部分が肉盛りされたニアネットシェイプを再現することを想定した造形ができました。
本稿含め、金属3Dプリンターでの修理・補修だけでは、高精度の寸法公差を達成することは不可能です。必ず切削加工等の機械加工を工程に含める必要があります。
ニアネットシェイプから余肉部分を切削機械で寸法公差を達成した本製品(≒ネットシェイプ)に削り出していきます(Fig. 13)。本稿では切削加工は実施していません。
切削加工が終了した後にプレートから製品を取り外す必要がある場合は、EDM(加工放電)等を活用して切り離しを行います(Fig. 13を参照)。
Fig. 10/Fig. 11で作成した造形物をFig. 13であるようにEDMでカットし、「SKD11(試験片A群)」と「SKD11+Nickel718(試験片B群)」を3個ずつ作成しました(Fig. 14/Fig. 15/Fig. 16)。本稿の試験片は熱処理をおこなっておりません。Fig. 15を見てもわかるように、肉盛りが開始する部分の接合断面を目視で確認する限りは、外観はきれいに融合されていることがわかります。
作成した試験片A群・B群を社内の精密万能試験機を活用して引張試験を実施しました(Fig. 17)。結果はFig. 18の通りです。B群がA群に比べてわずかに強度が低く、接合部で破断したことにより変位量がA群の半分になりました。強度としては両郡とも同等の強度であるといってもいい結果が出たと考えています。造形したNickel718の試験片を作成した後に引張試験を実施することも検討しています。
本稿では、スキャニング技術と金属AMにより、インフラ産業や他産業等で使用される金属部品が破損したケースを想定した場合の補修プロセス(設計、製造プロセス)について解説をしてきました。また、作成した試験片(熱処理未実施)の引張試験を実施して、母材と肉盛りされた母材の引張強度を導き出すことができました。
解説とともに、実際に試験片を通して欠損部分のみを肉盛りと機械加工によって再生するプロセスを実演しました。試験片の引張試験では、一材料と複数材料(肉盛り材料)の定量的な比較評価によって、一材料と複数材料とで同等の引張強度の結果を得ることができました。
今後は熱処理をかけた試験片を作成し、引張試験の実施や仮定で造形した部品の切削加工等の実施をする予定です。
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Meltio詳細情報:こちら
わたしたち3D Printing Corporationは、日本市場におけるMeltio社の金属3Dプリンターの販売を行っています。
また同プリンターを使用し造形サービスも行っております。
弊社工場見学にて、実際に実機をご覧になることも可能ですので、ご興味のある方はお気軽にご相談ください。
メール経由:info@3dpc.co.jp へ「Meltioに関する問い合わせ」等の旨をご記入の上、お問い合せください。
]]>近年、複雑な形状や独自の製品を開発するために、3Dプリンターの購入を検討しているという方や企業が増加しています。
しかし、3Dプリンターの技術は変化を続けており、専門的な知識も必要なため選び方がわからないという方も多いと思います。
この記事では、3Dプリンターの基礎知識から造形に使われる素材や造形の流れなど、購入する前に知っておくべき情報をまとめていきます。
また、3Dプリンターを選ぶ際に失敗しないためのポイントも解説していきますので、検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
まずは、3Dプリンターについて、最低限知っておきたい基礎知識をまとめていきます。
3Dプリンターは、デジタルデータから立体的なものを造形する技術であり、樹脂や金属などの素材を利用するのが一般的です。
この技術は、下から上へ層を重ね、つくりたいものを作ることができます。
一般的なプリンターとは異なり、3Dプリンターはデザインを紙に印刷するのではなく、物理的に複雑な部品や製品を造形できることが特徴です。
前述したように、3Dプリンターは、樹脂や金属などを使った立体的な製品や部品を作ることができる装置です。
これまでの加工方法では実現が難しかった複雑な部品を作れることから、試作品の作製や小規模な生産、特殊なモデルの作製など、さまざまな用途で利用されるようになりました。
また、家庭用、商業用、工業用などさまざまな目的と業界でも活用されています。
続いて、業務用と家庭用3Dプリンターの違いにはどのようなものがあるのかを確認していきましょう。
業務用の3Dプリンターは、大規模な製造業や工業用で使われることが多いため、サイズが大きく高品質な製品を短時間で生産できる装置が一般的です。
耐久性が高く信頼性も高いなど、多くのメリットがあります。
一方、家庭用3Dプリンターは、小型の装置で価格も安いことが一般的です。
小規模な造形物や家庭用に適しているため、個人でも簡単に使用できることが特徴です。
また、家庭で手軽に3Dプリントを使えることで、趣味や仕事に活かすことができるでしょう。
ただ、大きいサイズや複雑な形状が難しい場合があるほか、利用できない素材もあるため事前に確認しておく必要があります。
続いて、混同しやすい樹脂3Dプリンターと金属3Dプリンターの違いを解説していきます。
樹脂3Dプリンターと金属3Dプリンターの最も大きな違いは、利用する素材と造形方式が異なることです。
樹脂3Dプリンターは、プラスチックや樹脂などの柔らかい材料を造形できます。
低コストで手軽に製品を作りやすいため、家庭や学校などの個人や小規模な利用にも適しています。
一方で、金属3Dプリンターは、銅やアルミニウム、ステンレスなどの金属を使って造形物を作製できます。
そのため、金属3Dプリンターは高精度で、強度の高い造形が可能です。
金属を使って造形する過程では、金属を高温で溶かしていく手法が多いため、業務用として本格的な装置が使われるのが一般的です。
以上、3Dプリンターと金属3Dプリンターの違いを解説しました。用途や予算などに合った3Dプリンターを選ぶことが大切です。
3Dプリンターは、家庭から工業用に至るまで、多くの用途で使用されていることがわかりました。
ここからは3Dプリンターで具体的にどのようなことができるのかを解説していきます。
3Dプリンターは、新しいデザインや製品の開発時に、試作品の製作が可能です。
新商品の開発やデザインにおいて、実際の製品と同じような小さなモデルを作ることで、デザインや形状などを確認できます。
試作品をもとにしたアイデア出しや営業を行うことで、効率的に商品開発を進められるでしょう。
3Dプリンターを使用することで、小ロット生産や部品の修理などに利用する部品を製作することが可能です。
これにより、大量生産する必要のない少数の部品を簡単に製作できます。
3Dプリンターと3Dスキャナーを組み合わせることで、実際に存在する物をスキャンしてデジタルデータに変換し、データをもとに再現することが可能です。これにより、大型製品や古い玩具などのレプリカを製作できます。
3Dプリンターは、同じ素材や材料で作られているわけではないため、作りたい製品の特徴に合わせて素材を選択する必要があります。
以下では、樹脂と金属に分けて主に使われる素材と特徴を解説していきます。
樹脂3Dプリンターで使われる主な素材と特徴は以下の通りです。
① ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene):
・合成樹脂
・強度が高い
・耐熱性、柔軟性がある
② PLA樹脂(Polylactic Acid):
・植物由来の合成樹脂
・環境に優しい
・簡単な加工、安定した造形ができる
③ PEEK(Polyether Ether Ketone):
・耐熱性と耐久性が高い
・高温に強い
④ PET(PolyethyleneTerephthalate):
・熱可塑性樹脂
・透明性が高い
・耐衝撃性と耐久性が高い
⑤ ナイロン:
・対摩擦性が高い
・耐衝撃性が高い
⑥ 石膏:
・造形後の塗装がしやすい
・耐衝撃性は低い
上記で紹介した以外にも、混合材などの素材もあります。
使用する3Dプリンターによっても使える素材や相性が異なるため、目的に合った素材を選びましょう。
続いて、金属3Dプリンターで使われる主な素材と特徴は以下の通りです。
① ステンレス鋼:
・耐食性、抗菌性が高い
② チタン:
・強度が高く軽量
・錆びにくい
③ 銅:
・優れた導電性
・柔軟性が高い
④ アルミニウム:
・安価
・軽量
・錆びにくい
⑤ インコネル:
・ステンレスに近い
・耐摩耗性と耐熱性が高い合金
上記のように、金属3Dプリンターで使える素材・材料には多くの種類があり、特徴によって造形や品質が変化します。
そのため、使用する金属3Dプリンターや造形物によって適した素材を選択することが大切です。
続いて、3Dプリンターで使われる造形方式の一部を以下でご紹介します。
① 熱溶解積層造形(FFF):樹脂
② 光造形(SLA):樹脂
③ 粉末焼結積層造形(SLS):樹脂
④ デポジション方式(指向性エネルギー堆積法)(DED):金属
⑤ 原子拡散積層造形(ADAM):金属
⑥ パウダーベッド方式(PBF):金属
上記のように、造形方式の種類によって対応している素材が異なります。
樹脂と金属のどちらで作りたいのかを決めた上で、特徴に合う造形方式を選ぶことをおすすめします。
3Dプリンターで造形する一般的な流れを解説していきます。
流れは使用する機種や素材、造形によって異なります。
3Dプリンターで造形するためには、まず3Dデータを作製する準備が必要です。
3Dプリントする物体をデザインするために、CADや3Dモデリングソフトを使用してデジタルのモデルを作製します。
作製したい造形の形状やサイズ、色などの各種パラメーターを設定できます。
作製した3Dデータを3Dプリンターで使用できる形式(STL形式など)に出力します。
出力後には、3Dプリントの予想結果を確認しながら3Dプリントのサイズや細部のクオリティなどをチェックし、必要に応じて修正を加えていきます。
3Dプリンターに指示を送り、準備が整ったら3Dプリントの開始です。
このステップでは、3Dプリンターに3Dデータを送信して造形の開始を指示します。
3Dプリンターは、3Dデータにもとづいて、レイヤーごとに積層させながら造形を進めます。
3Dプリント完了後は、必要に応じて作製物に対して研磨・溶着・塗装などの仕上げ処理を行います。
3Dプリントにかかる時間は、数時間で完成するものから、数日から数週間かかるものもあるなど、一定の時間では測定できません。
そのため、使用するプリンターの種類や素材、サイズなどさまざまな要因によってどの程度の時間が必要なのかを確認しておくことが必要です。
3Dプリンターを導入する場合、どのような視点で選べば良いかわからないという方もいるでしょう。
ここでは、主に業務用で3Dプリンター導入を検討している方に向けて、失敗しないためのポイントをまとめていきます。
まずは、どのような目的で3Dプリンターを使用するのかを明確にしておきましょう。
企業が業務用3Dプリンターを利用する場合は、試作品を制作したい場合や、本格的な製造を目指しているなどさまざまな目的があります。
導入した後に思っていた造形物ができなかったという失敗を防ぐためにも、何をどのように作りたいのかを、素材やサイズまで明確にしておきましょう。
弊社では受託造形を行っておりますので、ご不明な点やご相談等ございましたらお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ:info@3dpc.co.jp
3Dプリンターの技術的な仕様は、出力解像度、使用できる材料、操作性などによって異なります。
目的に合った機能がある3Dプリンターを見つけるためには、機能と仕様をよく調べることが大切です。
3Dプリンターの価格は、サイズや機能などによって大きく異なります。
作りたい製品の種類と予算に合った3Dプリンターを見つける必要があります。
一般的に、家庭用3Dプリンターよりも業務用3Dプリンターは高額です。
また、樹脂よりも金属素材に対応した3Dプリンターの方が高額となります。
予算を超えずにニーズに合った装置を探すためには前述したように目的と機能を確認する必要があります。
価格だけで安価な3Dプリンターを購入してしまうと、品質が劣る場合もあるため注意が必要です。
弊社では、お客様の課題に適した3Dプリンターのご紹介もしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ:info@3dpc.co.jp
3Dプリンターの将来性は明るいと考えられており、今後、多様な要因により需要が増加する可能性があります。
特に製造業においては、生産ラインをよりスムーズにすることや、カスタマイズされた部品や製品の生産に対応するため、3Dプリンターの利用が増えていくでしょう。
医療分野においても、人工組織や関節の製造、手術時のアシスタントツールの生産に対応するため、3Dプリンターの需要が高まると考えられます。
また、個人向けの利用においても、3Dプリンターを使ったDIY商品やグッズなどを作りたいというニーズが高まり、3Dプリンターの需要が増える可能性があります。
この記事では、3Dプリンターの導入を検討中の方に向けて、購入前に知っておくべきことを詳しく解説しました。
3Dプリンターの購入にあたっては、造形方式や機能、使える素材などを事前に確認することが大切です。
目的に合った適切な3Dプリンターを選ぶことで、望み通りの製品を作ることができるでしょう。
もし、作りたい製品や目的に合う3Dプリンターがどれかわからないという方は、お気軽に弊社へお問い合わせください。
弊社では、金属・樹脂両方の3Dプリンターの販売を行っています。利用を検討の方は、ご相談ください。
お問い合わせ:info@3dpc.co.jp
「AM技術」とは、Additive Manufacturing(アディティブ・マニュファクチュアリング/付加製造)の略称で、3Dプリントで製品を成型する技術のことです。3Dプリンターはまず、三次元で構成されたデータを元に原材料を重ねていきます。その後、形成された層をレーザーで焼き固めることで製品が出来上がるのです。そのため、この製法は「積層造形法」とも呼ばれています。3Dプリントで使われる材料は、主にプラスチック樹脂や金属です。プラスチック樹脂は小規模な機械でも成形できるため、個人用の3Dプリンターで多く取り扱われます。もう一方の金属の加工は高熱で処理するなど手間がかかる上に、大きな電気容量や換気なども必要なため、大規模な施設が求められます。そのほかにも、セラミックやエラストマー、複数の材料を組み合わせたコンポジット素材をつかった3Dプリントも存在します。
AM技術は、従来の加工技術とは明確な違いがあります。プラスチックや金属の加工には、今まで「FM技術(Formative Manufacturing/射出成型)」や「SM技術(Subtractive Manufacturing/切削加工)」といったものが使われてきました。
FM技術とは、熱で融かした原材料を「型」に流し込み、冷やして硬化させた製品を型から取り出して成型する加工技術です。一度作った型は繰り返し利用できるため、大量生産に向いている技術ですが、形状的な制約があるという欠点があります。
もう1つのSM技術とは、芸術家の彫刻のように原材料の塊を機械で削り取っていくことで製品を成型する加工技術です。FM技術と比べて自由度の高い成型が可能となりますが、原材料のロスが発生するため高コストになりやすいという欠点があります。また大量生産にも向いていませんので、基本的にはFM技術で成型した製品を仕上げる時など、他の技術と組み合わせて利用されます。
一方のAM技術は、3Dプリンターを用いてゼロから原材料を積み上げて成型していく方式です。従来の加工技術と比較すると成型の自由度が高く、3Dプリンターと原材料以外に必要なものはありません。また、製造する品物を変える時も機械や型の作り変えは不要で、入力データだけ変更すれば対応できます。つまりAM技術は多品種を少量生産するのに適している技術であり、実際に医療分野や航空分野で広く使われています。
こちらでは、AM技術で実現可能なことについて5つをピックアップしました。多品種の少量生産に向いているAM技術は、試作をはじめ型や模型、フィギュアなどの製作、そして従来製品の高性能化を実現します。
1つ目は、モックアップの試作です。モックアップとは、製品の開発段階において実物そっくりに似せて作られる模型を指し、デザイン確認や手にとった時の感覚を検証する際に利用される、とても重要なものです。今までのモックアップは金属製品でもプラスチックや粘土などで作られることが多く、モックアップ職人と呼ばれるスタッフが何日もかけて製作していました。しかしAM技術によって、実物に近い質感のモックアップを手軽に作れるようになったのです。製作においても3Dプリンターが自動で成型するため、人件費もカットできます。また、かつては「3Dプリントは大型のモックアップ製作には適さない」と言われていましたが、現在は技術革新が進みより大きな製品も成型できるようになっています。
2つ目は、製品の「型」を制作することです。前述のFM技術を用いてプラスチックを大量生産する際には、製品の形に沿って金型を用意しなければなりません。しかし、この金型を作るには100万円単位のコストが必要で、大量の部品を作って販売しないと費用をペイできず、その製作にも非常に時間がかかります。しかしAM技術を用いれば、低コストかつ高スピードでさまざまな金型を製作できるのです。3Dプリンターでの製作コストは高くても数万円で済むため、販売量が少ない部品の小ロット生産でも十分に費用を回収できます。
3つ目は、従来製品の高性能化です。今までの加工技術で複雑な構造の部品を作るには、シンプルな面で構成されるパーツをいくつも製作してつなぎ合わせなければならず、工数の増大に加えて部品の重量も増加していました。3Dプリントであれば、製品の内部を加工することなく蜂の巣のようなハニカム構造の成型もできるため、強度を落とすことなく軽量化を実現できます。また、小腸の柔突起のような複雑な成型を施して部品の表面積を増やし熱交換効率を上げるなど、パーツの高性能化も簡単に実現できるようになったのです。
4つ目は、建築模型の製作です。建築模型は通常、スチレンペーパーという発泡スチロールボードに立体図を貼り付けて切り取り、模型の内部から順番に組み立てていきます。完成した建築模型は施主に建物をイメージしてもらうのに役立ちますが、製作は想像以上に手間がかかっており、製作期間も2〜3日と、従来の方法では人手と時間が割かれていました。現在では3Dプリンターを用いることで、自動で建築模型が製作できるため時間や人手をかけずに済むようになりました。また、実際の建築で使われるデータを転用した模型製作も可能で、さらに時間やコストを削減できる上に模型の精度も高まります。
5つ目は、フィギュアやオーナメントの製作です。近年では3Dプリンターの造形精度が大きく向上しており、人の手によって精密につくられるフィギュア分野でも活用が見られるようになりました。また、インターネットでは3Dフィギュアのデータが配布されており、3Dプリンターがあれば誰でも簡単にフィギュアを作れるようにもなっています。これを利用して製作の外注を受ける企業も増えており、結婚式やイベントで配布する記念品としてオリジナルのフィギュアなどが3Dプリンターで製作されています。
最後に、実際にAM技術を活用している事例について、見ていきましょう。こちらでは、AM技術で航空機エンジンの部品を生産するGE社と、3Dプリント技術を活かした受託製造を行っている弊社についてご案内いたします。
アメリカのGE社はAM技術をいち早く採り入れており、この分野では世界のトップランナーとして有名です。早くから航空機エンジンの設計から試作、量産までの一連の開発にAM技術を応用。現在では燃料ノズルやタービンブレードなど、エンジンの35%の部品をAM技術で製作しています。具体的には、エンジンパーツの点数を従来製品の855点から僅か12点にまで集約した上に、生産スピードや軽量化、耐久性、そして燃費など、全てを向上することに成功しました。量産品ではさらに、材料ロスを最大で9割削減し、生産した部品も3割ほどのプライスダウンを実現しています。
弊社では、AM技術を活用した設計やエンジニアリングサービス、受託製造、そして関連機器を販売しています。わたしたちが導入している3Dプリンターは各種プラスチックや金属に対応しており、わずか13日間で製品の設計から試作品の製作までを完結可能です。また工場は国内にあるため、国際情勢に左右されず安定した部品供給を実現しています。弊社ではさらに3Dプリントだけに留まらず、お客様にとってどのように活用したら最適なのか、そして実際の製造プロセスのシミュレーションや使用する原材料のセレクトなど、AM技術に関わるさまざまな領域をサポート。AM技術を活用したいお客様にとって弊社は、ワンストップでサービスを受けられるというメリットがあります。
今回は、新しいAM技術と従来の加工技術との違いや、活用によって実現できることについて解説しました。AM技術とは、3Dプリンターを用いて原材料を積み重ねることで、ゼロから製品を作る技術です。従来の加工技術とは異なり、プラスチックや金属の複雑な成型を3Dプリンターと原材料、そしてデータだけで実現します。モックアップや型の製作や、従来製品の高性能化など、多品種の少量生産に向く技術です。3DPCでは、AM技術を使って製品を製作したい企業さまを、高い技術力で全面的にバックアップしています。検討の際は、お気軽にご相談くださいませ。
]]>近年、エンジンを中心とした自動車生産量が減少する中、AMは試作、小・中量生産、補修機能において重要な役割を果たしています。AMの使用は、リードタイムの削減だけでなく、性能の向上を実現します。例えば、設計の柔軟性において、より優れた熱適合性を見つけ出すことで、耐疲労性の向上や品質の安定を図ることができます。
本稿では、設計により自動車部品に活用されるダイキャスト金型の冷却性能向上と実製作に金属AMを活用した際の設計、製造プロセスについて解説をしています。具体的には、ある自動車部品のダイキャスト金型を想定して、直線型チャネルと形状適応型チャネルの2種類のチャネルを施した金型データを設計します。その後、CAEソフトウェアで2種類の金型の冷却性能を数値解析した後、比較評価までを行い、形状適応チャネルを施した金型のAM製作を前提とした設計プロセスと活用価値についての解説をしています。自動車業界の実務について言及しません。
※留意点:本稿は「自動車産業」で利用されている「ダイキャスト」製法をAMとCAE(Computer Aided Engineering)を活用した場合を想定し、株式会社3D Printing Corporationが作成したレポートです。あくまで、仮定ベースのアプリケーションを想定試験であり、実際にダイキャストでは実験を行っておりません。
前提として鋳造工程における金型の冷却性能は、生産品の品質、生産性、金型寿命に大きな影響を与えます。したがって、最適な冷却性能を有した金型の設計および製造が肝要になります。主にダイキャスト用の金型にも同じことが言えます。
金型の冷却チャネルはStraightDrilled Cooling Channel(直線型冷却チャネル)が主流です。StraightDrilled Coolingとは、切削技術を用いて金型に定規で引いたような直線状のチャネルをキャビティの周りに通しているものをいいます。単純な形状の切削加工であるために、金型の生産者にとって加工が容易であり、円滑に冷却を行うことができます。しかし、Straight Drilled Cooling金型はキャビティ形状によって冷却性能が制限されるため、不均一な冷却になる可能性があります。そこで、キャビティの形状に関係なく均一な冷却性能を有するチャネルの設計および開発が必要になってきます。
これらの点を解決するためにConformal[1]Cooling Channel(形状適応型冷却チャネル)の研究が盛んに進んでいます。キャビティの形状に沿って冷却チャネルを設計するConformal CoolingはStraight Drilled Coolingとは異なり、キャビティの形状に沿って等間隔で冷却チャネルを設計することができ、キャビティ全体を均一に冷却することができます。しかし、Conformal Coolingが適応された金型内部は形状が複雑になるため、一般的な機械切削加工(以下、CNC)による製作が不可能で実用化できず、ほとんどは設計とコンピュータシミュレーション分析にとどまっています。
そこで製作の困難を克服するために「引き算」の切削加工法ではなく、製作する形状の制約が少ないうえに、設計自由度の高い「足し算」のAM技術が着目されています。
[1] Conformalとは「形状適応」という意味合いがあります。
2で説明した内容を前提に、それぞれStraight Drilled CoolingとConformal Coolingの金型データを作成します。まずは自動車部品のダイキャスト金型(凹凸)のデザインを作成します。次にTable 1の条件でそれぞれStraight Drilled CoolingとConformal Coolingのチャネルを施したデザインを二つ作成します。これでFig1のようなデータができます。Conformal Cooling金型は一般的なAM方式であるPowder Bed Fusion(粉末床溶融結合法。以下、PBF)方式の金属3Dプリンター(以下、金属3DP)を活用した製作を前提にしています。AMは製作する形状の制約が少ないため、切削加工を想定した直線型チャネル設計にこだわる必要がなく、高い設計自由度の形状(この場合はチャネル)を製作前提で設計することが可能になります。
また、ConformalCooling金型のチャネルデザインはFig 2のように真円ではなくティアドロップ型に変更しています。デザインのチャネル断面が真円だと積層が上部に差し掛かるにつれて非常に急なオーバーハングとブリッジを形成して断面が重力の方向に潰れていきます。こうなると製作が失敗する原因にもなりますので、フィージビリティ[2]と造形成功率を上昇させるためにはAMに適したティアドロップ型が最適解になるわけです。このようにAMに適した(再)設計をDfAM(Design for Additive Manufacturing)と言います。
[2] Feasibilityとは実現可能性の意味合いがあります。
CAEがAMにおいて便利なツールとなる理由に「1. AMプロセスの最適化」と「2. ラピッドプロトタイピング([ラピッド]=迅速な、[プロトタイピング]=試作モデルの開発)」が挙げられます。
Conformal Cooling金型を製作するPBF方式金属3DPにはデメリットがあります。その一つは高いランニングコストです。具体的には金属粉末材、大量の不活性ガス、大規模な付帯設備、粉塵被曝・爆発の可能性を加味したPPEの装備や取り扱いが必要等です。これらの要素が1回毎の造形コストを圧迫します。CAEを活用すれば、造形するモデルの解析と評価のイタレーション[3]をデジタル上で繰り返すことができ、高コストな造形の必要回数を最小限に抑えることができます。結果として、1を達成でき、PBFの経済的な活用が可能になります。これは設計のデジタル化に伴い、フロント・ローディングによる作業負荷の軽減を達成することになります(作業荷量:企画>製品設計>工程設計>製造)。
[3] IIterationとは一連の工程を短期間で繰り返す開発サイクルのこと。
また、企業は製品開発において、試作品の製造・評価段階に莫大な時間をかけています。CAEを活用することで、試作品の①企画、②設計、③製造、④解析、⑤評価、⑥実地検証、⑦再設計、⑧生産の大部分をシミュレーションソフトウェア(数値)上の仮説設定で完結させ、アジャイル開発により製品のTime-to-Marketの時間短縮を実現することが可能になります。例えば、④・⑥以外はCAE上で完結することが可能です。CAEを活用することで企業は製品開発において大幅な時間短縮と、節約された時間を活用してより多くの試作品候補のラピッドプロトタイピングによるイタレーションを繰り返すことが可能になります。
CAEソフトウェア(Ansys Fluent[4])を活用して、設計した金型データにアルミニウムを圧入した時のキャビティ表面の平均温度値の推移をデジタル上で解析することができます。今回の結果はFig 5 - 8のように視覚的に見ることができます。
[4] Ansys FluentはAnsys社の登録商標です。
シミュレーションで得られた結果を、Table 2にまとめています。Conformal Cooling金型は、Straight Drilled Coolingと比較して冷却性能が3%ほど上昇し、平均冷却温度が向上する解析結果が得られました。また、Fig 6とFig 8のコンター図で確認できるように、Conformal Coolingを活用した金型がStraight DrilledCoolingを活用した金型に比べて均一に内部にかけて冷却されていくことも判明しました。
AMではどの方式でもデータが起点になります。今回作成した金型データを製作する際はまずスライスを行います。スライスとは、データを必要に応じてz軸向きに幾層にも分割することです。このスライスデータは金属プリンター付属のソフトウェアで作成できることがほとんどです。スライスデータを入力後、準備ができたらプリントを実行できます。造形する形状によって、最適なパラメータを設定・開発する必要があり、限りなく完成品に近い形を造形します(これをニアネットシェイプといいます)。すべての層を成膜できた時点で造形は完了です。
ここで完成したニアネットシェイプの造形品を金型として活用できるようにするには、CNCとのハイブリッド加工によって寸法公差を整えることが必須になります。無事切削加工が終われば製作品の完成です。
本稿では、設計によるStraight Drilled CoolingとConformal Coolingの2つの金型データの冷却性能をCAEシミュレーションで比較評価して、定量的に得られることを解説しました。また、その金型データを金属3Dプリンターで製作する際のプロセスについて解説しました。
本稿では金型の冷却効率向上をAMとCAEを交互に活用することで、AM製作前提の高い設計自由度でConformal Coolingのような従来の切削加工法では製作できなかった複雑な形状を応用し、複数のデザイン候補をデジタル上で同時に数値解析と比較評価(ラピッドプロトタイピング)することによって最適なデザインを開発することによって実施することができます。
今後は、実際に設計したConformal Cooling金型データを金属プリンターでプリントして実製作する予定です。また、今回は切削間加工までの製造プロセスについて説明をしましたが、切削加工の他にも残留応力除去のための処理が必要なケースもあります。その際はHIP処理などの工程追加等を慎重に検討する必要があります。
【引用文献】
経済産業省製造産業局、 (2022年9月8日)。
第8回 産業構造審議会 製造産業分科会。
参照日: 2022年12月
参照先: 経済産業省 Ministry of Economy, Trade and Industry: https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/pdf/008_02_00.pdf
]]>近年、金属3Dプリンターは、金属で複雑な形を再現できることから、幅広い業界や製品の製造・修理に活用が進められている装置です。
しかし、具体的にどのような種類があり、メリットとデメリットは何か理解できていないという方もいらっしゃるでしょう。
そこで本記事では、「金属3Dプリンターとは何か?」という基礎知識から、造形方式の種類と特徴、メリット、デメリットまで幅広くご紹介します。
また、事例やおすすめの金属3Dプリンターも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
「金属3Dプリンター」とは、金属を使って立体的な製品を造形できる装置です。
プリンターという言葉から、紙への印刷をイメージする方もいるでしょう。
しかし、金属3Dプリンターは印刷ではなく、設計した3Dデータを装置に読み込ませた上で、金属をデータ通りに造形していくことが特徴です。
まるでプリンターが印刷するように立体的な金属の製品を作り出せる特徴を持っていることから、さまざまな業界で試作品や一点ものの製品を作り出すことに用いられています。
これまでの金属加工では、鍛造や鋳造、切削など多種多様な技術がありましたが、金属3Dプリンターは、より細かな造形を金属で表現できることから近年注目されている技術です。
また、金属ではなく樹脂を使って造形を行う「樹脂3Dプリンター」という装置もあります。
金属3Dプリンターは、主にレーザーや電子ビームで金属を造形していきますが、それぞれの造形方式によっても特徴が異なります。
以下では、金属3Dプリンターの造形によく使われている方式をそれぞれの項目に分けて解説していきます。
パウダーベッド方式(PBF:Powder Bed Fusion)は、金属の粉末にレーザー、または電子ビームを照射して造形していく方法です。
金属3Dプリンターの多くで活用されている造形方法となっています。
金属粉末を熱で溶かしながら造形していくため、完成までに一定の時間が必要ですが、多種多様な金属や造形に対応できることが特徴です。
このパウダーベッド方式は、熱源方式によっても特徴が異なり、主にレーザーと電子ビームの2種類に分けられます。以下ではそれぞれの特徴を詳しくまとめていきます。
レーザー方式は、光を集めたレーザービームを金属粉末に照射して熱し、固めていく方式です。
一層が固まったあとは次の層に金属の粉を追加し、レーザーを照射するという流れを繰り返すことで形を作っていきます。
主な特徴は、レーザーの出力が電子ビームよりも低く、完成までに時間がかかることです。
最も普及している方式であり、金属3Dプリンターといえばレーザー方式をイメージする方も多いでしょう。
また、金属が酸化するリスクがあるため、造形エリア内には常にAr(アルゴン)などの不活性化ガスを充満させて酸素濃度を下げる必要があります。
電子ビーム方式は、高出力電子ビームによって金属の粉末を溶かして固める方式です。
ファイバーレーザーなどを利用しているレーザー方式と比較して、より高速で強力なレーザーを利用しています。
主な特徴は、高出力なので完成までの時間が速いことです。
一方で、完成した金属の表面が粗くなりやすい点や、造形エリアを真空状態にすることが求められるなどの特徴もあります。
デポジション方式(DED:Direct Energy Deposition)は、指向性エネルギー堆積法とも呼ばれる造形方式です。
あらかじめ金属粉末を詰めた層を用意するのではなく、金属粉末を放出しながらレーザーや電子ビームで造形部分を照射して溶かして積層していきます。
複雑な形状の造形には不向きですが、大型の造形品や比較的シンプルな形状の造形、金属の補修でも活躍しています。
熱溶解積層方式(FDM:Fused Deposition Modeling)は、熱で変形する樹脂と金属を混ぜた素材を押し出して積み重ねていく方式です。
従来の樹脂3Dプリンターの方式を応用したものですが、成形した後も加工作業が必要となります。
具体的には、炉に入れる焼結作業、熱可塑性樹脂を取り除くための脱脂といったもので、それらの作業を行わないと造形物が完成しません。
また、これらの作業中に造形物が収縮していくので、収縮割合を計算して金属3Dプリンターで造形する必要があります。
バインダージェット方式(結合剤噴射方式)は、バインダーと呼ばれる液体結合剤を噴射しながら金属粉末などを敷き詰めたところを固めていく方式です。
もともと砂を噴射してバインダーで固めていく方法でしたが、徐々に金属粉末を利用する機種も登場しています。
最初に成形体を作った後にバインダーを取り除く作業があるのも特徴です。
主に微細形状の小型部品を作り出すのを得意としていますが、若干金属の密度が低いというデメリットがあります。
ここからは、金属3Dプリンターでのメリットを以下の3つに分けて解説していきます。
金属3Dプリンターは、これまでの金属加工では困難だった複雑な形の造形物も製作できることがメリットです。
金属の粉末を少しずつレーザーで溶かしていく工程を繰り返すことで、細かな加工が実現できます。
一般的な金属加工である鋳造や切削といった加工にはできなかった、工具の入らない場所への加工や型から取り出せない形状のものも金属3Dプリンターであれば製作可能です。
また、鋳造以上の強度を持ち、金属加工で強度を出す際に用いられる鍛造に匹敵するともいわれています。
金属3Dプリンターの活用が、コスト削減につなげられるというメリットもあります。製作する部品点数を減らすことができ、その分だけ製造コストを下げられるからです。
例えば、数点以上の部品で構成されるような製品も金属3Dプリンターを使えば1点の部品を製作するだけで済む場合もあります。
また、加工に携わる人員の数を減らすことが可能なので、人件費も削減でき、それがコスト削減につなげられるメリットもあります。
金属3Dプリンターによって、製品を軽量化できることもメリットです。
前述したように部品点数を減らせるだけではなく、初期段階から設計し直せるなどの結果、軽量化にもつながります。
さまざまな条件で多くの試作品を気軽に作り出すことも可能になるため、試作と検証を繰り返しながら最適な設計を見つけることも可能です。
続いて、金属3Dプリンターで考えられるデメリットを以下の3つに分けて解説していきます。
高い精度が求められる製品や造形方式によっては、精度が足りずに追加で加工が必要になる場合もあります。
現状では、10μレベルの寸法精度という限界があり、それ以上に高い精度を求める場合は別途、追加の加工を施さなければなりません。
このデメリットによって追加の加工が必要となり、かえって手間や時間、製造コストがかかることもあるため注意が必要です。
金属3Dプリンターは、サイズが大きな製品の大量生産が難しいというデメリットがあります。
装置で製作できるサイズを超える場合は、複数の部品を金属3Dプリンターで製造し組み合わせる必要があります。
そのため、大量生産を目指している場合は、その他の製造方法よりも、完成までに時間がかかってしまうこともあるでしょう。
金属3Dプリンターは、データの取り扱いや造形に対して知識が必要なこともデメリットと言えます。
なぜなら、造形方式による特徴の違いや専用のソフトウェアの使い方など、最低限の知識がなければ、目的に合った製作方法やデザインを判断できないからです。
知識がない場合、専門の業者やデザイナーなどに相談しながら製作を進めることで、失敗を防げるでしょう。
続いて、金属3Dプリンターを使った製作事例を医療・自動車・航空宇宙業界に分けてご紹介します。
医療業界で金属3Dプリンターを使った事例として、インプラントが特徴的です。
複雑な形状で個人差のある人体にマッチした金属部品も、金属3Dプリンターなら製造できるため、インプラントの歯のほか、背骨を固定する複雑な形状の内固定を行うインプラントにも活用されています。
また、人工関節やペースメーカーといった医療用の機器についても、試作品の製作が進められているほか、手術に用いる特殊な手術器具や車いすの部品など、幅広い業界で応用されています。
自動車業界では、最新の部品や復刻部品の製造に金属3Dプリンターを使用した事例があります。
レーシングカーでは、超軽量・薄型・超剛性を両立したパーツを実現するために、金属3Dプリンターで部品を製造するなどの活用が進められています。
一方で、現在は生産が終了して部品のストックがない古い車に対して、当時の形状を忠実に再現したパーツを、メーカーが復刻生産している事例もあります。
航空宇宙分野でも、金属3Dプリンターを使った事例はあります。
特に注目されているのが、ジェットエンジンの修理です。バードストライクなどで破損したジェットエンジン部品の補修・修理に利用されています。
また、宇宙分野ではロケットエンジンの配管部品などへの適用も特徴的です。
高い精度と複雑な形状が多く、大量生産も要求されにくいという背景から、金属3Dプリンターの特性が生かせる分野として注目されています。
ここまで、金属3Dプリンターの基礎知識からメリット、デメリットまでをまとめてきました。
ここからは、弊社が取り扱っている、金属造形、補修、機能追加に適したオールインワンの金属3Dプリンター「Meltio」を少しだけ触れさせていただきます。
Meltioは、金属材料の中で最も安価な溶接ワイヤーを材料として使用することで、以下4つのメリットを実現した金属3Dプリンターです。
上記のように、使いやすい金属3Dプリンターとしてさまざまな用途に活用できます。
これまでは高額で利用できなかったものでも、手軽に製造しやすくなっているほか、さまざまな材料を使用して製造することが可能です。
重工業から、医療、建設などの幅広い業界に適しています。
より詳しい情報は、弊社のプロダクトページよりご覧ください。
本記事では、「金属3Dプリンターとは何か?」という基礎知識から、造形方式による特徴の違い、メリットとデメリットまで幅広くご紹介しました。
金属3Dプリンターは、金属による製造から修理まで幅広い用途や業界で注目されている技術です。
製造で失敗しないためには、目的に合った機械や材料、設計を用意することが大切なポイントとなります。
わたしたち3D Printing Corporationは、日本市場におけるMeltio社の金属3Dプリンターの販売を行っています。
また同プリンターを使用し造形サービスも行っております。
弊社工場見学にて、実際に実機をご覧になることも可能ですので、ご興味のある方はお気軽にご相談ください。
Meltio詳細情報:Meltio450, Meltio Engine
Meltioは、3D Printing Corporationが運営しているオンラインストアで販売しております。
オンラインストア(Meltio)はこちら
メール経由:info@3dpc.co.jp へ「Meltioに関する問い合わせ」等の旨をご記入の上、お問い合せください。
]]>皆さんこんにちは!
3D Printing Corporationの古賀です。
今回は、3Dプリントしたカーボン材と従来工法のアルミ材を比較して3Dプリントカーボンの実力を確かめていこうと思います。
本記事は前後半に別れており、前半では1と2、後半では3と4を扱います。
1では、3Dプリントの天敵、ホームセンターで売られているシンプルな部品と3Dプリントという禁断の比較をします。私の3Dプリント活用の合言葉「ホームセンターで売ってるものはホームセンターで調達しましょう」に正面から挑みます。相手はホームセンター最強のアイテム、アルミパイプです。
2では、3Dプリントと比較されがちな切削や板金などの加工法と3Dプリントを比較してみます。3Dプリントしたカーボン材と従来工法のアルミ材にとって得意不得意が出にくいパーツを作る際に、どのような違いが出るかを比較していきます。
3では、3Dプリントカーボン材を用いたアプリケーション開発の例として、3Dプリントでカーボン製のL字ジョイントの設計製作をしてみます。従来工法で設計製作する場合と比較しながら、3Dプリントカーボン材の良さを見ていきます。
今回想定している読者さんは以下です。当てはまった方はぜひ最後までお楽しみください!
・プラスチック3Dプリンターを常用しているが強度不足を感じている方
・普段からアルミ材と切削を多用しているが作業時製作間やリソースの不足を感じている方
・日々の試作開発を加速したい方
・製造外注に不満がある方
また、専門的な内容についてはコラムにまとめて紹介するような形式を取ります。コラムを飛ばしてもOKなように構成しています。背景や専門用語が気になる方は、ぜひコラムもご一読ください。
多くの3DCAD食わず嫌いな人たちがしている3DCADの習熟難易度の勘違いについて短めに解説します。製図は覚えることが多く、空間認識能力が必要。3DCADはその両方が不要。「○○の作業をするときには△△のボタンを押す」という訓練が必要なだけです。専門知識が不要になったことで、アメリカでは小学生が3DCADを学習するようになっています。製図を勉強した人なら、間違いなく3DCADは使えるようになりますし、使いこなすまでの訓練時間は製図の時より圧倒的に短くなるはずです。
1. 3DCADとは、3次元形状の設計図が書かれたデジタルデータまたは編集ソフトのことを指します。3Dプリンターを運用するためには3DCADデータが必要です。自ら編集ソフトを使って設計するか、3DCADを提供しているオンラインサイトでダウンロードすることで、3DCADデータを用意することができます。
3Dプリントの天敵、ホームセンターで売られているシンプルな部品と3Dプリントという禁断の比較をします。比較相手はホームセンター最強のアイテム、アルミパイプです。
アルミパイプは、最もなじみ深い素材の1つでしょう。軽量で加工しやすく、プラスチックと比較して非常に強い素材です。引抜成型という素晴らしい相性の製造技術に恵まれ、安価に供給されています。アルミ材を使える場面なら、第一に候補となる優秀な素材です。
一方で、規格品の宿命として、規格品に合わせた設計が求められることや自分が欲しいサイズへの加工に手間がかかることがボトルネックです。
さて、今度はアルミパイプと同等の外形寸法・軽さ・変形しにくさを持つパイプ材を3Dプリンターとカーボン材料で作ってみましょう。対象は厚さ1mm一辺10mmのアルミ角パイプ、使う3DプリンターはMarkForged社製MarkTwoです。
・・・
さて計算が終わりました。計算過程は省きますが、同等の軽さと変形しにくさで設計すると、寸法は厚さ2mm一辺10mm(長さ100mm)になります。簡単な形状なので、すぐに3DCADを起こせますね!3DCADを起こしてすぐさま3Dプリント開始です。
1時間後、あっという間に完成です。時間を比較するとホームセンターに行って帰ってくるだけで1時間はかかる(当社比)ので、3Dプリンターの方がスピーディです。また、人間の手間時間でいうとさらに短いです。
コストで比較すると、3Dプリントが1176円と一見して3Dプリンターが高いように見えますが、ホームセンターで買うにせよ内製するにせよ、人件費がかかるので、1時間1000円で計算しても実質的なコストはあまり変わらないです。ただし、実費だけで見ればホームセンター様様です。
性能面を比較してみると、曲げ剛性(曲げに対する変形しにくさ)がアルミ33.8N/m2に対して3Dプリントカーボンが30.9N/m2で8.4%ほどアルミより低いものの、重量はアルミ5.13gに対して3Dプリントカーボンが4.08gと20.5%軽く、比曲げ剛性(重量あたりの曲げ強度)では15.0%アルミパイプより高いため、アルミパイプよりも軽量化のポテンシャルが高いと言えます。ただし、高熱などの環境では、カーボン材はプラスチックをベースにしているためどうしてもアルミに劣ります。
実際に、先端から5-10mmのところに7.7㎏の錘を吊るしたところ、図のように、パーツの見かけ上のたわみはほとんどなく、計算上のたわみ量(0.4mm)と比較しても妥当な結果が得られました。錘には、現在売り出し中の金属3DプリンターMeltioで造形したステンレス製のパーツとビルドプレートを使用しています。
〇短時間で調達・加工手間は数分
〇人件費を含めるとコストはアルミパイプと同等
〇金属のアルミ並みの性能(軽量化ポテンシャルは3Dプリントカーボンの方が高い)
△実費で比較するとアルミパイプが安い
△耐熱などの特性は金属に劣る
一般的にプラスチックと金属の強さ・変形しにくさには大きな隔たりがあります。カーボン材は、プラスチックに炭素系材料を加えて強化し金属並みの強さ・変形しにくさを獲得した材料です。図はashby chartと呼ばれる、材料の性能によって分類された材料マップです。中央の青のグループがプラスチック(Polymers)で赤のグループが金属(Metals)、カーボン材は紫のグループの複合材料(Composites)のCFRPに分類されます。図の右に行くほど重く、上に行くほど変形しにくい材料です。この図から分かるように、カーボン材は金属と同じくらい変形しにくく、プラスチック並みに軽いということが分かります。
次に、なじみ深い切削加工と3Dプリントを比較してみます。3Dプリントしたカーボン材と従来工法のアルミ材にとって得意不得意が出にくいパーツを作る際に、どのような違いが出るかを比較していきます。
今度はホームセンターでは買えない、加工が避けられない形状を選びます。構造設計の基本となる代表的な形状として、トラス構造を採用します。今回も比較対象は、長さ170mm, 高さ75mm, 厚さ10mm, 幅約3mmのトラス構造です。
今度は同じ寸法でそれぞれの工法のパーツを作成します。3Dプリントしたカーボントラス、切削したアルミトラスのどちらも21.7g, 45.9gと非常に軽量です。1でカーボンパイプはアルミパイプより太めでしたが、同一形状で比較すると重量差が顕著に出ますね。限られた空間で軽量化が必要な場合はカーボン材が有利になりそうです。
造形時間は、3Dプリントで04h24mです。アルミの削り出しよりは時間がかかりますが、内製であれ外注であれアルミ削り出しよりも手間時間は短そうです。時間の観点では、手間を重視するなら3Dプリント、出来上がりまでの時間を重視するなら状況によっては削り出しとなりそうです。3Dプリントのコストは1パーツあたり2964円ですので、加工の手間時間合計が2時間以上ならトータルコストで3Dプリントが有利、実費ではアルミが有利という関係は1のパイプと同じです。
変形しにくさを比較するために、それぞれ、10kgの荷重を上面に掛けてみましょう。すると、カーボントラスとアルミトラスはそれぞれ、0.3mm、0.1mm程度変形します。重量比の剛性を比較するとアルミトラスがカーボントラスの1.5倍ほど硬いです。一般的なプラスチックでは、見た目でも変形していることが分かる6mm以上の変形となるため、3Dプリントしたカーボンがプラスチックを圧倒して、金属に比肩する性能を発揮していることが分かるかと思います。
今回はトラス構造として最も単純な形状で比較しました。実際に設計・製作する場面では、数値解析や実験を重ねて何度か設計変更し、最終形状を決定することになるでしょう。その時、3Dプリンターは大きな価値を発揮します。例えば、設計変更が3回だったとして、その過程で発生する手間は切削の場合は、加工工程の設計や準備・加工など1回あたり数時間の手間がかかるため、場合によっては10時間以上の手間を要します。一方、3Dプリンターを使えば、加工手間自体は合計しても20分ほどで、業務外の時間を活用することもできます。業務における手間を考えた際の拘束時間は最低2営業日です。この拘束時間に加え、設計変更などの業務を最速でこなしたとしても現実的には合計8営業日はかかります。これに対して3Dプリンターでは合計の拘束時間は20分、設計変更の時間は同じだとしても約5営業日で完了することができるでしょう。
今回は非常に単純な形状でやっているため、この程度の差で済んでいますが、設計が複雑化する実際のアプリケーションではこの効果はさらに大きくなります。
実際に荷重を与えてみると、7.7kgの錘が乗っても見た目の変形はほとんどなく、計算結果と同様の結果が得られていることが分かります。
〇3Dプリントの加工手間は数分
〇人件費を含めるとコストはアルミ切削と同等
〇プラスチックを大きく上回る、金属のアルミ並みの性能
〇アジャイルな開発サイクル
△実費で比較するとアルミ切削が安い
△耐熱などの特性は金属に劣る
カーボン材というのは専門的に言えば何種類かあります。この記事での「カーボン材」は、繊維強化プラスチック(FRP)という材料を指して使っています。FRPは日本名の通り、強靭な繊維素材を内蔵することで性能を強化したプラスチックベースの複合材料です。性能の大部分を内蔵する繊維に頼っているため、内蔵する繊維の状態によって性能が変化します。特に重要なのが、繊維の向きです。3Dプリント登場前のFRPは、プリプレグ積層という製造法で作成するのが一般的でした。図のように繊維の方向が入れ子状になるよう積み重ねると、金属以上に軽くて強い材料となります。3Dプリントする場合、より複雑に繊維を配置することができ、例えば、2のカーボントラスでは図の青い線に沿って繊維が配置されることで強力なトラス構造を実現しています。
ここまでで前半は終了です!いかがでしたでしょうか?
3Dプリントでカーボン材が印刷できることを知らなかった人は、目からウロコの内容だったのではないでしょうか?今回の実験では、アルミ材相当の性能が出る3Dプリンターがコストや手間の面で見ても有効であることが分かりましたね。3Dプリントという製造手法は軽量化や材料ロスの低減に有利な手法として注目されています。後半では、これらの点に注目して、もう少し複雑な形状を作ってみようと思います。3Dプリントとカーボン材を使って試作開発する際のアルミ材との比較を通して、3Dプリントカーボン材の魅力を知っていただきたいと思います。次回もお楽しみに!
]]>失敗しない3Dプリンティングのためには、用途に応じて、造形物の形状はもちろんのこと、素材も適切なものを考慮する必要があります。金属用3Dプリンタ今では、金属・カーボン材料・スーパーエンプラ等の様々な素材を3Dプリンターで造形することが可能になってきました。ーの話をする前に、まずは主要な素材の大分類から見ていきましょう。
最も頻繁に使われる材料の一つは、プラスチック素材です。個人用・家庭用の3Dプリンターで扱える材料は、基本的にプラスチックに分類されるため、目にする機会は多いでしょう。多用される最大の理由は、加工が設備が簡便な点でしょう。プラスチック素材にはPLA・ナイロン・ABSなど多くの種類が存在しますが、ほとんどが加熱で柔らかくなる熱可塑性を持っていたり、光によって硬化する光硬化樹脂です。また、他の素材と比較して安価なものが多いです。
一方で、加熱で柔らかくなるという特性は、耐熱性の観点からすれば弱みでもあり、高温環境で使用する場合には注意が必要です。工業用パーツとしては使いづらくもあります。スーパーエンジニアリングプラスチックと呼ばれるような、耐久・耐熱・耐薬品性に優れたプラスチック素材も存在しますが、取り扱い可能な3Dプリンターは相応に高価です。
2種類以上の材料を組み合わせた複合材料のことをコンポジットと呼び、3Dプリンターの業界においては、主にプラスチックとファイバー(繊維)材を複合したFRP材(繊維強化プラスチック材)を指します。炭素繊維やガラス繊維、ケブラー繊維などを混ぜ込むことで繊維材が材料を強化し、プラスチック単体では実現できない高強度を実現します。コンポジットによる3Dプリント造形物は、プラスチックの加工の容易さや軽さを保ちつつ、金属にも劣らない強度を発揮します。
ただし、主材料がプラスチックなので、高熱や表面の摩擦に弱い点はプラスチックと同じです。その点を考慮した上できちんと活用すれば、プラスチックより強く、金属より軽く安いという、競争力の高い部品の製造が可能であり、すでに多くの産業分野で活用されています。
(詳しくはこちらから)
3つ目の大分類として、本記事のメイントピックである金属素材について紹介します。一般的に金属は、プラスチックより高い耐熱性と、高強度・高剛性、さらに耐薬品性や電気伝導性を持つ材料です。この特徴から、金属3Dプリンターはより厳しい条件下で活用することができます。
その一方で、金属はプラスチックより安定性が高く、変形させるのに手間がかかるため、加工には大掛かりな設備が要求されます。素材や造形物に重量があるほか、電機や換気の設備が工業水準で求められ、3Dプリンター機器そのものだけではなく、設備側も一定以上の規模が必要になります。管理が必要な薬品を使用する場合もあり、プラスチック材料対象の3Dプリンターほど気軽に導入はできません。
しかし、3Dプリンターを用いる効果は多数あるため、やみくもに導入するのではなく、効果的な場面を見極め、適切な場面で運用するのが望ましいです。詳細は以下でご紹介していきます。
番外編としてご紹介するのが、エラストマー素材です。高分子樹脂に分類されるため、プラスチックとも近しい素材ですが、ゴムのように柔らかく、造形後もある程度の変形や伸縮性、反発性を持つ点が特徴です。そのほとんどは光硬化によって3Dプリントされ、靴のクッション部分やバネのような部品など、複雑かつ毎回求められる形状が異なるような分野で主に活躍しています。
また、研究レベルでは細胞・半導体・磁石などの3Dプリントが試みられております。
一口に金属3Dプリンターといっても、その方式は様々です。造形方式によって、使用可能な材料種、造形可能な形状、大きさ、後加工の方法等大きく変わるため、適切な方式を選択することが重要です。ここでは、主要となる3つの造形方式をご紹介します。
PBFは「粉末床溶融結合」と訳される方式です。機器内部のエリア全体に、細かな金属の粉末を薄く敷き詰め、レーザービームや電子ビームを等で加熱して部分的に融かして結合させ、それを繰り返して積層させてゆき、造形物を作ります。3Dプリンティングらしく複雑な造形が可能な一方で、光の反射率が高いアルミ・銅などの材料を苦手とし、材料である金属粉末の一部は空気に触れると燃焼する危険があるため、高価な保護具や粉塵爆発を防ぐ設備、酸化を防ぐ不活性ガスの重点・管理など、大規模な設備と装置が必要となります。さらに、使用済みの金属粉末はリユース可能な一部を除いて廃棄が求められる場合があり、材料を交換するだけでも専門家による大規模なメンテナンスが要ります。
DEDは「指向性エネルギー堆積法」と呼ばれる方式で、PD(Powder Deposition)方式と呼ばれることもあります。PBF方式と根本的な手法と使用エネルギーは共通しており、どちらもレーザーや電子ビームなどで金属材料を溶融させ、積層してゆきます。
しかし、PBFが一層ずつ全体に粉末を敷き詰めてゆくのに対し、DEDは照射する予定の場所にのみに絞って材料を配置させる点が大きく異なります。そのため、より少ない材料で済むメリットがある一方、積層部分へのより的確な材料供給が必要になります。
上記の特徴から積層部分が大ぶりな方が安定して造形できるため、DED方式が得意なのは、比較的大型で単純な形状の製造です。また、局所的に材料を継ぎ足してゆくことができるため、既存製品の補修を行うことも可能な方式です。
関連:W-LMD(Wire Laser Metal Deposition)方式
DED方式の派生として、W-LMDと呼ばれる方式も注目されています。「レーザー金属堆積」とも呼ぶべき方式で、金属ワイヤーにレーザーを照射することでメルトプール(溶接個所)を生成します。連続して金属ワイヤーの供給を行い、溶接ビードの層を正確に積み重ねることによって造形してゆきます。
金属粉末ではなく金属ワイヤーを使用する点が大きな特徴で、他の金属材料よりも安価で、より早く金属部品を造形することが可能です。粉塵爆発や材料酸化を回避するための大規模な設備も不要で、扱いの面でもより簡便とされています。
また、アーク放電を利用するWAAM(下記WAMの項)と比較しても、局所的に金属を溶解させるため、造形精度はより高くなり、エネルギー量が抑えられるため反りが抑制され、後処理の時間も短縮できます。
この手法は海外メーカーであるMeltio社の製品で採用されています。
Meltio詳細情報:こちら
日本語では「ワイヤー積層造形方式」と呼ばれる、溶接の肉盛りを応用した3Dプリンティング手法です。アーク放電を用いるため、WAAM(Wire and Arc Additive Manufacturing)方式と呼ばれる場合もあります。金属のワイヤーをアーク放電によって融かし、積層造形していきます。大ぶりな造形になってしまいますが、PBF方式と比較して高速な造形が可能で、対応している金属材料が豊富です。ただし、精度が求められる部分には切削や研磨が不可欠のため、既存の切削加工手法とほぼ同じ形状的制約を受けます。形状の複雑さよりも高速さと造形物の大きさを優先した方式といえるでしょう。
ADAM方式は「原子拡散積層造形法」とも訳される方式で、プラスチック素材の3Dプリンターで活用されているFFF*(Fused Filament Fabrication:積層造形)と、金属を型成形するMIM(Metal Injection Molding:金属粉末射出成型法)を掛け合わせたものです。
まず、熱で溶ける蝋と金属粉を混ぜた専用の素材を用いて、FFFによる3Dプリントを行い、グリーンパーツと呼ばれる成形物を得ます。このグリーンパーツは蝋と金属粉が混ざった状態なので、蝋を洗浄して除去した後、成形物を高熱の炉で焼結させることで、シルバーパーツと呼ばれる完成品を得ます。この焼結過程で成形物が縮小するため、3Dプリンターで造形するグリーンパーツは、最終形状より少し大きめに変換した3Dデータを用いるという特徴があります。
上記のPBFやWAMと比較して設備要求が少なく、形状はプラスチック用3Dプリンターと同等の複雑なものが期待できる点が強みです。
※FDMと呼ばれることもあります。
従来の金属加工のほとんどは、射出成形に代表されるような「FM:Formative Manufacturing」と呼ばれるものと、切削加工に代表されるような「SM:Subtractive Manufacturing」と呼ばれるものに分類されます。一方で、金属3Dプリンターによる造形方法は「AM:Additive Manufacturing」と呼ばれ、FMやSMと異なる特徴を持つ新たな製造方式です。それぞれを簡単にご紹介します。
鋳造やプレス成形のように、内部の詰まった密な構造を造形する方式です。型枠へ融けた金属を流し込み、後に型から取り出します。場合によってはオーバーハング角などの形状的制約があり、設計者はそれらを考慮して工程を設計します。型を繰り返し使用することで、同一形状を量産できるため、大量製造に適した手法です。
切削に代表される手法で、芸術分野における彫刻のように、対象物の材料を取り除きながら加工するため、引き算的手法とも呼ばれます。加工面へのアクセス(加工機器の先端が接面すること)が可能であれば、かなり自由度の高い造形ができます。実際の製造現場では、他の手法と合わせて、後加工や仕上げとして用いられる場合もあります。
SMとは逆に、足し算的手法と呼ばれる手法です。材料を追加しながら積み上げてゆくことで造形する方式であり、3Dプリンターのほとんどは箱の分類に属します。
上記2つの従来加工法と比較すると、造形の自由度が高い点が大きな強みとして挙げられます。FMにおいて欠かせないオーバーハング角を意識する必要がなく、またSMにおいて欠かせない加工面のアクセシビリティも意識する必要がないためです。型や治具・固定具が不要な強みもあり、3Dプリンター機器と消費した材料以外の経費をほとんど考慮せずに済む点において、従来の加工法とは大きく異なります。さらに、入力データの変更により素早く製造物の形状を変えられる点も重要な特徴です。
これまでの内容を踏まえて、金属用3Dプリンターで可能なことや、わかりやすいメリットについて紹介していきます。
金属3DプリンターによるAMであれば、従来のFMやSMでは造形不可能だった、トポロジー最適化やメタマテリアルに代表される高性能な複雑形状を成形可能です。例えば、内部を蜂の巣のようなハニカム構造状にすることで軽量化したり、三次元的に表面積を増やして熱交換効率を上昇させるなど、部品の「高性能化」を実現できます。
上記の内部構造の複雑化にも関係しますが、かつては造形物を接合することでしか実現できなかった構造を、金属3Dプリンターであれば一体造形することが可能です。
例えば、複雑に絡み合う配管は、従来は直線やカーブなどの比較的単純な形状のパイプを接合して組み立てる必要がありました。そのため、接合まで考慮した全体の工程設計そのものに多くの時間とリソースが割かれていました。しかし、金属3Dプリンターによって絡み合った配管を丸ごと造形すれば、接合や組み立て作業そのものが不要になるため、工程設計にかかる時間ごと圧縮が可能です。接合点数の削減は、接合工程の省略や、品質管理工程の軽減にもつながるのです。
一度破損してしまえばパーツ交換が基本であった金属部品も、金属3Dプリンターを活用し、破損した箇所に新たに材料を付け足すことによって、失った部分を再生することが可能です。設計書などが残っていない場合も、在庫品の光学的なスキャニングによって、まるまる複製するようなリバースエンジニアリングを現地で実施することが可能です。
いかがでしたか? 3Dプリントに使える材料のまとめに始まり、金属3Dプリンターの分類、実際の用途や特徴をご紹介いたしました。最後に、実際の導入に関するお話をいたします。
有効に活用すれば、従来の課題を解決に導ける金属用3Dプリンターですが、他の製造法と同様に、万能の装置ではありません。方式によっては積み上げが可能な形状に限られたり、使える材料種に制約があります。また、3D CADデータが必須な点も留意が必要です。
そして費用の面では、金属3Dプリンターを活用するために一千万~数億円の初期投資が必要であり、想定用途や運用体制を十分に整備しなくてはなりません。
しかし、AMという製造方式は、FMやSMといった従来の製造方式とは異なる特徴を持っています。金属3Dプリンターの活用により、研究分野や製造現場で、これまでにない課題解決法が今も生み出されているのです。工業に新たな未来を実現し得る技術であることは、疑いようがありません。3D Printing Corporationは、実際の活用におけるコンサルティングから、ベンチマークの試験的製造、設備導入のご案内まで、丁寧にサポートいたします。ご興味を持たれましたら、お気軽にご相談ください。(メール経由:info@3dpc.co.jp )
3D Printing Corporationは、スペインの3Dプリンタ―メーカーであるMeltio社(代表取締役CEO:Ángel Llavero)の日本総代理店を務めています。Meltio社は金属材料の中で最も安価な溶接ワイヤーを材料として使用することで、最も作業者の安全性が高く、かつクリーンな環境での使用が可能な、金属3D造形システムを提供しています。
3D Printing Corporationは、日本市場におけるMeltio社の金属3D造形システムの販売を行っています。ご興味を持たれましたら、お気軽にご相談ください。Meltio詳細情報:こちら
3D Printing Corporationが運営しているオンラインストアで販売しております。
オンラインストア(Meltio)はこちら
メール経由:info@3dpc.co.jp へ「Meltio購入検討に関する問い合わせ」等の旨をご記入の上、お問い合せください。 ※法人様向けに販売代理店も募集中です。
]]>NTT Docomo社は海洋プラスチックゴミ問題を訴える取り組みとして、沖縄の海岸に...
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事例1:海洋プラスチックのリサイクル
NTT Docomo社は海洋プラスチックゴミ問題を訴える取り組みとして、沖縄の海岸に打ち上げられたペットボトル(海洋プラスチックゴミ)を回収し、材料をリサイクルして、3Dプリントによってスマートフォンケースに再生するプロジェクトを実施しました。
3DPCは回収された海洋プラスチックゴミを受け取り、3Dプリント用材料へのリサイクル・3Dプリントによるスマートフォンケースの製造、スマートフォンケースの塗装をワンストップサービスとして提供し、NTT社の求める製品製造ソリューションを提供しました。
事例2:CFRP・GFRPのリサイクル、3Dプリント材料化
大手化学メーカーからの依頼を受け、元々3Dプリント用に開発されていなかった熱可塑性FRP材料をペレットで提供していただき、ペレット材料のリサイクルと3Dプリント用材料の開発を実施しました。
3Dプリント用材料の実用性評価のための3Dプリント試験をサービスの一貫として提供しており、3Dプリント可能な材料としてリサイクルプロセスの開発結果を報告しています。
3DPCでは、従来リサイクルが難しいと言われていた。CFRPやGFRPなどのFRP材料の3Dプリント材料化リサイクルに成功しており、化学工業日報誌にて記事を掲載していただいております。
事例3:コンシューマ向け製品プロバイダーの未使用在庫のリサイクル
大手コンシューマ向け製品プロバイダーが抱える未使用在庫の課題をリサイクル3Dプリントで解決するソリューションを提供しています。
大手コンシューマ向け製品プロバイダーは常に未使用在庫の問題に悩まされています。未使用在庫とは、製造ロットごとに売り切れずに残った在庫品です。
未使用在庫はリサイクルの観点からは、洗浄が不要なリサイクル素材である一方、供給が不安定であることから、決まった製品のサプライチェーンに組み込むことができませんでした。3Dプリントリサイクルは、入力するデータを変換するだけで、金型などの再設計なしに同一設備のまま様々な形状のパーツを製造することができます。そのため、オンデマンド製造が可能であり、近い未来に向けた開発として、未使用在庫を使用したリサイクルと3Dプリント材料化及び実用的な製品の3Dプリント製造を実施しました。
約50㎏の材料から30点の製品をリサイクル製造しました。このプロジェクトは進行中で、今後は大型化や量産化に向けた開発を実施していく予定です。
]]>近年の技術発達によって大空を自在に舞うドローンは、人々の活動圏を三次元へ拡張し、今や様々な局面で活用され始めています。しかし、運用する場所によっては、接触事故の不安があります。ドローンが飛行の際に壁や天井に衝突し、一度制御を失ってしまえば、立て直すのは至難の業です。特にプロペラ部分への接触はなるべく避けたいところ。かといって全てを覆ってしまえば、機体が重くなってしまい、せっかくの機動性が失われてしまいます。
それを解決するのが、合同会社スカイブルー様が開発・販売する安全ドローンガードです。軽量で頑丈で、しかも用途によってカスタマイズが可能。それを陰から支えるのは、3Dプリンティング技術でした。
導入の背景:細かい形状の調整が可能・制作時間の短縮
今回ご回答いただいた上野様は、もともとは自動車産業界に長くいらっしゃいましたが、転じてドローンに関係する事業を立ち上げました。自動車業界全体に漠然とした限界を感じていたころ、ドローンという新しい技術に未来を感じます。そこで考えたのが、ドローンをより安定させて遠くに飛ばすために必要なものは何か、ということ。
不安が大きいのは、やはり接触です。どんなに丁寧に操作をしていても、突然の風や飛来物によって安定を欠く心配をぬぐえません。少なくとも、プロペラが衝突する可能性は減らさなければ……そう考えました。
まず、良いパーツが見つかりました。炭素繊維製の棒です。軽くてしなやかさと硬さを合わせ持ち、頑丈。空気の流れもほとんど邪魔することなく、ドローンガードとしては最適な材料です。メーカーと提携して、これを活用してガードを作成することに決まりました。
問題は、接合部のパーツです。棒だけでは形にならないため、棒と棒、棒とドローンを繋ぐパーツが必要となります。しかし、これを従来の方法である射出成形で作ろうとすると、非常に困難です。金型にプラスチックや金属を流し込んで作るならば、当然パーツごとにそれぞれの金型が必要になるため、結果的にかなりの種類に及びます。何より生産数から考えると、採算を取るのが困難でした。射出成形によって採算を取るためには、少なくとも3000個ずつは量産する必要がありましたが、現在の利用では、せいぜい1パーツにつき20個ほどの生産です。ドローンごとに形状を調整したり、今後新しい規格が次々出てくるだろうことを考えると、とても現実的ではありませんでした。
そこで目を付けたのが3Dプリンターによるパーツの製造です。細かく形状を調整することができ、パーツ1つから製造する事が出来ます。さらに、ドローンを覆うという用途の特性上、反転対称の形状をしたパーツの多いことが幸いでした。射出成形では個別に金型が必要ですが、3Dプリンターであればデータを反転させるだけで、そっくり対となるパーツが作成できるのです。
製造にかかる時間も申し分ありません。注文を受けてから2週間ほどで納品が可能……ということは、発注されてから生産に入れるので、在庫を抱える心配がありません。事業が大きくなってきても、単純に3Dプリンターを新たに増やせば、その分生産数を増やす事が出来ます。「3Dプリンティングは、ドローンガードに最適な方法だと思った」と、上野様は語ります。
運用方法と効果:軽さと頑丈さ
炭素繊維で骨組みを、3Dプリンターで接合パーツを、それぞれ作成することは決まりました。問題があと1つだけ残っています。それは直接の衝突や棒のゆがみを支える、接合パーツの頑丈さでした。
最初は、ABSなどの一般的なプラスチックを材料として使用していましたが、亀裂が入ったり割れてしまったりなどの破損が目立ちました。これでは、ドローンガードとしての本分が果たせません。上野様は頑丈な材料と、それで製造できる3Dプリンターを探しました。
やはり軽さと頑丈さを両立するのであれば、炭素繊維が適役です。採用された『Onyx(オニキス)』は、炭素配合ナイロン(ポリアミド)製の材料で、製造業向けの3DプリンターメーカーであるMarkforged社が提供する製品です。同社の3Dプリンター『Mark Two』ならば、造形物へさらに炭素繊維による層を挟みこめるため、アルミ並みの強度のパーツを作成する事が出来ます。ドローンガード事業を開始した当時、これら製造業向け3Dプリンターを日本国内でいち早く取り扱っていた企業こそ、3D Printing Corprationでした。
早速連絡を取り、データを共有して試作品を作成します。その結果、『Onyx』はそれだけでも頑丈であり、ドローンガードの接合部として十分に機能することがわかりました。小さな接合パーツのため『Onyx』だけで済むのは幸いでしたが、仮に今後さらなる強度を求められる段階になったとしても、炭素繊維の層を挟み込めば、かなりの質向上が狙えるというポテンシャルも安心材料となりました。3D Printing Corprationと『Onyx』・『Mark Two』をパートナーとして、軽く、頑強で、しかも様々な規格に対応可能なドローンガードがついに実現したのです。
今後の展望
今では、ドローンガードの事業は順調で、3台もの『Mark Two』が稼働しているそうです。「より良いプリンターが見つかってしまうと、以前の3Dプリンターは使わなくなってしまいますね」と上野様は笑います。
ガードの他にも、野外でドローンの活動圏内を覆うドローンネットなどを開発している合同会社スカイブルー様。今後の展望についてお聞きしました。
上野様によると、今後はドローンの巨大化が予想されるそうです。農業の農薬散布用や建設業界用など、これまでより大きく強力なドローンの活躍が見込まれているのです。それに伴って、プロペラ部分も大きく強化され、危険性も増していきます。「そうすると、ドローンガードはもはや本体のみを守るものではなく、人々の方を守るものになるんですね。見た目からしても、むき出しより覆ってある方が安全で、安心して使えるでしょう」と上野様は真摯に語ります。
また、それに連動してドローンガードの規格化も進んでいます。建設用ドローンともなると、法律の見直しのほか、ガードの強度保障も考えないといけません。合同会社スカイブルー様は、国と一緒にこの基準を作っているそうです。
そして最後に、プロペラ方式とは全く異なる、固定翼方式のドローン開発も進めているそうです。固定翼で滑空する場合、常に燃料の必要なプロペラ方式よりも、圧倒的な効率の向上が見込めます。つまり、長距離の運搬においてもドローンが活躍する未来が来るかもしれないのです。新たに社員として参加した小林様は、もともと自動車の設計デザインをされていました。その経験を活かして、飛行機の翼を参考にドローン用のパーツを3Dプリントしているそうです。3Dプリンターならパーツの拡大縮小も容易なため、模型を少しずつ大きくして、精度を高めているそうです。上野様は、このプロジェクトにも3D Printing Corporationに協力してもらい、DFAM™をはじめとした3Dプリンティングに関する豊富な知見を活かしてほしいと考えています。
とても楽しそうに、ドローンや3Dプリンティングの可能性について語る上野様。そしてそれを技術によって実現する小林様。彼ら合同会社スカイブルー様とともに、私たち3D Printing Corporationは、これからの未来を支えてゆきたいと願っています。
]]>日本には、各地にたくさんの観光名所があります。海外からの観光客も多く、人気のほどがうかがえます。一方で、ホテルの予約や電車や新幹線のチケット手配、大きな荷物を持っての当日移動など、せっかくの旅行なのに苦労が絶えない部分も多くあります。できることなら、旅の道中も快適に過ごしたい……そんな「夢」を叶えてくれる企業があります。
東京を拠点とするDream Driveは、手頃な価格で日本を旅する、新しい方法を生み出しています。快適な車内に改装されたキャンピングカーのレンタルです。旅先だけではなく、道中も快適な居心地。車内宿泊すらも楽しめる快適さは、まさに「移動するホテル」のようです。
Dream Driveの共同創業者であるJared Campion(ジャレッド・カンピオン)さんは、かつて日本を家族で旅行した時に、大変な苦労を経験したそうです。子供を連れて、荷物を抱えて、新幹線に乗って……日本人なら、誰でも心当たりがありそうなお話です。そこで、キャンピングカーなら重い荷物を持たず、快適に旅行できそうだと思い立ったのが始まりだそうです。
「私たちの目標は、人々の旅の仕方を変えることです 」と、彼は言います。「私たちは、車の中に豪華なホテルのような空間を実現します。『移動するホテル』を実現することで、より快適に日本を旅行できるようにしたいのです」。
導入の背景:手間の削減と効率化
Dream Driveが提供する中古のバン(キャンピングカー)は、一台一台丁寧にリノベーションされています。車内はすべて手作りでカスタマイズされ、例えば内壁をぬくもりの感じられる木で差し替えるなどの工夫が凝らされています。快適で広々とした車内は、「ホテルのような空間で旅をしたい」という期待に十分応えてくれます。
しかし、これらのカスタマイズされたパーツは、ひとつ完成させるのに数時間、時には数日かかることもあります。大型のバンともなれば、さらなる時間がかかります。一台のキャンピングカーを完成させるためには、実に3週間ほどの作業が必要となっていました。
単純に人手が足りていないわけではなく、一筋縄ではいかない工程が大きな行き詰まりを生んでいました。車の外側と内側のフレームをつなぐパーツの造形です。Jaredさんは、極端に手間のかかるこの問題に対し、効率的でかつ手軽な価格の解決策を見つけたいと考えます。そして、3D Printing Corporationに声をかけることに決めたそうです。
運用方法と効果:立体スキャンと3Dプリントによる手間の削減に成功
「特に苦労していたのは、この車の外側と内側のフレームをつなぐ部分のパーツです。上に向かうにつれ、少しずつカーブを描いています。このような複雑な角度にフィットする、完璧な曲率の木材を彫るのには16時間もかかっていたんです」。
そこで私たち3D Printing Corporationは、車内を光学的にスキャンすることによって、まず三次元的なデータを取得しました。
次に、CADソフトウェアを使用して、スキャンデータに基づいたモデルを設計します。正確な寸法を作成して、車両の形状に完全に一致するようなパーツを3Dプリンターで造形したのです。
「早速、第一号となるパーツを3Dプリントしてくれました。大幅な時間の短縮です。ここから少し調整を加えれば、バンの一部のようにぴったりなパーツになるでしょう」とJaredさんは喜ばれていました。
今後の展望
「今回のコラボレーションで、3Dプリンティング等の技術を活用することは、Dream Driveの新しい方向性であり、多くの可能性を開くことがわかりました」と、Jaredさんはお話しされています。「私たちは新しい車――新しい形やアイデアを構築していきます。今後も、3D Printing Corporationと事業を進めていくことを楽しみにしています」。
これからも3DPCは、みなさまの可能性を広げるお手伝いをいたします。
]]>3Dプリンターは、産業用の目的だけでなく、学問的な目的での使用も注目を浴びています。その一例が、中央大学の中村研究室が行っているMarkforged社のMark Twoを用いたぜん動ポンプの開発です。中村研究室では、Markforged社のMark Twoを主にぜん動ポンプの開発に用いています。ぜん動ポンプは大腸の動きを模倣しており、物体の搬送と混合を同時に行うことができるソフトロボット技術です。
中央大学の中村研究室は、「生物型ロボット」と「ソフトロボティクス」をキーワードとして研究を行っています。ソフトロボティクスとは、柔軟な機構を活用したロボットシステムのことを指しています。
現在のほとんどの機器はモーターを中心とした回転系駆動を前提として、すべての機構が構成されています。しかし、それが大型化や非効率化を招くこともあり、状況によっては軟体動物の筋肉のように柔軟な機能のほうが適している場合があります。このように「柔軟な駆動機構」は、ソフトアクチュエーションと呼ばれています。
構造的な柔軟さというのは、周辺環境に対して大げさなセンサや制御を必要とせず、シンプルなシステムを構成することができます。さらに、「作業をするときには固く」「普段は柔らかく」といった人間の筋骨格のようなロボットシステムを構築することも可能になるそうです。
導入の背景:複雑な形状のパーツが製作可能・軽量化が可能
もともと中央大学の中村研究室では、研究開発目的で3Dプリンターが使用されていました。機構助教の車谷様は「人間の下肢を裏から支えるパーツなので、腿やふくらはぎの形状に沿って3次元的に曲線を描いています。また、ベルトや留め具などを取り付ける部分も必要です。このような複雑な形状は他の方法で作成が困難なため、もともと3Dプリンターを活用していました。
しかし、以前使用していた材質(アクリル)に問題がなかったわけではなく、ベストの選択とはいえませんでした。」とお話しされています。また、パワーアシストを行うという機能から考えると、重ければ重いほど着用者の負担になってしまう、また、ときおり割れてしまうなど強度面の問題も抱えておられました。
そこで、CFRP対応のMarkforged社のMark Twoを導入しました
運用方法と効果:軽量化の実現
使用3Dプリンター:Markforged Mark Two
使用用途:主に下肢パワーアシスト装置の付帯補助パーツ
効果:強度はそのままに、大幅な軽量化を実現。
大腿部パーツ 下腿部パーツ
旧型 203g 149g
Mark Two 製 110g 87g
軽量化 -93g (46%減) -62g (42%減)
機構助教の車谷様は、「強度の問題が解消され、明らかに軽くなりました。頑丈さを確保するため、成形の際には間にカーボン繊維を挟みます。それにより厚みの低減には限界がありますが、今よりさらなる薄型化ができそうです。とはいえ、現状でも十分機能しているので、さらなる薄さの追及は行っていません。ただ、軽い・薄いということは、パワーアシスト装置としては有効なポイントなので、ポテンシャルがあるのは素晴らしいです。」と述べられています。
さらには、後から塗装する必要がない点が良いとお話しされていました。「服の上からとはいえ、人肌に触れる部分なので滑らかにしたいと考えていました。積層型3Dプリンター特有の積層の粗さもなく、追加工なくアシストスーツのパーツとして使用できるのは素晴らしいと思います。」
今後の展望
現在、中央大学の中村研究室では、一般的な男性データをサンプルとして作成しています。しかし、機構助教の車谷様によれば、今後は女性用の作り分けを検討されているそうです。さらに、「現在は下肢の支持パーツのみ3Dプリンティングしていますが、そのうち腰を支える部分も3Dプリントしてみようかと思います。」と述べられていました。
3DPCは、産業だけでなく、研究を目的としたものづくりも応援しています。
]]>
今回取材にご協力いただいた小田垣様は、ご趣味で自転車に乗られています。自慢のマシンは、後ろへ寄りかかり気味に漕ぐ特殊な形状をしたもの。しかし、近頃困った事態に見舞われていました。破損してしまった自転車パーツの代替品が特殊な形状であったため、すでに市場にはなかったのです。増産を頼もうにも、小ロット生産では採算が合わないために同じものが入手できる見込みが低く、途方に暮れてしまいました。
そんなお悩みをまさに解決するのが、3Dプリンティング技術。3D Printing Corporationの3Dコンサルティング事例として、小田垣様の自転車パーツ再生の過程を紹介いたします。
導入の背景:特殊パーツの代替品を求めて
破損したパーツは、ペダル部と後輪部を結ぶチェーンの中継歯車を覆う保護板部分です。中継歯車が上面から見て横へ少々突き出しているため、ピンと張ったチェーンが保護板へ常にこすれ、力がかかり、やがて破損に至ったようです。該当パーツの再入手が困難であると判明した時、小田垣様はまず自力での修復を試みたそうです。市販の接着剤を用いてパーツを取り付けなおすという荒業を施したそうですが、強度が低下していたためか、1・2か月ほどでまた割れてしまいます。
次に、小田垣様は金属部品加工の工場をお持ちの弟様に、該当パーツの作成ができないか問い合わせてみます。回答としては、「難しい」の一言。既存の金型を作って作成する方法では、少なくとも数十個規模の注文がなければ製造へは踏み切れず、それでも単価当たりのコストが莫大なものになってしまうとのこと。今回パーツがなくて困っているのは小田垣様一人だったため、とても現実的ではありません。
手詰まりに悩まされていたころ、奇しくも3Dプリンティングによる自転車製造について、弊社3D Printing CorporationのCTOである古賀が述べている記事を見かけたそうです。以前から古賀やCEOと知り合いであった小田垣様は、3Dプリンティング技術であればパーツを製造できるのではないかと思い立ち、ご連絡くださいました。
運用方法と効果:新規パーツ製作のスピードと新規パーツのレベルアップ
ご依頼を受け、3D Printing Corporationの3Dプリンティングソリューションが始まります。まずは、該当パーツの寸法と写真をメールで送っていただき、そこから推測でパーツを3Dプリントしました。「せっかくなので格好いいデザインにしたい」という小田垣様の要望も受け、デザインチームが工夫を凝らします。情報を得てから、3Dデータが完成するまで、わずか1時間未満。熟練の技が光ります。のちの造形は、放っておけば3Dプリンターが1日以内に行ってくれます。
完成したプロトタイプパーツを小田垣様に送付し、確認を行っていただいたところ、うまく機能しないことが判明しました。事前の情報が不足していたため、これは仕方がありません。ここからは、コンサルティングに入ります。パーツの機能とは何なのか、どのような形状ならば、その目的が達成できるのか。既存のパーツを理解するために、許可をいただいて分解も行いました。
その結果、パーツはチェーンの中継器具であり、初期形状と同じただの保護板として取り付けるのではなく、自身も回転することによって滑らかな駆動が期待できるのではないか……と、デザイナーチームは考えました。要点を抑えたコンサルティング、そして改善案のデザインについても、正味1時間程度で完了します。
さあ、3Dプリンターに造形を任せ、出力が完了したら実地で試運転です。
「ちゃんと機能しています! 格好いい。本来こうあるべきですよね!」
実物を見て、開口一番大歓喜する小田垣様。デザインチームの工夫により、ボールベアリングが仕込まれた該当パーツは、以前とは比べ物にならないほど滑らかに駆動するようになっていました。材料は、頑丈で表面の滑らかなエポキシ樹脂(EPX82)。チェーンのこすれも大幅に軽減され、今度は長持ちしそうです。
「最初に購入した時から、チェーンがこすれて耳障りな音がしていたんです。そんなものかな、と諦めていたのですが、こんなに改善されて感動しました」と、小田垣様は絶賛します。
今回改善を提案した3D Printing CorporationのDFAMエンジニア:山路は、少し照れくさそうにしながらも工夫点についてコメントしました。
「ボールベアリングを埋め込む関係上、外れないようにどうしてもはみ出る部分が出てきます(下図参照)。本来ここは宙に浮いてしまい、サポート材なしには造形できず、取り外したりきれいにするのに手間がかかったはずなんですが、今回選択した3DプリンターCarbonであれば、この程度なら宙に浮いたまま造形できるんですよね。Carbon DLS™プロセスという、魔法のような技術です」
3Dプリンティングであれば、今回のように生産が終了してしまったパーツも再生・改善出来ます。特記するべきことは、データとして保存可能なため、さらにこのパーツが破損してしまったとしても、何度でも造形しなおせるという点です。しかも、自宅や近所の3Dプリンター設備でも作れる※のです。これは、製造にロット数の必要な既存の射出成形技術では真似できない部分です。
※工業用グレードの3Dプリンターを使わない場合、質に大きなばらつきが生じる恐れはあります。
今後の展望
リニューアルパーツを組み込んだ自転車をひとしきり楽しんでいただいた後、小田垣様に感想をいただきました。
「乗り心地が違いますね。感動です。弟の工場にも3Dプリンターがあるのですが、こんな風に活用はされていません。素人が3Dプリンターを使おうとしても、既存のものを作るに留まってしまいます。ペン立てのような置物の程度のものを作って、おしまいです」。
それを受けて、3DPCの山路もうなずきます。
「パーツの役割や、構造をきちんと知れば、より良い方法も出てきます。今回のボールベアリングなんかはそのわかりやすい例ですね。3Dプリンターならば、これまでは難しかった複雑な形状でも造形可能ですから」。
「まさに3D Printing Corporationさんの強みはそこです。機械の設計やデザインに精通した技術者さんがいらっしゃって、それぞれ専用の3Dプリンターも備えていて、すべて一社で賄えるところ。わずかなコンサルティングからもヒントを見つけて、的確により良いパーツを造形してくれました」。
]]>現在産業用の3Dプリンターが業務の効率化を大幅に助ける存在として様々な業界から注目を浴びています。
アズビル株式会社様の商品開発部 試作技術Grは、元々、試作相談窓口で依頼者に加工のアドバイスや納期の調整をしながら、治具設計から製作までを行っていらっしゃいましたが、2019年からは3Dプリンターを使ったものづくりを実施し、業務の効率化に成功しました。
こちらがアズビル様が使用されているアメリカの3DプリンターメーカーMarkforged社のIndustrial Series 3Dプリンター「X7」です。連続炭素繊維などを用いて、アルミと同等の強度を持ったパーツを製作することができます。造形サイズは大きく、本格的な少量・中量生産にも対応します。また、レーザー計測機能により、造形中に検査をすることで造形物の品質保証が同時に行える、産業用3Dプリンターです。
導入の背景:スピードの重要性と業務効率化
アズビルの商品開発部 試作技術Grの石川様は「私達の価値はスピードです。3Dプリンターに魅力を感じたのは、ものづくりを行なうスピード感で、切削加工で人が機械に張り付いていなければならない場合でも、3Dプリンターならどのような形状であれ自動で造形できます。その分、人が行う必要のある作業をして試作業務の効率化を図りたいと考えていました。」と述べています。
続けて、「コンシューマ向けの3Dプリンターを購入したことはありましたが、産業用の3Dプリンターを試作業務に活用する目的で初めて社内で提案したのは2016年4月頃でした。その頃は時期尚早と言われ、設備導入は見送られました。また、アウトソーシングで試し造形を行った2017年にも提案をしましたが、導入までは至りませんでした。2018年に社内ニーズ調査を行って費用効果を算出、アウトソーシングで3Dプリンターの効果を社内で理解してもらい、やっと導入することができました。」とお話しされていました。
運用方法と効果:治具製作・モックアップに活用。ものづくりに関わる人々の行動にも変化
X7を用いて治具がもっとも製作されています。切削加工で使用するチャッキング治具だけでなく、製品を組み立てる治具も作っています。
また、アズビルの商品開発部 試作技術Grの石川様は、「他にも新製品のモックアップ、図面のないワークの金型製作前チェックのためのモクアップ、新製品フィールドテスト品のセンサーカバーなどに使っています。」と述べられていました。
例えば、石川様は、部署内で使用しているフライス盤のハンドルが壊れた際に、X7を使ってハンドルを新しく3Dプリントし、壊れたものと交換されました。
機械自体が古くメーカーでも対応していないため部品調達することができない時であっても、3Dプリンターであれば生産が可能です。
作製方法
ノギスを使ってリバースエンジニアリング、そして3Dモデリングを実施。金属部と樹脂部は圧入狙いで回転止めはキー溝にした。
Onyxを使用。当初カーボンファイバーを入れようと思ったが、なるべくコストを抑えたかったのでまずはOnyxで造形すると決めた。
合計34時間で作製。作製を始めた翌日にはハンドルが使えるようになった。
製作時間
モデリング(リバースエンジニアリング)1 時間
ワイヤーカット段取り 1時間
加工 5時間
造形時間 26時間
組立 1時間
合計 34時間
上記の表からもわかるように3Dプリンターは短時間でのものづくりを可能にさせます。
今後の展望
現在、アズビル様は、治具、モックアップ以外に、最終製品にも適用していきたいと、3Dプリンターの新たな可能性を模索しています。アズビルの商品開発部 試作技術Grの石川様は、「社内のものづくりスピードのさらなる加速を目指したいです。」とお話しされていました。
3DPCは、3Dプリンターに関する専門的な知識を用いて、お客様のものづくりを今後も最大限お手伝いいたします。
]]>株式会社UCHIDA様は、複合材料「炭素繊維強化プラスチック(CFRP)」を用いた試作・開発を行っています。2018年に創立50周年を迎え、設計開発から製作・試験までの全ての工程を社内で対応し、あらゆるニーズに応えています。
CFRPは、軽量かつ高強度であることから、自動車、航空宇宙、医療、ドローン、アートなどの幅広い業界で使用されている新素材です。UCHIDA様は、2016年にフランスで開催された複合材料業界の世界最大の展示会「Journals and Exhibitions on Composites」にて「Innovation Award」の受賞経験もある、まさに世界レベルのCFRP成形技術のプロフェッショナルです。
UCHIDA様は、CFRP成形技術の開発にMarkforgedの連続繊維CFRPの3Dプリンター「Mark Two」を導入されました。これにより、リードタイムを短縮させることができ、試作・開発プロセスを効率化させています。
C-FREXは、UCHIDA様が開発しているCFRP製の長下肢装具です。
長下肢装具は、脊髄損傷者の2足歩行を助けるリハビリ装具のことをいいます。従来の下肢装具の課題であった重さ及び脆弱さを改善するため、C-FREXでは大腿・下腿ソケット部に軽量で高強度、高弾性のCFRPを使用し、UCHIDA様のCFRP成形技術を活かして開発が進められています。
※C-FREXの説明は、貴社ホームページの内容を参考にさせていただきました。
導入の背景:開発スピード向上とコスト削減
「C-FREX」(シーフレックス)の開発を担当されている原様は、
「我々が開発するリハビリ装具は人と装具の装着感が歩行動作に大きく影響を与えるため、設計・試作・評価のサイクルを何度も繰り返しながら開発を進めます。従来は構造部材に金属(アルミ)を使っていたため、開発スピードやコストの面で課題となっていました。そのため金属加工をする前の簡易検討を目的にMarkforgedを導入しました。現在では、強度や耐久性の面でも実用性が高いことがわかり、最終製品への採用も検討しています」
とお話しされていました。
また、数ある3Dプリンターの中でMarkfirgedを採用した理由としては、
「任意の層に、任意の角度で炭素繊維を使った補強が可能なため、弊社が培ってきたCFRP成形の技術が活かせる」
と考えられたそうです。
運用方法と効果:開発初期段階の不具合の発見と対策
使用3Dプリンター:Markforged Mark Two
使用用途:主にリハビリ用装具の開発、製造時に使用する治工具
装具膝機構における開発リードタイム:
金属加工部品を使用 3~4週間
3Dプリンターを使用 5~10日
原様によると開発初期の不具合の発見と対策ができる点が大きな変化だったようです。
「設計者自身が計画から設計、実装、テストまでのプロセスを何度も繰り返して行うことができ、開発初期の不具合を早期に対策することができました。特に人と機械の複合領域である福祉機器開発では実装してわかることも多く、Mark Twoはそれらを検証するための十分な強度を持っています」。
今後の展望
「我々が開発する装具は人の骨格に合わせてサイズ調整しますが、身長や体格は人によって様々です。3Dプリンター部品は金型が必要無いため、オーダーメードで細かいサイズ展開が可能です。採寸からモデル作成までを自動化することで、ユーザーの身体にフィットし、デザイン性にも優れた装具をより早く・安く提供できると考えています。特に成長が早い子供用に活用していきたいと思っています」。と原様はお話しされていました。
CFRPの開発でMark Twoを有効に活用されているUCHIDA様。今年に入り、さらにMarkforgedのOnyx Oneも増設され、開発サイクルを加速させています。現在、試作・開発段階にあるC-FREXは、2019年末より実証試験に入る予定とのことです。
また、3Dプリンターによる部品の強度・耐久性が満たされれば、最終製品への採用も視野に入れているとのことですので、UCHIDA様の今後の開発から目が離せません。
]]>DFAM(ディーファム)とは、「Design for Additive Manufacturing(付加製造のための設計)」の頭文字を取った略称です。DFAMは3Dプリンティング(アディティブ・マニュファクチャリング)のメリットを最大限に活かすための設計ガイドラインでありツールであると言えます。
正しいデータ設計なしには、いかに優秀な3Dプリンターや正確なセッティングであっても、最大の成果を得ることはできません。コンピュータ計算にとってのプログラミングのように、3DプリンティングにとってDFAMは不可欠な存在といえます。
DFAMの例としては、3Dプリンターのビルドプレート上にパーツを配置するような簡単な操作もあれば、より優れた効果を得るためにCAE解析の結果を反映させたり、3Dプリンティングによってのみ作成可能なパーツを造形したり、プリントするパーツを最適化したりするような複数の段階的な操作も含まれます。
こちらでは、ビジネスのためにDFAMの価値を理解したい方や、必要なスキルを持ったエキスパートを社内に採用したい方、または成長し続けるこの新しいスキルやプロセスについてもっと学びたい方のために、DFAMについてご紹介いたします。
トポロジー最適化とジェネレーティブ・デザインは、3Dプリンティングを用いることで複雑な形状の造形ができるようになったため、ここ数年でとても人気が出ています。
トポロジー最適化とジェネレーティブ・デザインの利点として、特定の力に耐え得る形状の造形や、部品の軽量化などが挙げられます。また、実際の造形を失敗しないために、設計時にパーツの形状(壁の厚さや自立する形状など)が一定の寸法を下回っていないかなどの「3Dプリントの適性をチェック」するメリットも持ち合わせていることが多くあります。
なお、トポロジー最適化とジェネレーティブ・デザインは、使用する3Dプリンターの方式やメーカーに左右されるため、一見小さいと思われる形状変更であっても問題が発生する場合があります。
トポロジー最適化された形状やジェネレーティブ・デザイン形状を理解して導入するには、専門のソフトウェア及びハードウェアのノウハウを必要とします。しかし、これらはその大きなメリットからDFAMの最もパワフルなツールとなってきています。
DFAMのコンセプトに、パーツの統合があります。これは、従来の設計・製造方法では複数のパーツを組み立てていたような部品であっても、DFAMを用いて複数のパーツを統合させれば、機能性を保持または増幅させながら組立てパーツの数を減らすことができます。これを行うには、エンジニアは従来の設計方法の制限にとらわれずに、パーツの組立てや設計を全く別の視点から再考する必要があります。
上記画像は工具メーカーStanley Black & Deckerの部品です。以前は4つのパーツが組み立てられて作られていましたが、DFAMによりたった1つのパーツで製造することができました。
この事例では、特別なソフトウェアやハードウェアを使っていないにも関わらず、DFAMと3Dプリンターによって製造の効率が向上しました。こういった成功の鍵は、設計・製造を「アディティブ」の視点から考えていることです。これは、長年の間、従来の設計方法で製造のコンセプトを考えることに慣れ親しんできたエンジニアにとっては難しいことかもしれません。
ラティス構造とは、3Dプリンターで作るパーツの内部を埋めるセル構造、インフィルのことを言います。ラティス構造のコンセプトとそのアプリケーションは、3Dプリンティングに対して多くの利点をもたらします。DFAMにおけるラティス構造は、鋳造におけるリブと似ていると言えます。
ラティスのパラメーターを変えることで、パーツの機械的特性を変えることができます。3Dプリンティングの方式によってはその効果の出方が異なりますが、DFAMにとって重要であることには変わりありません。
DFAMにおけるもう一つのスキルは最適化です。最適化するための戦略は非常にたくさんあり、多くは3Dプリンティングの方式やメーカーごとに特化していますが、一般的に最初にとるステップは既存の問題を解決し、3Dプリンティングの最適化の方法を探ることです。例えば、造形時のパーツの向きを縦から横倒しに変えるようなシンプルな設計変更でも、時には造形での劇的な違いを生み、成功へ導くことがあります。
DFAMは、3Dプリンティングにおいて成功するためのマスターすべき重要なスキルのひとつです。私たちの経験に基づいて言えば、DFAMのプロセスを適用することで、3Dプリンター造形ビジネスの価値は倍になると推測しており、その効果は非常に大きいものと考えています。
3D Printing Corporationでは、DFAMの支援や設計代行を承っております。DFAMにご興味のある方は下記よりお問い合わせ下さい。
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